目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

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5章・英雄の誕生

洞窟17階 秘密の解明

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「ねえ、エイト。」

「今度は何?」

エイトは、レヴィアの方を見て返事をする。
レヴィアの指さす先には、高さ2mくらいの大きな甲羅があった。

「あの巨大な甲羅は何だと思う?」

「模様的には、巨大陸ガメの甲羅だと思うけど・・・。」

ミザリは、巨大陸ガメの巨大すぎる甲羅に駆け寄り興奮した表情で見上げている。

「凄いね!あんなに大きいの初めてみたよ。」

巨大陸ガメは、最大で1mくらいの大きさで、岩を主食とする亀である。
レヴィアが発見した甲羅は、最大サイズの2倍近くある。
アルルが何か気づいたようにレヴィアに話しかける。

「冷鱗石を食べてたから、ここまで大きくなったんですかね?」

レヴィアが、エイトをみる。
エイトは、落ちていた冷鱗石のかけらを口に含んでいる・・・。

「・・・エイト、何してるの?」

「・・・!」

エイトは、慌てて後ろを向く。
レヴィアが、呆れた表情でエイトを見ている。
アルルもレヴィアの声に反応して、エイトの方を見ていた。

「エイトさん、いくら大きくなりたいからって、拾い食いはダメですよ!」

「そうだよ。しかも冷鱗石を食べるなんて、どうかしてるよ。」

「体内の熱を奪われてまで、光るう○こを出したいのか?」

エイトは、冷鱗石を飲み込むのを諦めた。
エイトは、巨大すぎる巨大陸ガメの甲羅に近づく。

「でもなんで、ここまで大きいんだ?」

「それに、巨大陸ガメなんて、1階とか2階に住む魔物でしょ。」

ミザリも、こんな深い階層に生息していることに疑問を感じている。
レイザーが、ミザリの疑問に答えた。

「たぶん、冒険者が連れてきたんじゃないかな。」

アルルは、深い階層まで潜っていた冒険者たちを考えている。

「冒険者?ウィンター商会ですかね?」

「いや、甲羅の古さから、10年は経ってると思うけど・・・。」

エイトも甲羅を観察しながら、この区域に生息していた理由を考えている。
ミザリが、10年経っているというエイトの考えに疑問を感じた。

「10年前って、豊穣の神が介入する前ってことだよね?」

「たぶん、そうだろうね。」

レヴィアが近くに壊れた墓石を見つける。
アルルとエイトも、レヴィアの言わんとする意味が理解できた。

「墓石ですね。豊穣の神が介入した後なら、墓なんか作らずに、地上に連れて帰るはずですからね。」

「たぶん、この巨大陸ガメの主人だったんじゃないかな。」

「最後の瞬間まで、一緒だったんですね。」


エイトとアルルの やり取りを横目に、墓石を見ていたミザリの顔色が悪くなる。

「ねえ、お墓の名前・・・。」

メンバーは、ミザリの後ろから墓石に刻まれた名前をのぞき込む。





墓石に刻まれた文字は、
「エイト=アテラティッツ=タイタン
  ここに安らかに眠る」

アルルとミザリは、エイトを気遣って、フォローする。

「・・・同じ名前ですね。ほら、よく見ると違うみたいですよ。」

「そ、そうだよね。エイト=タイタンだもんね。似てて紛らわしいよね。」

レヴィアは、難しい表情のまま、エイトを見る。

「いや・・・。エイトの本名は、
 エイト=アテラティッツ=タイタンで間違いなかったよね。」

「うん。そうだよ。レヴィアの事だから、もう忘れているかと思ったんだけど・・・。
 僕の本名は、エイト=アテラティッツ=タイタン。
 同じ名前だし僕以外にありえない名前だ。」

エイトの言葉に、レイザーが頷いて話し出す。

「・・・そんな気がしてたよ。アトランティスの人間なんだろ。」

「アトランティス?」

ミザリは、聞き覚えのある単語だったが、思い出せないようだ。
レイザーは、メンバーに説明するように話し始めた。

「数多の魔法を操り、ダンテ王国を数日の間に占領した国だよ。
 10年も前の話だから、エイトに責任がないのは、分かっているんだが・・・。」

レイザーは、言葉を詰まらせるが、つばを飲み込み、更に口を開く。

「ここで考えても分からないことばかりだ。このことは、忘れて先へ進まないか?」

「ええ、そ、そうですね。先を目指しましょうよ!」

「ほら、エイトが知らないだけで、たまたま同じ名前とか多いからね。」

メンバーは、エイトを信頼しているので、彼を傷つけまいと、必死にフォローする。
しかし、エイトは 真実を調べたかったのだろう、レヴィアに指示を出す。

「レヴィア、掘るものを貸してくれ、秘密が知りたいんだ。」

「エイト、本当に後悔しない? どうしても掘るんなら手伝うよ。」

エイトは頷き、レヴィアにスコップを借りる。
2人は 地面を掘り始める。地面は固く凍り付き、魔法で強化したスコップでも、時間がかかった。
墓を掘り起こし、棺の蓋を開ける。





「エイト、満足した?
 ・・・棺の中は、空のようだね。」

「う、うん。レヴィア、ありがとう。」

ミザリとアルルは、話題を変え、エイトを元気づけようと エイトに話しかける。

「ほら、誰かの悪戯とかかもよ。」

「そ、そうですよ!
 ほら、例えば エイトさんの師匠が脅かそうと思って作ったのかもしれませんよ。」


まだ考え事を続けているのか、エイトの表情は暗いままだ。

「それは無いと思うけど・・・。
 ごめん。先に進もうか!」

「ああ、先に進めば、秘密も分かるかもしれないからね。」

パーティは、墓を埋め先を目指すことにした。








巨大陸ガメの甲羅が見えなくなるころ、レヴィアが、暗く落ち込むエイトに話しかける。

「ねえ、エイト。」

「どうしたの?」

「もし、棺の中に・・・。」

エイトは、更に暗い顔になる。






レヴィアは、エイトに気を使いながらも質問を続ける。

「もし、棺の中に 大きくなる秘術が隠されてたら試してた?」

「レヴィア・・・?」







「でも残念だったね。大きくなる秘術も薬もなくって。」

「あの、そういったのを探してた訳じゃないんだけどな・・・。」







「じゃあ、何のために苦労してまで墓を掘ったんだ?」

レヴィアとの何気ないやり取りに、エイトの表情は、いつもの笑顔が戻っていた。





 ~ to be continued



【補足】


・巨大陸ガメ

高さ100cm位まで成長するカメ。洞窟内の陸地に生息するカメで主食は岩石などの岩を食べる。
移動速度は、人間の歩行と変わらない速度で移動でき、力も強く荷物も運べる。
以前は、巨大陸ガメを輸送の手段としていたようだが、巨大陸ガメを狙って襲ってくる魔物も多いことから、現在では、巨大陸ガメを連れて迷宮を進むことはない。



・(エイト)僕以外にありえない名前

アテラティッツ王国の王位継承者に含まれる名前であり、エイトには兄弟がいないことや、両親は 地獄の門の先に魂を捕らえられていることから、ありえない名前と断言している。



・アトランティス王国

アテラティッツ王国の伝承の違い、ダンテ王国(いまの地域)では、アトランティスという名前で広まっている。
この王国は、豊穣の神の力で海底に沈んだ島国でもある。



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