短編作品劇場

秘密どーぐ

喜怒哀楽メーター

何だかつまらなそうな少年。



そんな彼が偶然拾った、人の感情がわかるメーター。
対象に矢印を向ければ、対象が喜怒哀楽のどの感情なのか、どれくらいのレベルなのかが分かる機械のようだ。


喧嘩する人にメーターを向けると二人とも「怒り」が表示される。

愛しあうカップルに向けると、一人は「楽しさ」、一人は「喜び」と表示された。


なんだか楽しくなり色々な人や動物の感情を調べていく。






そんなある日、少年は父親が大切にしていた盆栽を壊してしまい、喜怒哀楽メーターで父親を確認した。


すると、父親の怒りがMAXだとわかり、家に帰れなくなる。



夜中になって両親と年の離れた兄が探しにくるが、やはり父親の感情が怒りMAXなので逃げ隠れることになった。




そんな中、偶然遭遇した兄に少年は相談するが、兄は大丈夫だよ。と優しく言い、少年を連れ帰る。




兄と一緒に家に帰ってきた少年。

喜怒哀楽メーターで確認するも、両親ともに怒りMAX、、、。
少年が盆栽の事を泣きながら謝ると、父親も泣きながら少年を抱きしめる。そこで喜怒哀楽メーターが狂ったように感情を入れ替えながら壊れた。


不思議そうに兄に視線を向けると、兄は微笑みながら答えた。

「人の感情は喜怒哀楽だけでは測れないんだよ。
　たくさんの感情が複雑に絡み合ってる。

　父さんが怒っていたのも、盆栽を壊されただけじゃない。

　君が逃げてしまうほど愛を持って接することが出来ていなかった自分への怒り、君を失う恐れからくる怒りや哀しみといった不安、君が無事に帰ってきてくれた喜び、素直に謝ってくれたことで成長を感じた楽しみ。

　人には、たくさんの複雑な感情があるんだ。

　最初は分からなくたって心配ない。
　これからいろんな経験をして大人になっていくんだから。

　たくさんの不安がある時期に、側にいてあげれなくて、ごめんね。」



そう言うと、去年事故死した優しかった兄は姿を消した。





涙を流して、少し大人に近づいた少年は、両親を抱きしめ返した。