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2章・スタートライン
第1話 盗賊の盗賊
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~地獄の門から少し離れた林道~
そこには、新しくできた町への移住者や、一獲千金を夢見る冒険者であふれていた。
冒険者たちは、迷宮の情報を交換しながら町を目指している。
「ここの迷宮は、豊穣の神が直接介入してる迷宮らしいぜ。」
「ああ、死んでも生き返れるって話、聞いたか?」
「聞いたことあるけど、それ本当なのか?」
「ここだけの話、俺の仲間が生き返った奴を知ってるんだ。」
「らしいな。しかも、魔物を殺せば、宝石が手に入るらしいじゃねーか!倒したもんは、自分の物だしな!」
冒険者が話をしている所に、小太りの商人が割り込んでいる。
「みなさん、儲け話ですか?もし装備や日用品が必要になったら、ハロルド商会をお願いしますね!」
こういった光景も、迷宮で発展してきた町の特徴だろう。
そんな多くの人々の中、まだ子供もいるようだ。歳は、15~16といったところだろう。
よくみれば、その子供たちは、エイトとレヴィアのようだ。
「ねえ、エイト、なんかイメージと違うね。人が多くて気分悪くなってきた。」
「ほんと、こんなに多くの人を見たのは初めてかも。レヴィア、気分が悪いなら休む?」
「うん。そうする。」
そういうと、二人は、街道の脇の木陰で休むことにした。
二人が木陰で休み始めると、山賊風の男が3人、近寄ってきた。
「お嬢ちゃん、気分が悪いのかな?」
「・・・。」
レヴィアは、話しかけてきた山賊を睨む。
「どうしたの、怖い顔して。気分が悪いなら、俺たちの馬車で、ちょっと休憩しよっか」
「・・・失せろ。」
「はは、気が強そうだな、いつまで強気でいられるかな?」
「レヴィア、ほら、謝って先を目指そ、問題を起こしたら冒険者になれないよ。」
「うるせーぞガキ!」
そういって、山賊風の男は、エイトを突き飛ばす!
エイトは、不意に突き飛ばされ、よろけてしまう。
そんな、よろけたエイトを受け止めた女性がいた。
女性は、冒険者のようで、軽装の革鎧に、片手剣と小型の革の盾を装備している。
赤く長い髪が、風になびく姿が美しい女性だ。
「なんだ、この女、お前がコイツらの保護者かよ。」
「よくみたら、綺麗な顔してるな。お前も馬車に来いよ!」
山賊風の男たちは、女性の腕を強引に掴んでいる。
「あの、わたし、保護者とかではないんですけど、この二人は・・・。」
冒険者の女性は、山賊風の男に怯えながらも、抗議を続ける。
「なんだ、てめー!文句あんのか!殺すぞ!」
山賊風の男たちが、若い女性を威嚇する。
若い女性は、意を決したように、手を握りしめ口を開く。
「ダメな事はダメです。何もしてないじゃないですか。この子達を見逃してあげてください。」
若い女性の目は涙ぐみ、足は震えている。
見兼ねたレヴィアが、エイトを見る。
「おい、エイト。」
頷く、エイト。
「ああ、問題は起こしたくないけど、迷惑はかけられないよね。」
エイトは、腕を掴んでいた男と若い女性の間に、割って入った。
「なんだ、お前、なめてんのか?」
腕を掴んでいた男は、エイトを睨む。
「おい、こいつやっちまおうぜ!」
腕を掴んでいた男は、仲間を呼び、剣を抜く。
「・・・。」
「おい、お前ら・・・。」
腕を掴んでいた男が後ろを振り向くと、悶絶している仲間たちがいる。
悶絶した男たちを横目に、レヴィアが近づく。
「ゴフッ!」
~戦利品の馬車の中~
エイトは馬車の手綱を握り、若い女性は、その横に座っている。
・・・レヴィアは、馬車の中で、ゴロゴロしながら本を読んでいる。
「あの、逆に助けていただき、ありがとうございました。」
「いえ、こちらこそ、ご迷惑をおかけしました。」
「あの、」
エイトと、若い女性は、同時に口を開く。
「・・・すみません。先にどうぞ、」
「はい。僕の名前は、エイト=タイタンです。で、後ろでゴロゴロしてるのが、仲間のレヴィアです。宜しくお願いします。」
レヴィアは、ゴロゴロ揺れながら、本を読み続けている。
「あ、宜しくお願いします。私は、アルメディシア=ハンニバル。みんなからは、アルルって呼ばれてます。宜しくお願いします。」
「アルルさん、宜しくお願いします。」
アルルが、レヴィアの方を気にしながら、エイトに小声で話しかける。
