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ケイト編
~新章・第八節~ 別れ
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~シェルター内~
三人は、無事に帰ってきた。
バベルとヤイダは、パオの姿を探すが見当たらない。
迷彩服「隊長!ちょっといいですか?」
持ち帰った缶詰を、荷台から降ろしていた迷彩服が近づいてくる。
ヤイダ「な、何かあったんですか!パオさんは無事ですか!?」
迷彩服「いや、そんなに大事な話じゃないんだが・・・。」
ヤイダ「いやいや、大事な話でしょ!話すなら、いまでしょ!」
ヤイダが、迷彩服の肩をつかむ。
迷彩服「・・・いや、その、缶切りがないと食べれない物もたくさんあるなーって思って。」
肩を掴んでいたヤイダが気まずそうに手を離す。
そこに、ゴトウが現れた。
ゴトウ「副隊長、安心して、自分に任せて下さい!」
そういうと、ナイフとハンマーを使って器用に缶詰を開ける。
一同「おおー!」
それを見ていたニノミヤが、興奮して食いつく!
ニノミヤ「本気すげーっすね!はんぱねーっす!コレもう必要ないっすね!」
彼は、缶切りを持っている。
迷彩服「おお!それを貸してくれ!」
迷彩服はニノミヤに駆け寄り、缶切りを借りる。
取り残されるゴトウ。
ゴトウ「・・・。」
ニノミヤ「ゴトウさん・・・。なんか、すんません。」
ゴトウ「いや、缶切りが早いもんね。」
パオ「なに遊んでるんだ?」
パオも現れた。
ヤイダ「パオさん、無事に帰還したぜ。」
パオ「ああ、知っている。バベル、話がある。ちょっと裏に・・・。」
バベルはパオについていく。
ヤイダの視線が痛いが気にしないことにした。
~建物の陰~
人目を気にするように、パオが話しかける。
パオ「君には何度も貸しがあったよね。」
バベル「ああ、残りは3つくらいかな?」
パオ「・・・犬のアドバイスも含めれば、4つだが、まあいい。今回、シェルターを解放して分かったが、シェルター内には、まだ多くの人が取り残されている。しかも、外に出る手段も何もない状況で、住民の不安は増すばかりだ。そこで、この施設からも有志を募り、部隊を複数に分け、シェルターを解放していこうと思う。」
バベル「で、頼みたいことは?」
パオ「このまま解放していっても、この環境では生きていけない。賭けになるが、君には新天地を目指してもらおうと考えている。」
バベル「新天地?」
パオ「そう、新天地。ちょうど世界が攻撃を受ける前に、南の火山が爆発しているというニュースを見たんだ。住人からの質問がきっかけで思い出したニュースなんだが、そこは温泉地でもあるから、地熱で気温が安定している可能性もある。」
バベル「なるほど!だったら、南に行けばいいんだね!」
パオ「あくまで仮定というか、想定の範囲でしかないが、ここで死を待つよりかは、可能性がある。その程度なんだけど、君に新天地の開拓を頼んでもいいかな?」
バベル「もちろん!」
バベル「あれ・・・?」
パオ「気づいた?」
バベル「うん。南に行けば、ホープに見つかる可能性もあるんじゃないの?」
パオ「そう。気づかれてしまうだろう。だけど、これだけの人数を輸送するとなると、必ずホープには気づかれる。だから、君が囮になって敵をおびき寄せ、壊滅させる。」
バベル「・・・。アスカは?」
パオ「ここに置いていく。」
バベル「ダメだ、アスカは絶対に連れていく。それが条件だ。」
パオ「しかし、囮になるんだ。一緒に行動する方が、彼女を危険にさらすことになるのが分からないのか?」
バベル「それは・・・。」
バベル「分かってる。でも彼女を独りにすることはできない。分かってくれパオ。」
パオがあきらめた顔でバベルを見上げる。
パオ「アスカの面倒は自分で見てよ。」
バベル「もちろん。」
パオ「それと、私が発表するまで、このことは誰にも話さないでほしい。」
その日は、シェルター内の人に、果物の缶詰をふるまった。
