13 / 42
商会戦の幕開け
11
しおりを挟む
~ハロルド商店前~
ルルジアが開店準備をしていたハロルドを見つけ、声をかける。
「店主ハロルドさん。
私たちドワルゴ商店は、全力であなたの商店と戦います。
たとえ、大きな犠牲を払うことになっても、あなたの・・・。」
「お、おえぇぇぇー!」
ハロルドは、ルルジアの宣戦布告を遮るように、売り物のツボに嘔吐する。
「だ、大丈夫ですか!?」
ルルジアは、急に嘔吐し始めたハロルドの背中をさする。
「すみません、飲みすぎてしまったようで・・・。
お、おえぇぇ!」
「飲みすぎたって、どんだけ飲んだらそうなるんですか?
ちょっとは店主として自覚をもって自重した方がいいですよ。」
「ええ、傭兵団の人に勧められて断れなくって・・・。
(コップに)半分ほど飲んだだけなんですけど・・・。」
「そりゃそうですよ。
(酒樽の)半分も飲めば仕方がないことですよ。」
しばらく背中をさすっていたが、ハロルドの調子が悪いようなので、ルルジアはハロルドを店の奥に連れていき休ませることにした。
そして、まだ途中だったハロルド商店の開店準備を引き継いで始めた。
(この乾燥薬草の樽は何処に置けばいいのかな?
こっちのミミズの干物みたいなのは、なんに使うんだろう?
これは女性用の装飾具でいいのかな?とりあえず、衣料品コーナーに置けばいいのかな?)
右往左往しながら準備をしていると、いつの間にか店の前を通る客も商品の品出しを手伝っていた。
ルルジアは、その様子に驚きながらも客たちに礼を述べる。
「あの。ありがとうございます。」
「いいのよ。
ハロルドさんには、お世話になっているから。
今日はどうしたの?
もしかして、風邪でも引いてしまったのかしら?」
「い、いえ、そういう訳ではないんですけど・・・。」
「お嬢ちゃん、早くハロルドさんの顔が見たいって伝えておいてね。」
「あ、はい。
伝えておきます。」
(ハロルドさん、お客さんに好かれてるんだな・・・。
っていうか、私お嬢ちゃんって年じゃないんだけど・・・。)
ハロルドが調子を取り戻すまでの半日、ルルジアは店番を代行していたのだが、ハロルド商店は、ルルジアの常識にある商店とは大きく違う点がいくつかあった。
まず第一に、客が商品を買わない。そもそも選んでもいないのに狭い店内に置かれた休息用の椅子に腰かけている。
次に、客が客を呼び込んでいる。とはいえ、呼びこまれた客も買い物をしないので、そもそも客と言えるのかも怪しいのだが・・・。
そしてルルジアが最も驚愕したことが・・・。
「お嬢ちゃん、コレでいくらなの?」
「えっと、大判銀貨1枚と、銀貨26枚になります。」
「じゃあ、大判銀貨1枚と銀貨10枚くらいだな。」
「あ、いえ、大判銀貨1枚と、銀貨26枚です。」
「大丈夫だって。
ハロルドさんなら、大判銀貨1枚と銀貨10枚に負けてくれるから。」
そういって買い物客が値段を決めていたこと・・・。
この一件が特別なのではなく、全ての客が買い物をするときに値段を決めていたのだ。
(どうして、こんな状況を野放しにしているの?
もしかして、ハロルド商店が人を雇わない理由って、常に赤字経営なんじゃ・・・。
そんな商店に宣戦布告だなんて、すこし可哀想な気がしてきたんだけど・・・。)
いろいろと考えながら店番をしていたルルジアの元に、人相の悪い冒険者たちが店を訪れた。
「店主さんはいるかい?」
「あの、いまあいにく・・・。」
「そうかい、ジタルの旦那から紹介されてきたんだよ、ジタルの旦那が使っていた薬を買いたいんだが。
3つほど譲ってくれるかい?」
「あ、あの、どの薬なんでしょうか・・・。」
「俺にそれを言われてもよー。」
「そ、そうですよね・・・。」
ルルジアが困っているところに、店の奥から調子を取り戻したハロルドが顔を出す。
ルルジアが開店準備をしていたハロルドを見つけ、声をかける。
「店主ハロルドさん。
私たちドワルゴ商店は、全力であなたの商店と戦います。
たとえ、大きな犠牲を払うことになっても、あなたの・・・。」
「お、おえぇぇぇー!」
ハロルドは、ルルジアの宣戦布告を遮るように、売り物のツボに嘔吐する。
「だ、大丈夫ですか!?」
ルルジアは、急に嘔吐し始めたハロルドの背中をさする。
「すみません、飲みすぎてしまったようで・・・。
お、おえぇぇ!」
「飲みすぎたって、どんだけ飲んだらそうなるんですか?