「エイトさん、この馬車、持ってきて大丈夫ですかね?」
「・・・?」
「だって、レヴィアさんが当たり前のように乗り込んで、荷物をあさってたから、私も乗ってきましたけど、本当は山賊たちの馬車ですよね。」
エイトは何か気づいたような顔をする。
「あ、そういうことなのか、まあ、普通に考えれば・・・。」
「どうしたんですか?」
後ろで本を読みながら、レヴィアが答える。
「常識担当のアルルくん、君は素晴らしい。私もエイトも、いままで館の中に監禁されていて世間の常識を知らない。この馬車に乗ったのは、とある冒険者が、【倒したもんは、自分の物だしな!】と話しているのを聞いたから、私の物になったと勘違いしていたんだ。今後、アルルが仲間になってくれて冒険が楽になりそうだよ。」
「・・・。」
「えー!じゃあ、この馬車は盗品じゃないですか!早く降りないと、警備隊に捕まりますよ!」
エイトが、馬車を止める。
「もう遅い。」
アルルが馬車の周りを見渡すと、馬に乗った警備兵に囲まれている。
その中の一人が、エイトに近づく。口ひげが立派だ。歳は50前後だろうか。
「この馬車は盗品で間違いないよね。」
「そのようです。」
「話は、聞こえていたが、一応、神官様に判断を委ねることになる。3人ともついてきてくれるかな?」
「はい。もちろんついていきます。」
「協力感謝する。すまないが、一応、縄で縛らせてくれ。」
警備隊長は、いい人そうだ。
3人は、馬車を降り、近くの教会まで連行された。
~ to be continued
【補足】
ハロルド商会:
王国の商人協会に所属する、大商人の店。
商人協会順位は、第6位になる。
エイト(15歳):
地獄の門を目指す少年。背は低く、可愛い顔をしている。
腰には、滅びた国の武器、カタナを帯刀していて、腕には古代文字のブレスレットをしている。それ以外は、普通の冒険者。
レヴィア(15歳):
エイトと一緒に地獄の門を目指す少女。背は低いが、エイトより、少しだけ高い。
肩には、斜めにかけるように、空の革ポシェットをもっている。
お洒落が大好きで、毎日、微妙に違う服を着ている。
アルル(19歳):
スタイルがよく、すれ違う人が、振り向くほどの美女。
革製の小型盾と片手剣を装備している。片手剣の柄先には、カバーをかけるように、革の袋が取り付けてある。
山賊の馬車:
2頭引きの幌馬車。盗品だろうか、荷台の樽の中に、衣服や貴金属、装備品などが隠されていた。
幌馬車も、持ち主の刻印を消すために、黒く塗られている。
警備隊:
形式上は、王国所属になっているが、地方教会では、神殿騎士の不足などの理由で、教会所属になっている隊もある。
そこには、新しくできた町への移住者や、一獲千金を夢見る冒険者であふれていた。
冒険者たちは、迷宮の情報を交換しながら町を目指している。
「ここの迷宮は、豊穣の神が直接介入してる迷宮らしいぜ。」
「ああ、死んでも生き返れるって話、聞いたか?」
「聞いたことあるけど、それ本当なのか?」
「ここだけの話、俺の仲間が生き返った奴を知ってるんだ。」
「らしいな。しかも、魔物を殺せば、宝石が手に入るらしいじゃねーか!倒したもんは、自分の物だしな!」
冒険者が話をしている所に、小太りの商人が割り込んでいる。
「みなさん、儲け話ですか?もし装備や日用品が必要になったら、ハロルド商会をお願いしますね!」
こういった光景も、迷宮で発展してきた町の特徴だろう。
そんな多くの人々の中、まだ子供もいるようだ。歳は、15~16といったところだろう。
よくみれば、その子供たちは、エイトとレヴィアのようだ。
「ねえ、エイト、なんかイメージと違うね。人が多くて気分悪くなってきた。」
「ほんと、こんなに多くの人を見たのは初めてかも。レヴィア、気分が悪いなら休む?」
「うん。そうする。」
そういうと、二人は、街道の脇の木陰で休むことにした。
二人が木陰で休み始めると、山賊風の男が3人、近寄ってきた。
「お嬢ちゃん、気分が悪いのかな?」
「・・・。」
レヴィアは、話しかけてきた山賊を睨む。
「どうしたの、怖い顔して。気分が悪いなら、俺たちの馬車で、ちょっと休憩しよっか」
「・・・失せろ。」
「はは、気が強そうだな、いつまで強気でいられるかな?」
「レヴィア、ほら、謝って先を目指そ、問題を起こしたら冒険者になれないよ。」
「うるせーぞガキ!」
そういって、山賊風の男は、エイトを突き飛ばす!
