魔法使いと皇の剣

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1章 出会い

アルベストへ

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海賊船ローグクランク号の船長室の椅子にジンは座っていた。

今だに血だらけの身体をセスナの世話係なのか
小間使いの女性達に処置されながら
ジンは部屋の中を見渡しながら、奇妙な違和感を感じていた。
 
部屋の中にセスナ以外の女性乗組員がいたのも驚いたが、部屋の中はきちんと整理整頓されており、壁には海図が張られ、奪ったのか描いたのか分からないが、恐らく海賊であろう男の肖像画等飾られていた。
 
テーブルの上にはジンが来る前から置いてあるグラスに入った葡萄酒がおかれ、まるでこの部屋がそう言う部屋でないといけないからそうしてるようだった。

キョロキョロ辺りを見回してるジンを、向かいに座るセスナは無表情で見つめているだけだった。
沈黙の中、忙しなくジンの治療をしてくれる女性達の小さな声や動く音のみが部屋に響いていた

小間使いの女性達がジンの応急処置を終えると、セスナは静かに女性達に告げた。
 
『手間をかけたな、休んで構わない』
 
そう言うと女性達は、部屋の床を探り出し、隠し扉を開くと下へと消えていった


『彼女達は私の世話係だ、乗ってること自体知らないものも多い。海賊は自分より強い物には従う奴らが多いが欲望の前ではそれができない奴もいるからな』
 
そう話すセスナは無表情ではあるが、少し軽蔑の入った口調だった

 
『そうですか、、それはまぁそちらの事情なので、一旦置いときます、それで約束は叶えて頂けるんでしょうか?』


『守るさ、お前は私から船に誘われ仲間になった。海賊になったんだ。そして私は決闘によって負けた自ら受けた条件でな。従うしかない』

 
『良かったですそれではまず、刀を返して頂ければと』


ジンがそう言うとセスナはテーブルの下にでも置いてあったのか、ジンの刀をそのままジンに放り投げた
投げるなと言おうと思ったが、面倒よりは良いと考え素直に受け取り、刀を近くに置いた

『その刀は不思議だな、私がいくら鞘から抜こうとしても抜けなかった。お前以外は抜けないものなのか?』

『そうなんですか?いや…すみません、実は私もよく知らないです』
 
ジンは本当に知らなかった。そもそも他にジンの刀を抜こうとする者等おらず、ランに貸した時には問題なく抜いていた。
ソルメーラの力を受けた人間だけが抜けるなら分かるが、それだと 
ジンが考え始めると、セスナも嘘ではないと考えたのか話しを続けた。

『まぁいいさ、疑問に思っただけだ、私が持つ神器はニンニルと呼ばれていて元々は私の者ではなかった、色々あって私が愛用しているが、使うのに何か特別な条件等必要なかったんでな』
『確かに気になりますね、持ち主の私が知らないのは恥ずかしいですが、、これも貰い物なので元の持ち主が何かしてくれたのかも知れないです』

ジンは適当に誤魔化す理由付けになったと内心喜びセスナに嘘をついた。

刀が抜けないのは気になったがそれによって不都合は自分に関係ないと
『貰い物ね…まぁいい、これで刀を返した。後は船だったな?それついては小舟くらい好きにしろ、だがお前はアルベストに行くと最初ドルガンから聞いたが、そのつもりなんだろ?』

『?はい、この刀をくれた人は自分を逃がす際にアルベストなら自由に暮らせる場所があると私に告げました。そしてこの刀があれば結界を何とか出来るとも』

『なら渡す船はこのローグクランク号だ。そして船員あと私がおまけだ』

セスナは微笑みを浮かべ、ジンに告げた

『いえ、有難い申し出ですが大丈夫です。約束の小舟をください』
ジンは心のそこから拒否の意思を告げた。

航海知識もあり、立派な船、食にも困らない
だが海賊だ、しかも先程まで自分から仕掛けた事なので仕方ないとはいえ、殺されかけた人間達だ
セスナに対抗の意思はないだろうが他の海賊達は良い顔しないだろう、しかも行き先は呪われた大陸なのだから
トラブルになると可能性があるなら避けたい。
 

そんなジンをみて、今しがた拒否の意思を告げられたセスナは少し不機嫌そうに
『断る理由も察するが、元々一人、小舟に乗っての航海でここにいるんだろう?今の航海位置なら、この船と船員達であれば時間もかからずにアルベストにいけるのに断るか?』

『むしろ大丈夫なんですか?煽るつもりではないんですが、先の決闘で私に負けて、今度は呪われた大陸に向かうなんて言ったら不味いんでは、、先程の女性方を船員たちの目に届かないようにしているのは、歯止めが聞かない者もいるからでしたよね?』

