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ケイト編
~新章・二十三節~
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~最西端シェルター~
シェルター近くに戻ると、みんなで、岩山を砲撃している。
戻ってきたバベルは、攻撃を止め、状況を確認する。
バベル「ナナセ、状況は?ドラゴンは、岩山に潜んでるのか?」
ナナセ「隊長!それが、あの岩山全体が、ドラゴンなんです!」
岩山の大きさは、5階建てのビルぐらいで、ゴツゴツはしているが、直径30m程の円錐形になる。先ほど、シェルターに入るために近くを通った時は、微動だにしなかったのに、急に動き出したのには、何か理由があるのだろうか。
バベル「岩山全体が?被害は?」
ナナセ「はい!30名です。先ほど攻撃を受けた際に、近くにいた第二小隊が全滅してます。」
バベル「今は山のようになっているが、どういった攻撃方法なんだ?」
ニノミヤ「隊長、全滅って、ヤイダ達、やられたって事なんすか?」
ニノミヤが悲しそうな顔をしている。ニノミヤとヤイダは、仲良くやっていたようだ。
バベル「・・・。」
ナナセ「・・・あの岩山が、急に持ち上がって、その時に岩の下側から、触手のようなものが出てきたんです。その触手に捕まってしまった兵士も戦車も、そのまま引き込まれるようにやられました。」
ニノミヤが、銃を握りしめ、バベルに懇願する。
ニノミヤ「・・・隊長、命令してほしいっす。」
バベル「ああ、このまま外皮を攻撃しても、ダメージは与えられない。その証拠に、戦車の砲弾でも、山に傷が入ってないだろ。」
ナナセ「ええ、打つ手なしですね。」
バベル「何か、あのドラゴンが触手を出してきた理由さえ分かれば、手があると思うんだが・・・。」
ナナセ「すみません。私も離れた位置にいたので・・・。確認してきます。」
そこに、近くで話を聞いていたミツハシが口を開く。
ミツハシ「隊長、自分が近くで見ていました。あの時、第二小隊は、空中を偵察していたドローンを見つけ、いつものように、近くまで引き付けてから攻撃を開始しました。
そのドローンが落下し、地面に衝突したときに、岩から触手が出てきました。」
ニノミヤ「いつもの戦闘機械をおびき出す為の作戦っすね!ってことは、あのドラゴン、戦闘機械を倒してるってことっすかね。」
ナナセ「それか、地面加わった強い衝撃の振動を認識してるってことでしょうか?」
バベル「・・・ニノミヤの意見の方だろうな。振動なら、戦車隊が近くを通った時にも同じ反応をしてよさそうだ。しかし、そのときは何も起きていない。」
ミツハシ「でも、なぜ戦闘機械を襲うんでしょうか。」
ナナセ「俺たちの仲間ってわけでもなさそうですし・・・。」
ニノミヤ「なに悩んでんすか?ドローンが落ちて時間が経ってんでしょ、したら、そろそろ戦闘機械がくるころじゃないっすかね?それ見たら、分かるんじゃないっすか?タイヤの方なら、本気はえーんで、もう来てもおかしくないっすよ。」
全員、ニノミヤの方を見る。
・・・確かにそうだ。
バベルは伝令兵に指令を伝える!
バベル「岩山ドラゴンの南500mを中心に、円状に部隊を配置する!岩山ドラゴンには、近づきすぎるな!周囲を警戒して、敵の動きに注意しろ!」
全軍、移動を開始し、陣形を整えていった。
~15分後~
伝令部隊の兵士が駆け寄ってくる。
伝令兵「隊長!11時の方向にタイヤ型機械が迫ってます!距離はおよそ10Km。」
バベル「全部隊に伝令してくれ。大至急!陣形を維持したまま、東に800m移動する。」
伝令兵「了解!」
伝令兵は、戦車の上に上り、手旗信号を使い、指示を伝える。
別の伝令兵二人が、駆け寄ってくる。
伝令兵B「隊長!2時の方向には、まだ攻撃を仕掛ける様子はありませんが、戦闘機械が集結しているようです。現状で20機程の大部隊です。」
伝令兵C「隊長!8時の方向にも戦闘機械が現れました。数は18機、こちらへ進行しています。」
バベルは疑問に感じていた。通常、ドローンを撃ち落とした後の戦闘でも、機械2~3台程度、多くても6台くらいしか来ない。それなのに今回は、通常の20倍もの機械が集結している。しかも、まだ数が増えそうな勢いだ。
バベル「戦車は全て南の防衛に向かわせろ。北東の戦闘機械は、動きがあれば報告!」
バベル「機械は、出来る限り、岩山ドラゴンの方に向かうように、それぞれの部隊長は、部隊を流動的に動かせ!」
伝令兵は、指示を伝える。
電波などを使う通信機器が全て傍受されてしまう状況で、海軍の手旗信号のおかげで、戦闘の効率は大幅に上がったことは間違いないだろう。
~3分後~
タイヤ機械が岩山ドラゴンに近づいた!