エイトは、不意に突き飛ばされ、よろけてしまう。
そんな、よろけたエイトを受け止めた女性がいた。
女性は、冒険者のようで、軽装の革鎧に、片手剣と小型の革の盾を装備している。
赤く長い髪が、風になびく姿が美しい女性だ。
「なんだ、この女、お前がコイツらの保護者かよ。」
「よくみたら、綺麗な顔してるな。お前も馬車に来いよ!」
山賊風の男たちは、女性の腕を強引に掴んでいる。
「あの、わたし、保護者とかではないんですけど、この二人は・・・。」
冒険者の女性は、山賊風の男に怯えながらも、抗議を続ける。
「なんだ、てめー!文句あんのか!殺すぞ!」
山賊風の男たちが、若い女性を威嚇する。
若い女性は、意を決したように、手を握りしめ口を開く。
「ダメな事はダメです。何もしてないじゃないですか。この子達を見逃してあげてください。」
若い女性の目は涙ぐみ、足は震えている。
見兼ねたレヴィアが、エイトを見る。
「おい、エイト。」
頷く、エイト。
「ああ、問題は起こしたくないけど、迷惑はかけられないよね。」
エイトは、腕を掴んでいた男と若い女性の間に、割って入った。
「なんだ、お前、なめてんのか?」
腕を掴んでいた男は、エイトを睨む。
「おい、こいつやっちまおうぜ!」
腕を掴んでいた男は、仲間を呼び、剣を抜く。
「・・・。」
「おい、お前ら・・・。」
腕を掴んでいた男が後ろを振り向くと、悶絶している仲間たちがいる。
悶絶した男たちを横目に、レヴィアが近づく。
「ゴフッ!」
~戦利品の馬車の中~
エイトは馬車の手綱を握り、若い女性は、その横に座っている。
・・・レヴィアは、馬車の中で、ゴロゴロしながら本を読んでいる。
「あの、逆に助けていただき、ありがとうございました。」
「いえ、こちらこそ、ご迷惑をおかけしました。」
「あの、」
エイトと、若い女性は、同時に口を開く。
「・・・すみません。先にどうぞ、」
「はい。僕の名前は、エイト=タイタンです。で、後ろでゴロゴロしてるのが、仲間のレヴィアです。宜しくお願いします。」
レヴィアは、ゴロゴロ揺れながら、本を読み続けている。
「あ、宜しくお願いします。私は、アルメディシア=ハンニバル。みんなからは、アルルって呼ばれてます。宜しくお願いします。」
「アルルさん、宜しくお願いします。」
アルルが、レヴィアの方を気にしながら、エイトに小声で話しかける。
「エイトさん、この馬車、持ってきて大丈夫ですかね?」
「・・・?」
「だって、レヴィアさんが当たり前のように乗り込んで、荷物をあさってたから、私も乗ってきましたけど、本当は山賊たちの馬車ですよね。」
エイトは何か気づいたような顔をする。
「あ、そういうことなのか、まあ、普通に考えれば・・・。」
「どうしたんですか?」
後ろで本を読みながら、レヴィアが答える。
「常識担当のアルルくん、君は素晴らしい。私もエイトも、いままで館の中に監禁されていて世間の常識を知らない。この馬車に乗ったのは、とある冒険者が、【倒したもんは、自分の物だしな!】と話しているのを聞いたから、私の物になったと勘違いしていたんだ。今後、アルルが仲間になってくれて冒険が楽になりそうだよ。」
「・・・。」
「えー!じゃあ、この馬車は盗品じゃないですか!早く降りないと、警備隊に捕まりますよ!」
エイトが、馬車を止める。
「もう遅い。」
アルルが馬車の周りを見渡すと、馬に乗った警備兵に囲まれている。
その中の一人が、エイトに近づく。口ひげが立派だ。歳は50前後だろうか。
「この馬車は盗品で間違いないよね。」
「そのようです。」
「話は、聞こえていたが、一応、神官様に判断を委ねることになる。3人ともついてきてくれるかな?」
「はい。もちろんついていきます。」
「協力感謝する。すまないが、一応、縄で縛らせてくれ。」
警備隊長は、いい人そうだ。
3人は、馬車を降り、近くの教会まで連行された。
~ to be continued
【補足】
ハロルド商会:
王国の商人協会に所属する、大商人の店。
商人協会順位は、第6位になる。
エイト(15歳):
地獄の門を目指す少年。背は低く、可愛い顔をしている。
腰には、滅びた国の武器、カタナを帯刀していて、腕には古代文字のブレスレットをしている。それ以外は、普通の冒険者。
レヴィア(15歳):
エイトと一緒に地獄の門を目指す少女。背は低いが、エイトより、少しだけ高い。
肩には、斜めにかけるように、空の革ポシェットをもっている。
お洒落が大好きで、毎日、微妙に違う服を着ている。
アルル(19歳):
スタイルがよく、すれ違う人が、振り向くほどの美女。
革製の小型盾と片手剣を装備している。片手剣の柄先には、カバーをかけるように、革の袋が取り付けてある。
山賊の馬車:
2頭引きの幌馬車。盗品だろうか、荷台の樽の中に、衣服や貴金属、装備品などが隠されていた。
幌馬車も、持ち主の刻印を消すために、黒く塗られている。
警備隊:
形式上は、王国所属になっているが、地方教会では、神殿騎士の不足などの理由で、教会所属になっている隊もある。
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