なぜだか、缶切りを持っている人が結構いた。
~5日目~
とくに問題もなく、日々が過ぎる。
変わったことといえば、兵士を募って、人数が100名程になったこと。
見回りも兼ねて実践訓練を行ったので、銃の扱いも含め、皆が、戦えるようになってきたことだろう。
バベルは、迷彩服を見つけると声をかけた。
バベル「副隊長、話がある。」
迷彩服「隊長、どうしたんですか?」
バベルとパオは、副隊長である迷彩服(タナカ)を仮基地のバスに呼んだ。
バベル「これから、しばらくの間、君にこの部隊を任せたい。部隊を3部隊に分けて各シェルターを回り、解放していってほしい。もちろん、このシェルターの防衛も必要だが。」
困惑する迷彩服。
迷彩服「いったいどうしたんですか?」
パオが変わって話す。
パオ「いや、なに、調査していた小型ドローンが帰ってた結果。南の温泉地にハネムーンに行こうと思ってるんだ。」
満面の笑顔で冗談を言うパオ。さらに困惑する迷彩服。
パオ「すまない。調査の結果が思いのほかよかったので、つまらない冗談を言ってしまった。以前飛ばしていた小型ドローンの調査結果を確認することができたんだ。そこで得た情報から、南の温泉地に暮らしていける環境があった。」
迷彩服「・・・では、我々は生き延びれるんですね!皆にも教えないと!」
パオ「しかし、問題もある。それは、私たちの病院施設を壊滅においやった強敵が・・・自立戦闘型機械が配備されているようなんだ。このままでは、たどり着いたとしても殺されてしまう。」
迷彩服「そんな・・・。」
パオ「そこで、私と、戦闘力の高いバベルだけで、先に現地へ入り、敵の殲滅作戦を実行する。バベルはこの戦いで命を落とすかもしれないが、以前のように率先して行動してくれることになった。」
迷彩服「・・・。」
パオ「だが、バベルが命を懸けて奪取しても、そこに暮らす人間が死んでいては浮かばれないだろ。だから、君たちにシェルターを解放してもらい人命を救ってきてほしい。」
迷彩服「いままでにない、重大な任務ですね。分かりました。」
パオ「一つだけ注意してもらいたいのは、無駄な戦闘は極力回避するということ。我々とは違い、これから先、解放する兵士も、D細胞の移植が行われているわけではない。安定するまでの3年間は、定期的にワクチンの投与が必要だったり、傷を負っても驚異的な回復能力で回復できるわけではない。そこだけ注意してほしい。・・・人類の命運をかけた任務だけど、頼んでも大丈夫?」
迷彩服「はい。隊長も死なないで下さい。」
バベル「では、3か月後、病院基地跡地で合流しよう。」
パオは迷彩服の気持ちを確認し、部隊を全員集合させ、全員に分かるように、再度説明をした。
バベルは、説明が終わり、引き上げるパオに小声で話した。
バベル「ねえ、小型ドローンってどれくらい小型なの?」
パオ「ああ、あれは嘘だよ。自由自在に私のところまで勝手に帰ってくる、小型のドローンなんて存在しないよ。あれは作戦を成功させるための策だから。」
なかなかの策士だ。
~シェルター外~
パオの車に乗り込み、パオ、バベル、アスカは、南へと目指す。
助手席は取り外してあり、パオが冷蔵庫のような機械を載せている。
運転席のパオが、後部座席のバベルにミラー越しに話しかける。
パオ「本当に、ハネムーンみたいだねー。」
久しぶりの運転だからだろうか。なんだか気分がよさそうだ。
バベルは横に眠るように座るアスカを見る。
バベル「そうだね。なんだかドキドキするね。」
パオは予想しない回答だったのか耳を赤くしている。
パオ「き、君さえ、いいんなら、私はいつでもいいよ♪」
バベル「だったら頼んじゃおっかな。」
バベルも笑顔で答える。
パオは顔が、真っ赤になってきた。
パオ「な、何を頼むの?ちょっと、まだ明るいんじゃないかなー♪って思うんだけど・・・。」
バベル「じゃあ、運転手さん、寄り道してもらってもいい?」
パオ「はぁ!運転手さんって何よ!勘違いしないでよ!」
パオの顔が赤鬼のようだ!
