目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

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8章・最終章

洞窟29階 レヴィアの秘密

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29階に到達した人間は、過去にもいないだろう。
周囲で言われているような禍々しさは無く、どちらかと言えば地上に近い階層のような雰囲気だ。

「ルシファー、本当に合ってる?」

「ええ、もちろん。前にも話したと思うのですが、2人が来る前に私が統治しておきました。
 もし到達前にエイトが死んでしまったら、また10年以上待つ必要があったから、少しでも住みやすくしておいたんですよ。」

「先生・・・ありがとうございます。」

「いや、礼には及びません。
 それに、いまのエイトに限って死んでしまうことは無いと思っていたから、この階層は邪魔だった悪魔の駆逐しかしていないです。」


アルルが、ずっと疑問に思っていたことをルシファーに質問する。

「あの、熾天使セラフ様、質問を宜しいでしょうか。」

「なんだ?」

「ありがとうございます。
 地獄の門を開けた後、エイトやレヴィアさんは、どうなってしまうのでしょうか?」

主父あるじ様の話では、そのまま人間界で暮らすことを望んでおられた。
 しかし希望があれば エイトに限り、天界に招くこともできると思う。」

その後の話を聞いておきたかったのだろう、レヴィアも便乗して質問する。

「ねえ、私は解放後に、急にドラゴンに戻るなんてことないよね。」

「もちろん、レヴィアも希望があれば、他のドラゴンたちと一緒に地獄の門の先に住んでもいいぞ。」


ルシファーは嫌味なのだろうか、レヴィアを からかうように挑発する。
レヴィアは 笑いながらミザリの魔装具(真実の眼鏡)を、カタカタと動かす。
その動作に動揺するルシファー。

「い、いえ、あくまで、住めるよ。という意味です。変な意味ではありません。
 レヴィアに関しては、【我が君の作り出した原初の存在故、神言を自ら唱え主父あるじ様と対話することで、その姿が解放されるようにしてある】と、主父あるじ様も話されておりました。」

「神言か・・・。」

レヴィアの思考が停止する。
(私は我が君の作り出した原初の存在・・・
 あれ、優しい誰かといつも一緒だったような・・・。)
思考停止しているレヴィアにエイトが声をかける。

「レヴィア、元気出しなよ。
 とりあえず一緒に住んで、神言の勉強を始めようか。」

レヴィアは、エイトとアルルを見る。

「すまない。開放後、しばらく厄介になりそうだ。」


そんな中、リリアスも今後の為に、ルシファーに質問した。

「堕天使ルシファー様、地獄の門の先に封印されている能力とは、具体的になんなのですか?」


「・・・。」


露骨に無視するルシファー。呼び名が気に入らなかったのだろう。
そんなリリアスにミザリが話しかける。

「リリアス、ダメだよ。
 こういうときは 堕天使だったとしても、大天使って呼んでおかないと。」

「しかし、あまり間違った呼び名で呼ぶと、主父あるじ様にも失礼かと思うのだけれど。」

リリアスは、前回の恨みを返すようにルシファーを見る。
ルシファーはミザリの魔装具(真実の眼鏡)を警戒しているようで、正論を言われ言い返せない。

「う、うむ。この、だ、だ、ぃ天使、ルシファーが答えよう。」

「レヴィア姉さん、いま・・・。」

「ああ、確かに小さい声で・・・。」

ミザリとレヴィアのリアクションに警戒しながら、ルシファーは慌てて話し始める。

主父あるじ様の奪われた能力で人間に与えられるのは、完全回復魔法、完全蘇生魔法、完全治療魔法の3種類になる。」

ミザリは、リリアスを見て更に質問する。

「あの、完全というと、どういった内容になるんですか?」

「残念だがそれは私の知るところではない。
 つまり、教えることはできない。」

レヴィアは何かを思い出したかのように、ふと話し始める。

「完全回復は、白骨化した肉体でも、回復を行う魔法だよ。
 完全蘇生は、肉体さえあれば、魂さえ呪われていたり、地獄の門の先に捕らえられていなければ、蘇生ができる。
 完全治療は、病気や呪いなどの内傷を完治させる魔法。
 どの魔法も古から伝わる魔法で、主父あるじ様が直接教えてもらった魔法だよね。」

魔法に全く無頓着だったレヴィアの回答に、エイトもルシファーも困惑する。
説明した レヴィア本人も、なぜ知っていたのか不思議そうな表情を見せる。
しかし他のメンバーは、さすがレヴィアといった様子で感心している。
そんなレヴィアの説明でアルルが心配そうに話す。

「と、いうことは、魂さえ死ななければ永遠の肉体が手に入るんですよね。
 大丈夫かな・・・。」

「ええ心配なこともあるわね。でも魂にも寿命があるから、不死ってわけじゃないし、肉体も死なないってだけで衰えていく。」

リリアスがアルルに教えている内容をルシファーも聞いて驚いている。
それは、想像より地上の民は魔法や学問に精通していたということだろう。
しかし知っているとはいえ、ルシファーの知る知識の量と比べると微々たるものでしかないのだろうが・・・。

「みんな、よく知っているな。ちなみに、
 人間は、約300年。
 エルフは、2,000年。
 ドワーフの魂は短命で、200年。
 われわれ天使や悪魔は、50,000年くらいだろう。
 例外的な生物もいて、獣人などは50年~数千年と様々だ。」

「そう考えると、エイトは、エイトの魂は、どうなるんじゃ・・・。」

レイザーの疑問にレヴィアが答える。

「魂を分けることができ、更に転生できるのなら、神々と等しく・・・それ以上かも。
 ようは、永遠の生命を手に入れるってことだね。」

「レヴィアの言う通り、永遠に生き続けることも理論上は可能だ。
 まあ、エイト以外にあり得ないことだし、どんなに回復させても肉体の限界は、魂の限界の半分程度だからな。
 そこまで生き続けることは難しいだろう。」


寿命の話になり、レヴィアは何か思い出したかのように質問する。

「そういえば、私の寿命ってどうなるの?
 それに肉体も15の頃から成長してないようなんだけど。」

そういって、レヴィアは胸を確かめる。

「レヴィアの魂の寿命など知らない。
 人間に変身させたときに、しばらくの間は何か言っていた気がするが覚えていない。
 肉体の方は、人間の15歳まではエイトと一緒に肉体を成長させてきたが、それ以降は考えてなかった。
 なので、魂の寿命が尽きるまで、そのままの肉体だろう。
 よかったな健康的に最後を迎えることができるぞ。」

その言葉をルシファーから聞き、レヴィアは膝を落とす。

「レヴィア姉さん、大丈夫?」

「あああああ、いままで我慢して飲んでいた牛乳を全てぶちまけたいよ。」



「・・・てっきり牛乳が好きなんだと思ってました。」

「たしかに、いつも牛乳を飲んでたよね。」

「種族が変われば、味の好みも変わるのかと思っていた。」

アルル、エイト、ルシファーは、落胆するレヴィアを横目に残念そうな顔でレヴィアを見つめていた。
フラウは、落胆するレヴィアに近寄り、優しく声をかける。

「残念だったな。ビキニアーマーが着れなくて。」

レヴィアが顔を真っ赤にして震えているようだ。

「フラウ!
 それ秘密にしてたのに!」







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