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商会戦の幕開け

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「ハロルドさん、3つほど質問していいですか。」

「どうぞ。」


「ありがとうございます。
 まず1つめ、あのフルポーションは、どれだけの割合で薄めてあるんですか。
 次に2つめ、紹介で来たってことでしたけど、紹介者へのバックは、いくら渡しているんですか。
 最後に、こういう下種な商売をして心が痛まないんですか!?
 最悪最低な薬を、フルポーションと言って販売して!!!」


「・
 ・
 ・
 はい?」

「とぼけないでください!
 混ぜ物をしているフルポーションを金貨50枚で販売しておいてとぼけるつもりですか!?
 本当にダメ商人なんですね!!!」


店内には他の客がいるのに、ルルジアは大きな声でハロルドに詰め寄る。


「ハロルドは、笑いながら答える。
 やだな、フルポーションに混ぜ物なんてしませんよ。
 そんなことをすれば効果が薄れちゃうじゃないですか。
 それに、ジタルさんに賄賂を渡そうものなら、私が切り殺されてしまいます。
 あのひとは、騎士団を退団後に冒険者になった方ですから、そういった事はしませんよ。
 それから、ほら。」

ハロルドが指さす方、フルポーションが置かれた台の上にある値札に書かれていたのは・・・。


「ご、五枚・・・。
 金貨5枚ですか!?」


「ええ、森で採取してきた材料があるので、この値段で販売してます。
 もちろん、材料がなくなり品薄になれば、かかる材料費を上乗せする形になるので値上げをしなければなりませんけどね。」

「だって、フルポーションの相場は、金貨80枚前後ですよ!
 それを、金貨5枚だなんて・・・。」



ルルジアの大きな声が宣伝になったようで、いままでハロルド商店を素通りしていた冒険者や兵士が店内に押し寄せてくる。



「店主さん、俺にもフルポーションを譲ってくれよ。」

「おい、俺が先に店に入ってきたんだぞ。
 こっちが優先だろ、俺には2本譲ってくれ。」

「はいはい、みなさん、とりあえず並んでもらっていいですか?
 数に限りがあるので、御一人様2本までとさせていただきます。」

午後は、フルポーション祭りでハロルド商店は大賑わいだったそうだ。


「みなさん、薬を使うたびにハロルド商店最高って宣伝してくださいね。
 もちろん、薬以外にも日用品や冒険に必要な品も取り揃えてますよ!」


ハロルドとルルジアは、たった1時間で店内に置いてあったフルポーション200本、全てを売り切ってしまった。






なぜか店じまいまで手伝ったルルジアは、ライバルであるはずのハロルドから手間賃をもらう。
ハロルドは、手間賃を渡したあと、ボーッと立ち尽くしていたルルジアに声をかけた。

「今日はありがとうございました。
 ルルジアさん、あなたは人に好かれる性格のようだから商人を目指したらどうですか?
 商人は覚えることがおおいけど、とても楽しい仕事ですよ。」

「あ、あの、わたし商人なんですけど。
 ・
 ・
 ・
 お初、お目にかかります。
 ドワルゴ商店の店主ルルジアです。
 以後、お見知りおきを。」

「あ、その、すみません。
 私は・・・。」

「知ってます。
 ハロルドさん、私がここに来た理由は、ハロルド商店に宣戦布告をする為です。
 正々堂々と勝負を・・・。」


ルルジアは、急にめまいがしたのか、その場に倒れこんでしまう。
とっさに、ハロルドが抱きしめるように支えたため、地面への直撃は免れたのだが、ルルジアは疲労からか立ち上がるのも辛そうな表情をしていた。

そんなルルジアに、ハロルドがフルポーションを手渡す。


「あの、これは?」

「はい、最後のフルポーションです。
 もちろん、混ぜ物なしなので効果抜群ですよ。」


ルルジアは、手渡されたフルポーションを飲み干す。
すると、体の疲労感や眠気、だるさ、そういったものが改善されていくのが実感できた。


「す、すごい。
 フルポーションの効果なんですね・・・。」

「ええ、まあ暫く店頭に並ぶことはないですけどね。」

「え、どうして?」

「ははは、私は調合は得意なんですけど、魔法が全くダメなんです。
 フルポーションの生成に魔力の注入が不可欠なんですよ。
 普段は、うちの奥さんが魔力注入をしてくれているんですけど、いま出産の為に里帰り中でして。
 ルルジアさんの言う通り、ほんとにダメ商人ですよね。」



「あ、あの・・・。
 ダメ商人って言ったのは・・・。
 それに・・・。
 最悪最低な薬だなんて言って、ごめんなさい。」

「気にしてませんよ。
 でも、謝ってくれて、ありがとうございます。」


薬の効果なのだろうか、ルルジアは ハロルドの笑顔を見ていると心が温まるような気持ちになった。


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