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一方その頃、城の宴会場では...。

希望を司る剣の勇者 アスカが大臣を引き止めて情報収集をしていた。

「それで、私達が倒すべき魔王とは?」
「はい。魔王の出現は魔力を感知した魔術師たちにより判明したのですが、魔王がどういった力を使うのかなど何も情報がなく、姿形、存在場所に至るまで全てが謎に包まれております。
 しかし、逆に言えば、魔王もまだ産まれたばかりの可能性も高く、先制攻撃を仕掛けることが出来れば比較的 楽に勝利することが出来ると思われます。」

「...そうなんですね。
 ありがとう。」

アスカは何も知らない大臣に礼を述べると、何か情報を持っていそうな人を探すことにした。
そんなアスカに、メガネをかけ 長い銀髪を後ろで一つに纏めた長身の男性が声を掛けてきた。
彼は、信仰を司る槍の勇者 宮前 源次郎である。

「アスカさん、少し大丈夫ですか?」
「え、あ、はい。えっと...。」

「槍の勇者、宮前です。」
「あっ、ごめんね。
 人の名前を覚えるの苦手だから。」
「いえ、気にしていませんから。
 それより、不思議に感じませんか?
 魔王を倒す為に私達を呼び寄せたのに緊張感が足りないというか平和ボケしているというか。」

「確かに...。
 謁見した女王様以外は誰も魔王を脅威に感じていないってのも変よね。」

そんな二人に酒に酔った、正義を司る斧の勇者 鬼島 蒼汰が絡んできた。
「よく分かんねーけど、俺らが強くなる為の準備期間とかじゃねーのかよ。いちいち考えたって分かんねーもんは分かんねーよ。」
「鬼島くん、未成年でしよ!
 異世界だからって お酒を飲むの辞めなよ。
 それに、二人は大事な話をしてるみたいだし。ほら、向こうで肉でも食べようよ。それともデザートにする?」
「うるせーな!
 俺は大丈夫なんだよ!
 俺は違うんだから!
 大丈夫だから!」

鬼島蒼汰は、勇気を司る槌の勇者 天津 國治に誘われるまま、違うテーブルへとフラフラ歩いて行った。

そんな二人を見て、宮前は怪訝そうな表情を見せる。
そんな宮前にアスカは声を掛けた。

「宮前、大丈夫?」

「...すみません。あの節操がない二人は好きにはなれないんですよ。まだ鞄の人の方が潔いというか、好感が持てるのですが。」
「確かにリュートは、潔い感じだよね。戦いには向かなさそうだし。
 それに、あの二人だって話すといい人だよ。ちょっと頼りない所もあるけど...。」

ガシャーン!!!

鬼島と天津の向かったテーブルが大きな音をたて、酔った鬼島と一緒に倒れたようだ。

「アスカさん、あの二人は無理です。」

(はぁ...。)

アスカのため息は、騒がしい宴会場の音にかき消された。
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