魔法使いと皇の剣

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1章 出会い

海の魔物 ジン

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ジンは静かに波打つ海を眺めながら船から手を出すと、意味もなく水を手でかき上げ、力任せに上空へと振り上げた。
空に舞った小さな水しぶきを見上げジンは小さく呟いた
 
『飽きたなぁ』

辺りは暗くなりだしもうじき夜が訪れる頃となったが
ジンが海に出てからはまだ一日も経っていなかった。

懐かしいゴリョウ大陸は既に見えなくはなっていたが、それでも目的の大陸に着くには少なくとも後7日はかかる計算をしていた。
それも何もなければだ

ジンはぐるぐる回っている小さな羅針盤見ながら、ため息をついた。
魔法で作られた羅針盤は、通常どれだけ離れていようと目的の所に向かうよう針が示さる、漁に出た者達はこれを頼りに帰ってくる。

ジンの持つ羅針盤も、通常ゴリョウ大陸を指し示すものだったが、その針の先を、方角の目印として西へいけばアルベストがあると考え海に出たが海の影響なのか壊れたのか、ずっと羅針盤は回っていた、既に自分が何処にいるのかも分からずジンは途方にくれていた。

出発前に期待で胸が一杯だったジンの心は既に退屈と何処を彷徨っているかも分からない絶望で、後悔しかなかった。

暫くは、無気力に海を眺めていたジンは思い直した。
 
自分がここにいるのは大事な任務の為だ、自身の準備不足が悪いと、既に日は落ち辺りは真っ暗の海で、ジン気持ちを切り替える為、この時ばかりは誰もいない海に感謝して大声をだした

『やるぞーー…!!』

静かな海でジンの声は遥か遠くまで響いていた、ジンはスッキリした顔で、夜の海これから自分が何をすべきかどう打開していくか考えようとした時
 
海から気配を感じた。
 
直ぐ様ジンは腰に差した刀を抜けるよう構え、気配をさぐった
 
(でかいな、、確実に海の魔物だろうが、、一匹、?)

ジンは気配がどんどん近づいて来てるのは感じてきたが、その気配が妙な事に疑問を感じていた、海の上は暗いが先程までみえる距離に何もいなかった事と気配を感じるのが自身の下からなので確実に海の生物なのは間違いなかったが、気配は複数でもあり単体のような不思議な感じだったからだ。

その不気味な気配が徐々に近づくと共にジンが乗る船の周囲が波立ち始め、衝撃共にジンの乗る船は何かに乗り上げたかのように跳ねあがった。
 
ジンは跳ねあがった船に合わせるよう跳び上がりバランスを保つと刀を抜いて、船を跳ね上げると共に正体の一部をさらけ出していた魔物をみた。

ジンを跳ね上げたのは魔物の長い背中だったようだ、今や長い身体の所々を海の外へと覗かせていた魔物は頭を確認する事はできなかったが、巨大な海蛇ようだとジンは考えた。

ジンはその魔物が実際なんなのか確認する事もなく、船の近くから覗かせた身体の一部に飛び移ると、刀で切り裂いた。
 
魔物は切られた衝撃からか、激しい動きと共に、暴れだした。
ジンを振り落とされないよう、切りつけた刀をそのまま魔物の身体に突き刺して掴まった。

凄まじい速さで海の中、外へと繰り返し身体を出し入れして暴れる魔物は、必死にしがみつき離れないジンを引き剥がそうと全ての身体を海に沈め潜りだした。

ジンは必死に息を止め、魔物に刺さった刀にしがみついていた。
 
しかし凄まじい水の抵抗により身体が持たなくなっていきこのままでは海面に戻れなくなると思ったジンは刺さってる刀を何とか抜き、魔物から離れる事に成功した。
 
暗い海の中で近くを通りすぎる魔物の身体しか確認できなかったが、その長い身体が全て通りすぎたと思った時ジンはみた、方向的には海の其処に潜っていたのが頭の筈だが、ジンが尾だと思っていた場所には頭が、、顔があった。
 
両目は2つあり大きな目に、口だけありジンを恨みの表情で見つめ海の其処に沈んでいく身体から逆らうよう、顔はジンにむけてヘビのような舌を伸ばしたが、ジンは水の中にも関わらず刀を振り、刀も水の中で抵抗をまるで感じさせない切れ味で舌を切り裂いた。
 
顔は海の其処に沈んでいく身体に連れられながら苦しみの表情で姿が見えなくなっていった。

ジンはやっとの事で海面にあがり、自身が乗っていた船を探すが、波がたつ夜の海で船を探すのは困難だった
それでも何とか遠く離れた先に、静かに浮かぶ物をみつけジンは必死に泳いだ。

近づくにつれ徐々にみえてきた、それは船ではなく、ジンが積んでいた水樽だった。
 
ジンの乗っていた船は魔物が暴れた事により既に沈んでいたようで、水樽を残しもうその姿を見つけるのは難しかった。
 
ジンは水だけは確保できたと喜び、もう戻ることも叶わいと、仕方なしに水樽と共に航海を続ける事にした。

夜の海をどれぐらい泳いだというよりは流れたのかジンには分からなかったが、夜の海は徐々に朝の光が顔を出し始め、夜が明ける頃合いになりだした。
 
ジンは疲労と寒さにより疲れ始めており、このままでは大陸になんて到底つかない、その前に死んでしまうと考えてはいたが打開策を思いつく事はできず、精神を振り絞りひたすら西だと思ってる方向に水樽と共に向かっていた。
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