その時、岩山ドラゴンが動き出し、触手を出し、付近の動きのある物体を全て絡めとる!
岩山ドラゴンは、触手を使い、岩山の下にタイヤ機械を全て絡めとると、また以前のように地面に沈み込み、動かなくなる。
バベル「全軍に指令、岩山ドラゴンを利用して戦闘を行う!全軍、西に1500m移動、その後、南西の敵に集中せよ!
北東の機械は、俺に任せろ。万が一、岩山ドラゴンが動かなかった場合は、時間を稼ぐ!その時は、南西の機械を撃破後、北東の戦闘に参加してくれ!」
バベルは、北東の部隊と合流する。
南西の機械との戦闘は、戦車を集結させていたこともあり、被害は最小限に抑えることができた。戦車3台が大破、2台が走行不能、負傷者多数、戦死者ゼロ。
北東に集結していた機械は、岩山ドラゴンの近くを通り抜ける際に、触手に襲われ全滅した。大型のドラゴンの前では、対ドラゴン用に製造された強力な兵器であっても、なすすべがなかったようだ。
その後も、警戒し続けていたが、岩山ドラゴンが動く気配はなく、機械の集結も確認されない。
迷彩服「隊長、あのドラゴン、3週間くらい前から、あの位置にいますよ。移動ができないんじゃないですかね。」
ニノミヤ「っすね、ちょっと重くなりすぎたんすかね?」
バベル「そうだな動きはないな。・・・仇を討ってやりたかったんだが。」
ナナセ「隊長、その気持ちで、ヤイダも幸せですよ。俺が死んでも、そんなこと思わないで下さいね。」
バベル「ああ、分かった。・・・皆には、俺の敵討ちだけ、頼もうかな。」
ニノミヤ「隊長、そりゃズルいっすよぉ!」
迷彩服「ニノミヤ、俺より先に死ぬなってことだよ。」
他の隊員は、みな笑っている。
ニノミヤ「え、でも、ナナセさんも、勘違いしてたっすよね、絶対。」
ナナセ「・・・俺を巻き込むなよ。」
ニノミヤが居てくれて、みな明るくなる。
空は赤く染まり始めた。
日が暮れる前に、部隊は、シェルター内に引き上げることにした。
ここのシェルターは、ある意味、ドラゴンに守られて安全なのかもしれない。
その日は、弔いと、今後の部隊の出発も兼ねて、久しぶりに酒を振る舞った。
故郷の家族や思い出、別れの悲しみ、未来への不安。
久しぶりの酒に、それぞれ思うことは違うだろう。
この日だけは、酒を飲める者も、飲めない者も、
そう言った思いを呑み込むように、酒を飲み込んだ。
~15日目・シェルター内、司令室~
迷彩服「隊長、新しく編成した部隊編成の通達が終わりました。本当に移動開始は、明日に変更で大丈夫ですか?」
バベル「ああ、問題ないよ。二日酔いで動けない人も多いでしょ。」
そういって、ナナセを指さす。
ナナセ「隊長、俺は、、、問題ないです!」
ニノミヤ「本気ぱねーっすね!ナナセさん、ウィスキー半分くらいしか飲んでなくないっすか?」
迷彩服「ナナセ、下戸なんだろ?半分って、けっこう飲んだな。」
ナナセ「・・・ショットグラスの半分です。」
ニノミヤ「本気ぱねーっしょ!」
迷彩服「マジ、ぱねーな。」
バベル「まあ、とにかく、全員戦い続きで疲労もあるだろう。
昨日、酒を飲む前に話した通り、見張りは交代で、明日の昼まで、ゆっくり休みをとろう。」
~16日目・昼過ぎ~
バベルは、部隊を3部隊に分け、移動を開始した。
バベル率いる第一部隊は、重傷の兵士などの戦えない者と、その搬送の部隊で11名編成になる。戦車や必要以上の装備はない。
この部隊は、主な戦闘は、バベルが引き受け、南の連絡通路を渡り、新天地を目指す。
連絡通路を抜ければ、戦闘がなければ、2日ほどで新天地にたどり着けるだろう。
迷彩服率いる第二部隊は、戦闘も想定される主力の部隊で、戦車なども配置されている、88名編成で、弾薬や食料なども余分に携行してある。作戦の変更などは、迷彩服に一任しているため、ある程度自由に作戦変更もできる。