ちょっとは店主として自覚をもって自重した方がいいですよ。」
「ええ、傭兵団の人に勧められて断れなくって・・・。
(コップに)半分ほど飲んだだけなんですけど・・・。」
「そりゃそうですよ。
(酒樽の)半分も飲めば仕方がないことですよ。」
しばらく背中をさすっていたが、ハロルドの調子が悪いようなので、ルルジアはハロルドを店の奥に連れていき休ませることにした。
そして、まだ途中だったハロルド商店の開店準備を引き継いで始めた。
(この乾燥薬草の樽は何処に置けばいいのかな?
こっちのミミズの干物みたいなのは、なんに使うんだろう?
これは女性用の装飾具でいいのかな?とりあえず、衣料品コーナーに置けばいいのかな?)
右往左往しながら準備をしていると、いつの間にか店の前を通る客も商品の品出しを手伝っていた。
ルルジアは、その様子に驚きながらも客たちに礼を述べる。
「あの。ありがとうございます。」
「いいのよ。
ハロルドさんには、お世話になっているから。
今日はどうしたの?
もしかして、風邪でも引いてしまったのかしら?」
「い、いえ、そういう訳ではないんですけど・・・。」
「お嬢ちゃん、早くハロルドさんの顔が見たいって伝えておいてね。」
「あ、はい。
伝えておきます。」
(ハロルドさん、お客さんに好かれてるんだな・・・。
っていうか、私お嬢ちゃんって年じゃないんだけど・・・。)
ハロルドが調子を取り戻すまでの半日、ルルジアは店番を代行していたのだが、ハロルド商店は、ルルジアの常識にある商店とは大きく違う点がいくつかあった。
まず第一に、客が商品を買わない。そもそも選んでもいないのに狭い店内に置かれた休息用の椅子に腰かけている。
次に、客が客を呼び込んでいる。とはいえ、呼びこまれた客も買い物をしないので、そもそも客と言えるのかも怪しいのだが・・・。
そしてルルジアが最も驚愕したことが・・・。
「お嬢ちゃん、コレでいくらなの?」
「えっと、大判銀貨1枚と、銀貨26枚になります。」
「じゃあ、大判銀貨1枚と銀貨10枚くらいだな。」
「あ、いえ、大判銀貨1枚と、銀貨26枚です。」
「大丈夫だって。
ハロルドさんなら、大判銀貨1枚と銀貨10枚に負けてくれるから。」
そういって買い物客が値段を決めていたこと・・・。
この一件が特別なのではなく、全ての客が買い物をするときに値段を決めていたのだ。
(どうして、こんな状況を野放しにしているの?
もしかして、ハロルド商店が人を雇わない理由って、常に赤字経営なんじゃ・・・。
そんな商店に宣戦布告だなんて、すこし可哀想な気がしてきたんだけど・・・。)
いろいろと考えながら店番をしていたルルジアの元に、人相の悪い冒険者たちが店を訪れた。
「店主さんはいるかい?」
「あの、いまあいにく・・・。」
「そうかい、ジタルの旦那から紹介されてきたんだよ、ジタルの旦那が使っていた薬を買いたいんだが。
3つほど譲ってくれるかい?」
「あ、あの、どの薬なんでしょうか・・・。」
「俺にそれを言われてもよー。」
「そ、そうですよね・・・。」
ルルジアが困っているところに、店の奥から調子を取り戻したハロルドが顔を出す。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる