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五つ目の商店

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~ベローチの隠れ家~

その日の夜、隠れ家に戻ってきたベローチは、部下たちから調査結果の報告を受ける。
その報告を受けながら、ベローチは答えを模索していく。



(エルフの国で唯一の商店、レイオン商店・・・。
 レイオン商店店主、ハイエルフのレイオン・・・。)






(その言葉に惑わされていたのか。
 ・
 ・
 ・
 ハイエルフ、人間でありながらハイエルフと呼ばれることはあるのか?
 妻がハイエルフであったとしても、人間は人間。その子はハーフエルフ・・・。
 その認識が間違っていたのだろうか。)







(もしかすると、妻のローレンスはエルフの王族の出自なのかもしれない、それであれば、夫のハロルドは・・・。
 そうすると、やはりレイオン商店と契約を結ぶのは難しいな。
 しかし、店主レイオンとはいったい・・・。
 かなりのやり手だということは分かったが・・・。
 もしかすると、俺以上の商人なのかもしれない・・・。)





ベローチは熟考していた。
そんなベローチに部下が報告を続けている。



「兄貴、昨晩 エルフの大使館を見張っていたところ、ハロルドがやってきて、何か手紙のようなものを渡してましたぜ。
 もしかすると、レイオン宛の手紙だったんじゃねーでしょうか。」


「・
 ・
 ・
 手紙を受け取ったエルフは?」

「ええ、そのまま手紙を受け取って、工場区の方に駆けていきましたぜ。」


「エルフの大使館・・・工場区・・・。
 その方角の先は・・・。」


「えっ、その先はエルフの森ですね。」

(まさか・・・。)



「それから、ハロルドのやつ、朝からドワルゴ商店に押し掛けてたって話ですぜ。」

「ハロルドが・・・。」

「ええ、昼過ぎにハロルドがドワルゴ商店の家の者と一緒に馬車に乗って・・・。」


部下が何か説明をしていたが、ベローチの耳に入ってこなかった。
それは・・・。


(やはりそうだ!
 レイオン商店店主レイオンとハロルド商店店主ハロルドは、同一人物だ。
 どうして気が付かなかったんだ、よく考えればそうとしか考えられない。
 10年前・・・エルフの国との交易は王国を通すなど、ある程度の規制はあるが 一方的に利益をあげることのできる楽な交易だった・・・。
 ハロルドと巡り合ったのは、10年前、その時に商売を教えてから、わずか半月で商店を立ち上げたハロルドの商才。
 ・
 ・
 ・
 そのころから、自由だった交易は完全に規制され、ハイエルフのレイオンを通すことが条件として決まり、例外は認められなかった。
 それまでのように、一方的な利益をあげることが不可能になったのは、エルフの国の商人、レイオ・・・ハロルドが商売を覚えたため。
 その後、エルフの国との貿易は、実入りが少ないとして縮小していった。
 ・
 ・
 ・
 ハロルド商店を残して・・・。
 そうなると、ハロルドは 最初から・・・。)


「兄貴、どうしたんですかい?
 顔色が悪いですぜ、少し休んだ方がいいんじゃ?」

「い、いや、その必要はない・・・。
 お前たち、ハロルドを徹底的に調べ上げろ。
 ・
 ・
 ・
 おそらくハロルドは、レイオン商店店主レイオンだ。」


部下たちはベローチの冗談だと思ったのか、しばらく笑いあっていたのだが、ベローチの真剣な表情に次第に笑い声が収まっていく。


「敵はミラルノなんかじゃねーな。
 格下相手の簡単な戦いだと思ってたのによ・・・。」




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