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暴漢たちが逃げ去って行ったあとに残された 君とリノと呼ばれた少年。
君の手には、神器の鞄が握られていた。

(思ったより上手くいったな。
 ハッタリが効かなかったら危なかった...。)

リノは殴られた頬をおさえながら立ち上がると君に抱きついてきた。
「兄ちゃん、すげーや!
 まさか本物の六勇者だったなんて!
 なぁ頼むよ、俺の依頼を引き受けてくれよ。
 これで、これで父ちゃんや母ちゃんの仇が打てるんだ!」

「えっと、リノ?だっけ?」

「何だい、兄ちゃん。」


「俺は本当は...」

君はリノに自分が無能な従者であると伝えようと思ったのだが、リノの表情を見て思いとどまった。

「六勇者の一人として、この辻道 龍人がリノの両親の仇討ちを約束するよ。」

「ありがとう。
 リュート兄ちゃん。」

リノの嬉しそうな可愛らしい笑顔を見て、君は思いとどまったことを誇りに思えた。
(大丈夫、きっと何とかなる。
 最初の街の仇討ちイベントだ。
 ろくに戦えなくたって...。)

「リュート兄ちゃん、おいらの貯めた金もあるし装備を整えようよ。
 空飛ぶ大蛇は、すっげー手強いからね!」

「そ、そんなに手強いの?」

君は胸に不安を抱えながら、表通りの商店街を目指した。
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