幻冬のルナパーク

地球の裏側に眠る宝石も

「えっと、絵海さんって、休みの日は何をしているんですか。お花見したりします？」


緊張を悟られないように私が尋ねた。思えば絵海が休日に何をしているのか全く知らない。私が知っているのは仕事上の姿だけだった。

もし絵海が映画が好きだというのならどんな映画でも観に行くし、カフェ巡りが好きだというのなら素敵な店を探してみせる。

彼女が望むのなら、地球の裏側に眠る宝石も、南極の氷の結晶でも取ってきてみせるのに。


「今は私、結構山梨の実家に帰ってるのよ。２月に妹に子供が産まれて。可愛いのよ、ふにゃふにゃの赤ん坊で」彼女が顔をほころばせた。


「そうなんですか。おめでとうございます。絵海さんってたしか、３人姉妹の一番上ですよね」


「そうそう、出産したのは真ん中の妹。私の３つ下なんだけど」


「そうなんだ。赤ちゃんは２月生まれだったら、今は生後２か月ですね」


「そうよ。まだ首もすわらないわ。手もかかるから世話を手伝ったり」


「そうなんですね。じゃあ今、休みの日は横浜にいないんですか」


「そうね。なるべく連休を取れるようにシフトを組んでもらって、山梨に帰ってるわ」


　まさか遊びに誘おうにも、横浜にいないとは思わなかった。