ナナセ率いる第三部隊は、19名編成で、第一部隊と同じように戦える負傷兵で編成してある。この部隊は作戦が大幅に変更になっている。
第二部隊に、後方支援で同行し、終着点から、別行動を起こし南を目指す。
そこからは、従来の作戦通り、補給部隊と合流し、物資の輸送も兼ねて新天地を目指すことになった。
バベルの部隊は順調に先を進む。午前中にバベルが下見をしていて、橋までの安全は確認されているからだ。
その連絡通路の長い橋の手前で、遅れてきたバベルが部隊に合流する。
兵士「バベル隊長、どうしたんですか?」
バベル「これで罠を仕掛けてきた。」
兵士「これって、ライフルでですか?」
バベル「ああ、ドローンを数体、シェルターの中にプロペラを壊した状態で置いてきた。」
兵士「なるほど!応援に来た、機械は岩山ドラゴンに襲われるってことですね!」
バベル「そういうこと。でもシェルターの中に入れるのが凄く苦労したよ。俺まで襲われるし、俺を覚えたのか、出るときも襲われそうになるし・・・。」
兵士「あの触手を逃げ延びるなんて、さすがですね!」
バベル「ありがとう。・・・ここにいると、応援に来た機械に攻撃を受けるかもしれないから、先を急ごう!」
兵士「分かりました。」
パオと解放したシェルターの近くを通り、もう一つの南に抜ける連絡通路の橋に向かう。
三人で止まった宿の近くも通る。
遠目に見るが、何も変わらないような気がした。
南の連絡通路の橋にたどり着くころには、日は落ち暗くなっていた。
空からは、雨がポツポツと降り始めた。
バベルは行軍を止め、運転していた兵士と話す。
バベル「夜間の移動は、先が見通せず危険が伴う。橋を渡ったところで休める場所を探そう。」
兵士「そうですね。正直、このまま暗闇の中を走るのは怖かったんですよ。」
バベル「誰か、このあたりの地理に詳しい人間はいないかな?」
兵士は、輸送車両の荷台で休んでいた兵士にも声をかける。
残念なことに、基地の近くは分かるらしいのだが、この付近の地理に詳しい者はいなかった。
バベル「しかたない。橋を渡って進みながら探すとしよう。」
連絡通路の橋を渡り始めたとき、雨が強くなってきた。
その雨は次第に強くなっていく。
3分の2程度は進んだだろうか、先を進むバベルが、急にブレーキをかける!
バイクを降りたバベルが、運転している兵士に声をかける。
バベル「ここは通れないかもしれない。ハイビームに切り替えて、サーチライトも点灯してくれ。」
兵士「どうしたんですか?」
兵士は、指示の通り、ライトをハイビームに切り替える。助手席の兵士は、ドア横の梯子を登り、運転席の上に据え付けてあるサーチライトを点灯し、先を照らす。
ライトの明かりに照らされている道は、何も変わらないようにみえる。
たしかに、風が強く吹くたびに、何か金属のきしむような音が鳴り響くのは気づいた。
バベルが指さす方を見ると、その理由が分かった。
この橋は、吊り橋構造になっているのだが、等間隔で並んでいた柱がなくなっている。
バベル「この橋は、もうすぐ倒壊する。このまま一気に渡るか、引き返すか。道は二つに一つだ。。。引き返すにしても、危険は伴う。」
バベルは、持っていたライトを後方に向ける。
そこにあるはずの、柱もなくなっている。
バベル「いまサーチライトで確認したところ、橋は向こう岸まで通じている。このまま速度を上げて、一気に進もうと思う。重量の重い、そっちが先に進んでくれ。」
兵士「分かりました。バベル隊長も気を付けてきてください。」
助手席に座っていた兵士に、重症患者の安全管理を任せ、一気に駆け抜ける作戦に出た。
バベルがエンジンをかけ、輸送車両に道を譲る。
輸送車両が、ゆっくりと進みだし、徐々に速度を上げていく。
バベルは、バイクでその後を追う。
徐々に上がる速度は、100Kmを超えた。
そのとき、突風が襲う!
