上 下
81 / 103

70.

しおりを挟む
70.

湿地に到着した君たちは、難なくルブラの花を手に入れる。
ルブラの花を摘み取ると、周囲に墓前に供える線香のような香りが広がる。


「リュート兄ちゃん、宿屋のおやじに渡す以外に、おいらにも作ってくれよ。
 おいらもリュート兄ちゃんに作ってやるからさ。」


「ああ、お互いに世話になることがないようにしような。」

「もちろん!
 おいらはともかく、敵と戦うリュート兄ちゃんの事を心配してやってるんだぜ!
 (ごめん...。)」

「ん?何か言ったか?」

「あはははっ、耳よすぎだぜ。」


リノは笑いながら、君と宿屋で待つ男性の分のルブラの花を手渡す。
君は ルブラの花を神器の鞄へと収納し、街へと引き返していった。




街に帰り、宿屋にいるルームサービスの男にルブラの花を渡した君たちは、水と酒の都アルティアを散策することにした。
アルティアは見た目には華やかな印象だが、酒の都だからだろうか、朝から酔いつぶれている人の姿も見える。
その酔いつぶれた姿は、どこか悲壮感を感じさせていた。
そんなコトなど気にしていないのだろう 太陽のような満面の笑みでリノが君に声をかけてくる。

「リュート兄ちゃん、この街のオススメに案内してやるよ。」

そう言うと、リノは君の手を引き街の中央へと向かった。
街の中央には、まだ完成して数年くらいだろうか、新しい彫像が飾られていた。
その新しい彫像は、水と酒の都と呼ばれるに値する 立派や噴水と 美しい女神が象られた彫像である。
女神の担ぐ水瓶からは、水が常に流れ続けている。

「これが水の竜神アミュールの彫像だぜ。」

「竜神?
 いや、そんなことより、アミュールは どちらかと言えば男かと思ってたよ。」

「アミュールは男だよ。
 ここの領主だった人たちが、ちょっとばかり綺麗に作りすぎたのさ。」


リノは そう君に説明すると、寂しそうにアミュールの像を見上げていた。その手には、ルブラの花を握りしめて...。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です

岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」  私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。  しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。  しかも私を年増呼ばわり。  はあ?  あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!  などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。  その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

処理中です...