『そこに関しては大丈夫だろう、私もお前も襲われようが自分で何とか出来るだろう?アルベストに関しても結界がどうにか出来るとしれば皆喜んで向かうさ。私達はいつか大陸に戻れるのを夢みて航海していたんだからな』
 
(それなら最初から話しをきちんと聞いてくれてれば、闘う必要なかったんじゃ、、)
ジンの考えを見透かすようにセスナは答えた
 
『お前が語る事は信用できなかったからな。だが実力を知りお前が其れを成し得る力があると思ったから、私も行動に移せる、そして船員たちにも言葉が響くだろう、、結果としてお前が懸念している行動は目的の為に必要だったんだ、目的の真意は別としてな』

セスナはジンの目的は別にあると分かっているが追求するつもりはなく、利害の為に共に行こうと告げていた。
 
ジンは悩んだすえ、やはり目的の為には一番だと考え手を借りる事にした、確かにトラブルはあるかも知れないがセスナの言う通り、武力が全てのこの船なら予想されるトラブルなら何とかなるだろうと

『わかりました。協力しましょう。共にアルベストに』

ジンはセスナと握手を交わし、自身が持つ刀は自分にしかセイクリッドランドを防ぐ力は働かない事は黙っていた、最悪自分だけ辿り着ければ良いと考え。

セスナのとの話が終わり部屋を出たジンは待ち構えていたドルガンの追求を躱す羽目になった。
 
『てめぇ!!お頭との決闘で、床を望んだってのは本当か!!この外道が!今まで何してやがった!ぶち殺してやる!離せガンザ!ぶち殺してやる!』
凄まじい剣幕で迫るドルガンをガンザが押さえながら

『ドルガン~他の連中に騙されてんだよ、何かしてたら外まで聞こえるだろ?何もねぇーよ多分』
 
『外まで、、聞こえる…ガンザァ!!!てめぇ!お頭はそんな人じゃねぇ!床でも乱れる事なくなぁ、、凛とした威厳を持ってんだ、、んで、時折恥ずかしそうに声をな、、』

『ドルガン、、おめぇ他の連中と変わらないぞー』
ドルガンの妄想に呆れたように答えるガンザ
 
『あの、とりあえず俺は何もしてないですよ⋯船長と結んだ約束はこの刀の返却とアルベストへの航海です』
妄想にふけっていたドルガンはセスナの無事を歓喜していたが、ガンザはアルベストの話しを聞き驚いて
 
『呪われた大陸に?正気か?』

『ええ、勿論です。それが俺の目的です。そして船長もそれに着いてくると、そしてこの船の船員たちもと』
ガンザと正気に戻ったドルガンは暫く顔を見合わせていた。

ジンはそんな二人を避けるよう歩きだし船長室のある甲板の二階から降りようとした時多くの海賊たちがジンを下から見上げている事に気づいた。
 
友好とはいえない視線の中、どうしようかと考えていると後からセスナの声が響いた。
 
『聞け、私はそこにいるジンに約束を、誓いをたて敗れた。ジンは少し前に私達の、海賊の仲間になった。海賊の約束をかけた決闘だった。ジンが私に望んだのは二つ刀の返却とアルベストへの足だ。私は結界を破りジンとの約束を守るためにもアルベストへ向かう』

(望んだのは小舟だったんだけど、、)
 
ジンはセスナの発言に相違があるように感じていたが、他の海賊達と同じよう静かにセスナの発言を聞いていた
 
『船の長として向かうが、あくまで敗れたのは私だ。掟に従うなら、長の意思は船の意思だお前達も来る必要はあるが強制はしない、降りたい奴は好きに小舟を使え、、だが1つ言おう。結界を超えた先に行けると』

 セスナが話し終えると静寂の後に歓声が訪れた
 
『長年の悲願だ!呪われた大陸だろうが構わないぜ!』

『くぅ~!!大陸には色んな町や娯楽があんだろ!?俺は島生まれだから知らねぇんだよ』

『ああ!すげぇぞ!アルベストも同じかは知らねぇがキレイな女を抱ける場所もありゃ町には酒場だらけだ!みたこともない姿した人間みたいな奴らもいるぜ!』

『俺たちゃ海賊~♪~♪』

肩を組み合い歌いだすものや、理由の分からない叫び声をあげる者、喜び方は様々だったが、ジンの目には誰一人反対する者がいないようにみえた
 
そんな様子をみたセスナは騒ぎの中でも、聞こえるのが不思議なくらい凛とした声ではっきりと告げた

『進路変更。向かうはアルベストだ』
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