橋が揺れるほどの突風だ!
ピン!
ピン!
ピン!
ピピピイン!
橋を支えていたワイヤーが切れ始める!
車両の速度は、160Kmに達する!
ドボーン!
ドボ!ドバン!
ザッパーン!
橋の後ろから何かが水に落ちる音が響く!
まだ、橋の終わりまでは届かない!
バベルは、一気に加速し、輸送車両を追い越し、一瞬で視界から消えた。
後ろの橋が落ちるときに、強化ワイヤーが引っ張られ、つられるように橋が落下していく。
その速度は、輸送車両の最高速度より圧倒的に早く、輸送車両の、すぐ後ろまで橋が崩れてきている。
ダーン!
バチン!!!
シュルルルルルルル!
輸送車両のはるか前方で銃声が鳴り響く。
ダーン!
バチン!!!
シュルルルルルルル!
ザザッァ!
何かが屋根をかすめたのか、車体が激しく揺れる!
輸送車両が、銃声の聞こえた地点に近づく!
バベルがいる!
バベルの横を通り過ぎる輸送車両。
バベルがバイクを動かし、輸送車両の後ろを走る。
後方の橋が崩れる音は止んでいる。
橋を渡り終えたところで、徐々に速度を落とし、輸送車両は止まった。
バベルは、そのまま輸送車両の横に並べ荷台に移動する。
荷台の幌屋根は、ワイヤーがかすめたのか、バッサリと切れている。
バベル「全員、怪我はないか?」
助手席にいた兵士「確認します。・・・はい、全員無事です。」
運転していた兵士も降りてきた。
運転していた兵士「隊長、いったい何をしたんですか?銃声が2発ほど聞こえたんですけど。」
助手席にいた兵士「先回りして連鎖して崩れていく橋の強化ワイヤーを切ったんですよね。
銃声のあと、橋が崩れる速度が遅くなり、ワイヤーらしきものが暗闇に引きずり込まれていくのを見ました。二回目の銃声の後のワイヤーは屋根をかすめていったんですけど、幸い大事にならなくて助かりました。」
運転していた兵士「あの短い時間で、強化ワイヤーに狙いをつけて、1発で切ったんですか!?」
バベル「いや、正確には、柱に固定されていた部分で、引っ張られて脆くなってそうな所を狙ったんだ。無事に間に合ってよかった。」
バベルは笑顔で答えるが、普通は考え付かないことだし、考え付いたとしても成功率も低く挑戦しないだろう。それを自分だけ逃げることもできたのに、危険を顧みず挑戦するバベルに感動するものも多かった。
バベル「よし、無事が確認できたんだし、雨に濡れ続けるのも傷によくない。すぐに休める場所を探そう。あと、これ、思い出の品なんだけど使ってくれ。」
そういって、当たり前のように、自分の普段持っている小型の荷物入れから、1枚の保温シートを取り出し、助手席にいた兵士に手渡した。
バベルたちの第一舞台は、泊まれる場所を探しに移動を開始する。
~移動中の輸送車両内~
重傷の兵士A「こんな暗闇の中、しかも雨まで降ってるのに・・・。バベル隊長は、神がかりの技があるな。」
重傷の兵士B「だな、しかも、この保温シート、バベル隊長の記憶に唯一残ってる家族がくれたシートらしいぞ。以前、ニノミヤ隊員にきいたんだよ。」
助手席にいた兵士「そんな大事なものだったのか・・・。おれ、破っちゃったよ。」
重傷の兵士A「いや、隊長は、俺らのために使えるんだったら、よろこんで破るんじゃないかな。素晴らしい人だし。」
重傷の兵士C「まったくだよ。こんな素晴らしい人いないよな。まさに神だね。」
南の連絡道路は完全に倒壊したが、バベルに対する信頼は、より強固に築かれたようだ。
~ to be continued
シェルター近くに戻ると、みんなで、岩山を砲撃している。
戻ってきたバベルは、攻撃を止め、状況を確認する。
バベル「ナナセ、状況は?ドラゴンは、岩山に潜んでるのか?」
ナナセ「隊長!それが、あの岩山全体が、ドラゴンなんです!」
岩山の大きさは、5階建てのビルぐらいで、ゴツゴツはしているが、直径30m程の円錐形になる。先ほど、シェルターに入るために近くを通った時は、微動だにしなかったのに、急に動き出したのには、何か理由があるのだろうか。