パオの運転は荒く、今日中に到着しそうな勢いだった。
~ to be continued
三人は、無事に帰ってきた。
バベルとヤイダは、パオの姿を探すが見当たらない。
迷彩服「隊長!ちょっといいですか?」
持ち帰った缶詰を、荷台から降ろしていた迷彩服が近づいてくる。
ヤイダ「な、何かあったんですか!パオさんは無事ですか!?」
迷彩服「いや、そんなに大事な話じゃないんだが・・・。」
ヤイダ「いやいや、大事な話でしょ!話すなら、いまでしょ!」
ヤイダが、迷彩服の肩をつかむ。
迷彩服「・・・いや、その、缶切りがないと食べれない物もたくさんあるなーって思って。」
肩を掴んでいたヤイダが気まずそうに手を離す。
そこに、ゴトウが現れた。
ゴトウ「副隊長、安心して、自分に任せて下さい!」
そういうと、ナイフとハンマーを使って器用に缶詰を開ける。
一同「おおー!」
それを見ていたニノミヤが、興奮して食いつく!
ニノミヤ「本気すげーっすね!はんぱねーっす!コレもう必要ないっすね!」
彼は、缶切りを持っている。
迷彩服「おお!それを貸してくれ!」
迷彩服はニノミヤに駆け寄り、缶切りを借りる。
取り残されるゴトウ。
ゴトウ「・・・。」
ニノミヤ「ゴトウさん・・・。なんか、すんません。」
ゴトウ「いや、缶切りが早いもんね。」
パオ「なに遊んでるんだ?」
パオも現れた。
ヤイダ「パオさん、無事に帰還したぜ。」
パオ「ああ、知っている。バベル、話がある。ちょっと裏に・・・。」
バベルはパオについていく。
ヤイダの視線が痛いが気にしないことにした。
~建物の陰~
人目を気にするように、パオが話しかける。
パオ「君には何度も貸しがあったよね。」
バベル「ああ、残りは3つくらいかな?」
パオ「・・・犬のアドバイスも含めれば、4つだが、まあいい。今回、シェルターを解放して分かったが、シェルター内には、まだ多くの人が取り残されている。しかも、外に出る手段も何もない状況で、住民の不安は増すばかりだ。そこで、この施設からも有志を募り、部隊を複数に分け、シェルターを解放していこうと思う。」
バベル「で、頼みたいことは?」
パオ「このまま解放していっても、この環境では生きていけない。賭けになるが、君には新天地を目指してもらおうと考えている。」
バベル「新天地?」
パオ「そう、新天地。ちょうど世界が攻撃を受ける前に、南の火山が爆発しているというニュースを見たんだ。住人からの質問がきっかけで思い出したニュースなんだが、そこは温泉地でもあるから、地熱で気温が安定している可能性もある。」
バベル「なるほど!だったら、南に行けばいいんだね!」
パオ「あくまで仮定というか、想定の範囲でしかないが、ここで死を待つよりかは、可能性がある。その程度なんだけど、君に新天地の開拓を頼んでもいいかな?」
バベル「もちろん!」
バベル「あれ・・・?」
パオ「気づいた?」
バベル「うん。南に行けば、ホープに見つかる可能性もあるんじゃないの?」
パオ「そう。気づかれてしまうだろう。だけど、これだけの人数を輸送するとなると、必ずホープには気づかれる。だから、君が囮になって敵をおびき寄せ、壊滅させる。」
バベル「・・・。アスカは?」
パオ「ここに置いていく。」
バベル「ダメだ、アスカは絶対に連れていく。それが条件だ。」
パオ「しかし、囮になるんだ。一緒に行動する方が、彼女を危険にさらすことになるのが分からないのか?」
バベル「それは・・・。」
バベル「分かってる。でも彼女を独りにすることはできない。分かってくれパオ。」
パオがあきらめた顔でバベルを見上げる。
パオ「アスカの面倒は自分で見てよ。」
バベル「もちろん。」
パオ「それと、私が発表するまで、このことは誰にも話さないでほしい。」
その日は、シェルター内の人に、果物の缶詰をふるまった。
なぜだか、缶切りを持っている人が結構いた。
~5日目~
とくに問題もなく、日々が過ぎる。
変わったことといえば、兵士を募って、人数が100名程になったこと。
