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第一話、勇者の敗北
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~王都マデメ・ルダン領の外れにある辺境の村~
村の中にある小さな小屋のような家の中で、まだ若い夫婦が見つめあい真剣な眼差しで話し合っている。
妻は身ごもっているのだろう、大きな胎に大事そうに手を当てながら夫に聞いた。
「あなた、本当に旅立ってしまうの?」
「ああ、狩人の話によれば、ルダンの獣が復活したことに間違いはなさそうだ。
いま手を打っておかなければ、魔王の復活まで許してしまうことになる。
身ごもった お前を一人残していくのは気が進まないが、世界を守る為なんだ。
・・・すまない、」
申し訳なさそうに頭を下げる夫の頬に優しく手を添え、妻は優しくほほ笑みながら言った。
「あなたは勇者としての使命があるんですもの。
いつか、こうなることは分かっていたわ。
覚悟していたつもりだったんだけど。
・・・ダメね。
妻の私も しっかりしなきゃ!
お腹の子に笑われちゃうわね。」
「ありがとう。
ニール、いってくる。」
「ええ、あなた。
早く帰ってきてね。」
こうして勇者は、魔王復活を阻止するべく、冒険へと旅立っていった。
それから、半年後・・・。
魔王復活を阻止すべく旅立った勇者一行が、魔王により敗北したという知らせが王国内に知らされた。
そんな知らせの中、勇者の妻の待つ家では・・・。
~勇者の家~
「ひ、ひ、ふぅぅぅー。」
「ニールさん、もう少しよ!
頭が見え始めたわ!」
「んん!んんん!」
「呼吸を整えて!」
「ひ、ひ、ふぅぅ!!!」
「オギャー!」
「まだ、もう一人いるわ!」
「んんんん!!!!」
「オギャー!!!」
「はぁ、はぁ、はぁ、」
「おめでとう、ニールさん!
元気な姉妹よ。
お父さんと同じ、勇者の紋章を持っているわ。」
「はぁ、はぁ、わたしたちの赤ちゃん。
ジリアンさん、赤ちゃんの名前を・・・。」
「気をしっかり持って、大丈夫よ。
大丈夫だから。」
「はぁ、はぁ、姉のフウカ、妹はレッカ」
「フウカとレッカね。
分かったわ。」
「元気に産まれてくれて、ありがと。
はぁ、はぁ・・・ふーーー。」
「!!?
ニールさん、ニールさん!
誰か、誰か来てー!」
夫の死の知らせを受け、弱り切った母体では 出産に耐えることが出来なかったようで、妻ニールも夫の後を追うように この世を去った。
こうして、勇者の娘たちは、幼くして村長であるジルダの元に引き取られることとなった。
それから、14年の月日が流れた・・・。
村の中にある小さな小屋のような家の中で、まだ若い夫婦が見つめあい真剣な眼差しで話し合っている。
妻は身ごもっているのだろう、大きな胎に大事そうに手を当てながら夫に聞いた。
「あなた、本当に旅立ってしまうの?」
「ああ、狩人の話によれば、ルダンの獣が復活したことに間違いはなさそうだ。
いま手を打っておかなければ、魔王の復活まで許してしまうことになる。
身ごもった お前を一人残していくのは気が進まないが、世界を守る為なんだ。
・・・すまない、」
申し訳なさそうに頭を下げる夫の頬に優しく手を添え、妻は優しくほほ笑みながら言った。
「あなたは勇者としての使命があるんですもの。
いつか、こうなることは分かっていたわ。
覚悟していたつもりだったんだけど。
・・・ダメね。
妻の私も しっかりしなきゃ!
お腹の子に笑われちゃうわね。」
「ありがとう。
ニール、いってくる。」
「ええ、あなた。
早く帰ってきてね。」
こうして勇者は、魔王復活を阻止するべく、冒険へと旅立っていった。
それから、半年後・・・。
魔王復活を阻止すべく旅立った勇者一行が、魔王により敗北したという知らせが王国内に知らされた。
そんな知らせの中、勇者の妻の待つ家では・・・。
~勇者の家~
「ひ、ひ、ふぅぅぅー。」
「ニールさん、もう少しよ!
頭が見え始めたわ!」
「んん!んんん!」
「呼吸を整えて!」
「ひ、ひ、ふぅぅ!!!」
「オギャー!」
「まだ、もう一人いるわ!」
「んんんん!!!!」
「オギャー!!!」
「はぁ、はぁ、はぁ、」
「おめでとう、ニールさん!
元気な姉妹よ。
お父さんと同じ、勇者の紋章を持っているわ。」
「はぁ、はぁ、わたしたちの赤ちゃん。
ジリアンさん、赤ちゃんの名前を・・・。」
「気をしっかり持って、大丈夫よ。
大丈夫だから。」
「はぁ、はぁ、姉のフウカ、妹はレッカ」
「フウカとレッカね。
分かったわ。」
「元気に産まれてくれて、ありがと。
はぁ、はぁ・・・ふーーー。」
「!!?
ニールさん、ニールさん!
誰か、誰か来てー!」
夫の死の知らせを受け、弱り切った母体では 出産に耐えることが出来なかったようで、妻ニールも夫の後を追うように この世を去った。
こうして、勇者の娘たちは、幼くして村長であるジルダの元に引き取られることとなった。
それから、14年の月日が流れた・・・。
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