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悪魔召喚士

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「本当に、それが最善か?」

エイルの言葉に神官が反応をみせる。


「あなたは 何が言いたいんですか!?」

最弱の悪魔エイルを睨みつける神官と康孝。
エイルは、気にもせずに話し続ける。

「おそらく、ハンは魔王を倒した後、この世界に君臨し、この世界の魔王になるだろう。
 俺たち天魔界の悪魔は、最強の悪魔が魔王を名乗り、領土を自分の好きな色に染める権利があると考えている。
 お前たちに、いまの魔王より強いハンを倒すことができるのか?」

「問題ありません。
 召喚士が気を失ったり、悪魔との契約を解除すれば、召喚された悪魔の力は10分の1程度まで下がります。
 いくら総合力3万の強力な悪魔でも、力が下がれば、騎士団に倒せる相手です。」

「・・・お前ら、ハンの実力を見誤ってるぞ。」


エイルが千紘の肩を抱きしめると、巨大な青い狼の悪魔ハンが、先ほどと比べ物にならない程の遠吠えを上げる。




「「「アオォォォン!」」」




周囲の大気が激しく揺れ始める。
周囲の人は 地震でもないのに、その場に立ちことが困難な程の圧を受ける。
総合力を図る装置を持っていた別の神官が、声をあげる。


「神官長、大変です。
 この悪魔の総合力が・・・。」

「なに!?
 どうしたというの?」

「4、5、6・・・。」

「6万!?」

「い、いえ、60、70、80、90万、そ、測定不能です!」

「ひゃ、100万越え!!!」


「神官長、危険です。
 このまま、この悪魔を帰しましょう!」

「そ、そうですね。
 我々が触れていい領域の悪魔ではありません。
 まさに神の領域、魔神を召喚してしまったようです。」


神官たちの決定に不満があるのだろう、康孝は止める神官たちを振り切った。

「悪魔ハン、この俺、康孝と契約だ!」



「「「な、なんてことを!」」」


神官たちは、康孝の暴挙に絶望しているようだ。


「・・・。」






「・・・な、なぜ契約が完了しないんだよ!
 おい、神官!どうなってるんだよ!
 お前らが何かしたんだろ!」


「いえ、私たちは何も・・・。
 もしかして、名前が違ったのでは・・・?」

「名前が違ってた?
 おい、千紘!お前の悪魔が言ってた名前は本当にあっているんだろうな!?」

康孝は、千紘とエイルに詰め寄る。
エイルは千紘を庇うように康孝の前に立ち、口を開く。

「名前は間違っていないが、悪魔に転生する際に別の名前に変えたのかも知れないな。
 残念だが、転生する際に変えた名前を 俺は知らないぞ。」


「クソッ!
 使えねーぜ!」


悪態を吐く康孝に神官が声をかける。

「康孝さん、この悪魔と契約することはリスクが高すぎます。
 我々の意見としましては、満場一致で悪魔エイルの助言を聞き入れようと思っています。」

「クソ、クソ、クソッ!」


神官たちは納得できていない康孝を別の場所へと連れていく。
その間に、巨大な青い狼の悪魔ハンを還すための準備を始めた。

エイルは、巨大な青い狼の悪魔ハンに近づき小声で声をかけた。
その瞬間、千紘の目に写った、巨大な青い狼の悪魔ハンは 千紘を見て笑ったような気がした。
エイルは千紘の方を振り返ると、笑顔で声をかける。

「千紘、お前は俺が守るからな。」

「ありがと・・・。
 ってか、何を言ってるの?
 君より私の方が強いんですけど・・・。」


大笑いするエイルと、嬉しそうに その様子を眺める巨大な青い狼の悪魔ハン。
巨大な青い狼の悪魔ハンを還す準備が整ったからなのか、徐々に巨大な青い狼の悪魔ハンの姿が薄くなっていく。

「蒼き狼ジョチ、天魔界を宜しく頼む。」

エイルの言葉が聞こえたのか、巨大な青い狼の悪魔は軽く頷くと、その姿を消してしまった。



巨大な青い狼の悪魔が完全に消え去ったのを確認して、神官たちも広場から姿を消していく。
千紘とエイルも、部屋に戻ることにした。

部屋に戻ると、千紘がエイルを覗き込むようにして質問してきた。


「ねえ、蒼き狼ジョチって、さっきの悪魔の名前?」

「ふふふっ、どうだったかな?」

「君は知らなかったことにしておくね。」

「ありがと。」

千紘とエイルは自然と笑顔になり、お互いに微笑みあった。


(どうして君は、そんなに優しいの?
 悪魔なのに悪魔じゃないみたい。まるで・・・。)

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