見回りも兼ねて実践訓練を行ったので、銃の扱いも含め、皆が、戦えるようになってきたことだろう。
バベルは、迷彩服を見つけると声をかけた。
バベル「副隊長、話がある。」
迷彩服「隊長、どうしたんですか?」
バベルとパオは、副隊長である迷彩服(タナカ)を仮基地のバスに呼んだ。
バベル「これから、しばらくの間、君にこの部隊を任せたい。部隊を3部隊に分けて各シェルターを回り、解放していってほしい。もちろん、このシェルターの防衛も必要だが。」
困惑する迷彩服。
迷彩服「いったいどうしたんですか?」
パオが変わって話す。
パオ「いや、なに、調査していた小型ドローンが帰ってた結果。南の温泉地にハネムーンに行こうと思ってるんだ。」
満面の笑顔で冗談を言うパオ。さらに困惑する迷彩服。
パオ「すまない。調査の結果が思いのほかよかったので、つまらない冗談を言ってしまった。以前飛ばしていた小型ドローンの調査結果を確認することができたんだ。そこで得た情報から、南の温泉地に暮らしていける環境があった。」
迷彩服「・・・では、我々は生き延びれるんですね!皆にも教えないと!」
パオ「しかし、問題もある。それは、私たちの病院施設を壊滅においやった強敵が・・・自立戦闘型機械が配備されているようなんだ。このままでは、たどり着いたとしても殺されてしまう。」
迷彩服「そんな・・・。」
パオ「そこで、私と、戦闘力の高いバベルだけで、先に現地へ入り、敵の殲滅作戦を実行する。バベルはこの戦いで命を落とすかもしれないが、以前のように率先して行動してくれることになった。」
迷彩服「・・・。」
パオ「だが、バベルが命を懸けて奪取しても、そこに暮らす人間が死んでいては浮かばれないだろ。だから、君たちにシェルターを解放してもらい人命を救ってきてほしい。」
迷彩服「いままでにない、重大な任務ですね。分かりました。」
パオ「一つだけ注意してもらいたいのは、無駄な戦闘は極力回避するということ。我々とは違い、これから先、解放する兵士も、D細胞の移植が行われているわけではない。安定するまでの3年間は、定期的にワクチンの投与が必要だったり、傷を負っても驚異的な回復能力で回復できるわけではない。そこだけ注意してほしい。・・・人類の命運をかけた任務だけど、頼んでも大丈夫?」
迷彩服「はい。隊長も死なないで下さい。」
バベル「では、3か月後、病院基地跡地で合流しよう。」
パオは迷彩服の気持ちを確認し、部隊を全員集合させ、全員に分かるように、再度説明をした。
バベルは、説明が終わり、引き上げるパオに小声で話した。
バベル「ねえ、小型ドローンってどれくらい小型なの?」
パオ「ああ、あれは嘘だよ。自由自在に私のところまで勝手に帰ってくる、小型のドローンなんて存在しないよ。あれは作戦を成功させるための策だから。」
なかなかの策士だ。
~シェルター外~
パオの車に乗り込み、パオ、バベル、アスカは、南へと目指す。
助手席は取り外してあり、パオが冷蔵庫のような機械を載せている。
運転席のパオが、後部座席のバベルにミラー越しに話しかける。
パオ「本当に、ハネムーンみたいだねー。」
久しぶりの運転だからだろうか。なんだか気分がよさそうだ。
バベルは横に眠るように座るアスカを見る。
バベル「そうだね。なんだかドキドキするね。」
パオは予想しない回答だったのか耳を赤くしている。
パオ「き、君さえ、いいんなら、私はいつでもいいよ♪」
バベル「だったら頼んじゃおっかな。」
バベルも笑顔で答える。
パオは顔が、真っ赤になってきた。
パオ「な、何を頼むの?ちょっと、まだ明るいんじゃないかなー♪って思うんだけど・・・。」
バベル「じゃあ、運転手さん、寄り道してもらってもいい?」
パオ「はぁ!運転手さんって何よ!勘違いしないでよ!」
パオの顔が赤鬼のようだ!
パオの運転は荒く、今日中に到着しそうな勢いだった。
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