バベル「岩山全体が?被害は?」
ナナセ「はい!30名です。先ほど攻撃を受けた際に、近くにいた第二小隊が全滅してます。」
バベル「今は山のようになっているが、どういった攻撃方法なんだ?」
ニノミヤ「隊長、全滅って、ヤイダ達、やられたって事なんすか?」
ニノミヤが悲しそうな顔をしている。ニノミヤとヤイダは、仲良くやっていたようだ。
バベル「・・・。」
ナナセ「・・・あの岩山が、急に持ち上がって、その時に岩の下側から、触手のようなものが出てきたんです。その触手に捕まってしまった兵士も戦車も、そのまま引き込まれるようにやられました。」
ニノミヤが、銃を握りしめ、バベルに懇願する。
ニノミヤ「・・・隊長、命令してほしいっす。」
バベル「ああ、このまま外皮を攻撃しても、ダメージは与えられない。その証拠に、戦車の砲弾でも、山に傷が入ってないだろ。」
ナナセ「ええ、打つ手なしですね。」
バベル「何か、あのドラゴンが触手を出してきた理由さえ分かれば、手があると思うんだが・・・。」
ナナセ「すみません。私も離れた位置にいたので・・・。確認してきます。」
そこに、近くで話を聞いていたミツハシが口を開く。
ミツハシ「隊長、自分が近くで見ていました。あの時、第二小隊は、空中を偵察していたドローンを見つけ、いつものように、近くまで引き付けてから攻撃を開始しました。
そのドローンが落下し、地面に衝突したときに、岩から触手が出てきました。」
ニノミヤ「いつもの戦闘機械をおびき出す為の作戦っすね!ってことは、あのドラゴン、戦闘機械を倒してるってことっすかね。」
ナナセ「それか、地面加わった強い衝撃の振動を認識してるってことでしょうか?」
バベル「・・・ニノミヤの意見の方だろうな。振動なら、戦車隊が近くを通った時にも同じ反応をしてよさそうだ。しかし、そのときは何も起きていない。」
ミツハシ「でも、なぜ戦闘機械を襲うんでしょうか。」
ナナセ「俺たちの仲間ってわけでもなさそうですし・・・。」
ニノミヤ「なに悩んでんすか?ドローンが落ちて時間が経ってんでしょ、したら、そろそろ戦闘機械がくるころじゃないっすかね?それ見たら、分かるんじゃないっすか?タイヤの方なら、本気はえーんで、もう来てもおかしくないっすよ。」
全員、ニノミヤの方を見る。
・・・確かにそうだ。
バベルは伝令兵に指令を伝える!
バベル「岩山ドラゴンの南500mを中心に、円状に部隊を配置する!岩山ドラゴンには、近づきすぎるな!周囲を警戒して、敵の動きに注意しろ!」
全軍、移動を開始し、陣形を整えていった。
~15分後~
伝令部隊の兵士が駆け寄ってくる。
伝令兵「隊長!11時の方向にタイヤ型機械が迫ってます!距離はおよそ10Km。」
バベル「全部隊に伝令してくれ。大至急!陣形を維持したまま、東に800m移動する。」
伝令兵「了解!」
伝令兵は、戦車の上に上り、手旗信号を使い、指示を伝える。
別の伝令兵二人が、駆け寄ってくる。
伝令兵B「隊長!2時の方向には、まだ攻撃を仕掛ける様子はありませんが、戦闘機械が集結しているようです。現状で20機程の大部隊です。」
伝令兵C「隊長!8時の方向にも戦闘機械が現れました。数は18機、こちらへ進行しています。」
バベルは疑問に感じていた。通常、ドローンを撃ち落とした後の戦闘でも、機械2~3台程度、多くても6台くらいしか来ない。それなのに今回は、通常の20倍もの機械が集結している。しかも、まだ数が増えそうな勢いだ。
バベル「戦車は全て南の防衛に向かわせろ。北東の戦闘機械は、動きがあれば報告!」
バベル「機械は、出来る限り、岩山ドラゴンの方に向かうように、それぞれの部隊長は、部隊を流動的に動かせ!」
伝令兵は、指示を伝える。
電波などを使う通信機器が全て傍受されてしまう状況で、海軍の手旗信号のおかげで、戦闘の効率は大幅に上がったことは間違いないだろう。
~3分後~
タイヤ機械が岩山ドラゴンに近づいた!
