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花びらはつかめない
しおりを挟む「絵海さんは、猫が好きなんですね」
猫の後ろ姿を見送りながら、私が言った。
「好きよ。少し前に猫カフェにハマったこともあるくらい」
「そうなんだ。他には何が好きなんですか?」
「何って? 漠然としてるわね」
「うーん、じゃあ、好きな食べ物」
「そうね、イタリアンかしら。玲は?」
「私はお寿司ですね。それじゃあ、好きな音楽は?」
「なに、どうしたの? そんなに私のこと知りたくなった?」絵海が笑った。
「いや、うん、そうですね……」私が照れて言った。
私たちはそれからコーヒーカップが空になるまで喋っていた。その日私は絵海の好きなものについて色々聞いたけれど、彼女が1番好きなものは実家のようだった。
優しい両親と、仲の良い妹たちがいるのだろう。
公園からの帰り道、私の頭上に薄桃色の花びらが数枚降りてきた。
それはまるで空気の階段を降りるようにひらひらと下に向かったかと思うと、風に吹かれてまた高く舞い上がった。
私はその小さな春のかけらを掴もうと手を伸ばしてみたが、指の間をつれなくすり抜けて地面に落ちていった。
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