その時、岩山ドラゴンが動き出し、触手を出し、付近の動きのある物体を全て絡めとる!
岩山ドラゴンは、触手を使い、岩山の下にタイヤ機械を全て絡めとると、また以前のように地面に沈み込み、動かなくなる。
バベル「全軍に指令、岩山ドラゴンを利用して戦闘を行う!全軍、西に1500m移動、その後、南西の敵に集中せよ!
北東の機械は、俺に任せろ。万が一、岩山ドラゴンが動かなかった場合は、時間を稼ぐ!その時は、南西の機械を撃破後、北東の戦闘に参加してくれ!」
バベルは、北東の部隊と合流する。
南西の機械との戦闘は、戦車を集結させていたこともあり、被害は最小限に抑えることができた。戦車3台が大破、2台が走行不能、負傷者多数、戦死者ゼロ。
北東に集結していた機械は、岩山ドラゴンの近くを通り抜ける際に、触手に襲われ全滅した。大型のドラゴンの前では、対ドラゴン用に製造された強力な兵器であっても、なすすべがなかったようだ。
その後も、警戒し続けていたが、岩山ドラゴンが動く気配はなく、機械の集結も確認されない。
迷彩服「隊長、あのドラゴン、3週間くらい前から、あの位置にいますよ。移動ができないんじゃないですかね。」
ニノミヤ「っすね、ちょっと重くなりすぎたんすかね?」
バベル「そうだな動きはないな。・・・仇を討ってやりたかったんだが。」
ナナセ「隊長、その気持ちで、ヤイダも幸せですよ。俺が死んでも、そんなこと思わないで下さいね。」
バベル「ああ、分かった。・・・皆には、俺の敵討ちだけ、頼もうかな。」
ニノミヤ「隊長、そりゃズルいっすよぉ!」
迷彩服「ニノミヤ、俺より先に死ぬなってことだよ。」
他の隊員は、みな笑っている。
ニノミヤ「え、でも、ナナセさんも、勘違いしてたっすよね、絶対。」
ナナセ「・・・俺を巻き込むなよ。」
ニノミヤが居てくれて、みな明るくなる。
空は赤く染まり始めた。
日が暮れる前に、部隊は、シェルター内に引き上げることにした。
ここのシェルターは、ある意味、ドラゴンに守られて安全なのかもしれない。
その日は、弔いと、今後の部隊の出発も兼ねて、久しぶりに酒を振る舞った。
故郷の家族や思い出、別れの悲しみ、未来への不安。
久しぶりの酒に、それぞれ思うことは違うだろう。
この日だけは、酒を飲める者も、飲めない者も、
そう言った思いを呑み込むように、酒を飲み込んだ。
~15日目・シェルター内、司令室~
迷彩服「隊長、新しく編成した部隊編成の通達が終わりました。本当に移動開始は、明日に変更で大丈夫ですか?」
バベル「ああ、問題ないよ。二日酔いで動けない人も多いでしょ。」
そういって、ナナセを指さす。
ナナセ「隊長、俺は、、、問題ないです!」
ニノミヤ「本気ぱねーっすね!ナナセさん、ウィスキー半分くらいしか飲んでなくないっすか?」
迷彩服「ナナセ、下戸なんだろ?半分って、けっこう飲んだな。」
ナナセ「・・・ショットグラスの半分です。」
ニノミヤ「本気ぱねーっしょ!」
迷彩服「マジ、ぱねーな。」
バベル「まあ、とにかく、全員戦い続きで疲労もあるだろう。
昨日、酒を飲む前に話した通り、見張りは交代で、明日の昼まで、ゆっくり休みをとろう。」
~16日目・昼過ぎ~
バベルは、部隊を3部隊に分け、移動を開始した。
バベル率いる第一部隊は、重傷の兵士などの戦えない者と、その搬送の部隊で11名編成になる。戦車や必要以上の装備はない。
この部隊は、主な戦闘は、バベルが引き受け、南の連絡通路を渡り、新天地を目指す。
連絡通路を抜ければ、戦闘がなければ、2日ほどで新天地にたどり着けるだろう。
迷彩服率いる第二部隊は、戦闘も想定される主力の部隊で、戦車なども配置されている、88名編成で、弾薬や食料なども余分に携行してある。作戦の変更などは、迷彩服に一任しているため、ある程度自由に作戦変更もできる。
ナナセ率いる第三部隊は、19名編成で、第一部隊と同じように戦える負傷兵で編成してある。この部隊は作戦が大幅に変更になっている。
第二部隊に、後方支援で同行し、終着点から、別行動を起こし南を目指す。
そこからは、従来の作戦通り、補給部隊と合流し、物資の輸送も兼ねて新天地を目指すことになった。
バベルの部隊は順調に先を進む。午前中にバベルが下見をしていて、橋までの安全は確認されているからだ。
その連絡通路の長い橋の手前で、遅れてきたバベルが部隊に合流する。
兵士「バベル隊長、どうしたんですか?」
バベル「これで罠を仕掛けてきた。」
兵士「これって、ライフルでですか?」
バベル「ああ、ドローンを数体、シェルターの中にプロペラを壊した状態で置いてきた。」
兵士「なるほど!応援に来た、機械は岩山ドラゴンに襲われるってことですね!」
バベル「そういうこと。でもシェルターの中に入れるのが凄く苦労したよ。俺まで襲われるし、俺を覚えたのか、出るときも襲われそうになるし・・・。」
兵士「あの触手を逃げ延びるなんて、さすがですね!」
バベル「ありがとう。・・・ここにいると、応援に来た機械に攻撃を受けるかもしれないから、先を急ごう!」
兵士「分かりました。」
パオと解放したシェルターの近くを通り、もう一つの南に抜ける連絡通路の橋に向かう。
三人で止まった宿の近くも通る。
遠目に見るが、何も変わらないような気がした。
南の連絡通路の橋にたどり着くころには、日は落ち暗くなっていた。
空からは、雨がポツポツと降り始めた。
バベルは行軍を止め、運転していた兵士と話す。
バベル「夜間の移動は、先が見通せず危険が伴う。橋を渡ったところで休める場所を探そう。」
兵士「そうですね。正直、このまま暗闇の中を走るのは怖かったんですよ。」
バベル「誰か、このあたりの地理に詳しい人間はいないかな?」
兵士は、輸送車両の荷台で休んでいた兵士にも声をかける。
残念なことに、基地の近くは分かるらしいのだが、この付近の地理に詳しい者はいなかった。
バベル「しかたない。橋を渡って進みながら探すとしよう。」
連絡通路の橋を渡り始めたとき、雨が強くなってきた。
その雨は次第に強くなっていく。
3分の2程度は進んだだろうか、先を進むバベルが、急にブレーキをかける!
バイクを降りたバベルが、運転している兵士に声をかける。
バベル「ここは通れないかもしれない。ハイビームに切り替えて、サーチライトも点灯してくれ。」
兵士「どうしたんですか?」
兵士は、指示の通り、ライトをハイビームに切り替える。助手席の兵士は、ドア横の梯子を登り、運転席の上に据え付けてあるサーチライトを点灯し、先を照らす。
ライトの明かりに照らされている道は、何も変わらないようにみえる。
たしかに、風が強く吹くたびに、何か金属のきしむような音が鳴り響くのは気づいた。
バベルが指さす方を見ると、その理由が分かった。
この橋は、吊り橋構造になっているのだが、等間隔で並んでいた柱がなくなっている。
バベル「この橋は、もうすぐ倒壊する。このまま一気に渡るか、引き返すか。道は二つに一つだ。。。引き返すにしても、危険は伴う。」
バベルは、持っていたライトを後方に向ける。
そこにあるはずの、柱もなくなっている。
バベル「いまサーチライトで確認したところ、橋は向こう岸まで通じている。このまま速度を上げて、一気に進もうと思う。重量の重い、そっちが先に進んでくれ。」
兵士「分かりました。バベル隊長も気を付けてきてください。」
助手席に座っていた兵士に、重症患者の安全管理を任せ、一気に駆け抜ける作戦に出た。
バベルがエンジンをかけ、輸送車両に道を譲る。
輸送車両が、ゆっくりと進みだし、徐々に速度を上げていく。
バベルは、バイクでその後を追う。
徐々に上がる速度は、100Kmを超えた。
そのとき、突風が襲う!
橋が揺れるほどの突風だ!
ピン!
ピン!
ピン!
ピピピイン!
橋を支えていたワイヤーが切れ始める!
車両の速度は、160Kmに達する!
ドボーン!
ドボ!ドバン!
ザッパーン!
橋の後ろから何かが水に落ちる音が響く!
まだ、橋の終わりまでは届かない!
バベルは、一気に加速し、輸送車両を追い越し、一瞬で視界から消えた。
後ろの橋が落ちるときに、強化ワイヤーが引っ張られ、つられるように橋が落下していく。
その速度は、輸送車両の最高速度より圧倒的に早く、輸送車両の、すぐ後ろまで橋が崩れてきている。
ダーン!
バチン!!!
シュルルルルルルル!
輸送車両のはるか前方で銃声が鳴り響く。
ダーン!
バチン!!!
シュルルルルルルル!
ザザッァ!
何かが屋根をかすめたのか、車体が激しく揺れる!
輸送車両が、銃声の聞こえた地点に近づく!
バベルがいる!
バベルの横を通り過ぎる輸送車両。
バベルがバイクを動かし、輸送車両の後ろを走る。
後方の橋が崩れる音は止んでいる。
橋を渡り終えたところで、徐々に速度を落とし、輸送車両は止まった。
バベルは、そのまま輸送車両の横に並べ荷台に移動する。
荷台の幌屋根は、ワイヤーがかすめたのか、バッサリと切れている。
バベル「全員、怪我はないか?」
助手席にいた兵士「確認します。・・・はい、全員無事です。」
運転していた兵士も降りてきた。
運転していた兵士「隊長、いったい何をしたんですか?銃声が2発ほど聞こえたんですけど。」
助手席にいた兵士「先回りして連鎖して崩れていく橋の強化ワイヤーを切ったんですよね。
銃声のあと、橋が崩れる速度が遅くなり、ワイヤーらしきものが暗闇に引きずり込まれていくのを見ました。二回目の銃声の後のワイヤーは屋根をかすめていったんですけど、幸い大事にならなくて助かりました。」
運転していた兵士「あの短い時間で、強化ワイヤーに狙いをつけて、1発で切ったんですか!?」
バベル「いや、正確には、柱に固定されていた部分で、引っ張られて脆くなってそうな所を狙ったんだ。無事に間に合ってよかった。」
バベルは笑顔で答えるが、普通は考え付かないことだし、考え付いたとしても成功率も低く挑戦しないだろう。それを自分だけ逃げることもできたのに、危険を顧みず挑戦するバベルに感動するものも多かった。
バベル「よし、無事が確認できたんだし、雨に濡れ続けるのも傷によくない。すぐに休める場所を探そう。あと、これ、思い出の品なんだけど使ってくれ。」
そういって、当たり前のように、自分の普段持っている小型の荷物入れから、1枚の保温シートを取り出し、助手席にいた兵士に手渡した。
バベルたちの第一舞台は、泊まれる場所を探しに移動を開始する。
~移動中の輸送車両内~
重傷の兵士A「こんな暗闇の中、しかも雨まで降ってるのに・・・。バベル隊長は、神がかりの技があるな。」
重傷の兵士B「だな、しかも、この保温シート、バベル隊長の記憶に唯一残ってる家族がくれたシートらしいぞ。以前、ニノミヤ隊員にきいたんだよ。」
助手席にいた兵士「そんな大事なものだったのか・・・。おれ、破っちゃったよ。」
重傷の兵士A「いや、隊長は、俺らのために使えるんだったら、よろこんで破るんじゃないかな。素晴らしい人だし。」
重傷の兵士C「まったくだよ。こんな素晴らしい人いないよな。まさに神だね。」
南の連絡道路は完全に倒壊したが、バベルに対する信頼は、より強固に築かれたようだ。
~ to be continued
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