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週末は恋人に会いに

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金曜日までの勤務を終えて、週末になった。疲れ切ったからだをぐったりとふとんに沈み込ませて気が済むまで眠り、昼近くに目が覚めた。朝の支度をすると、電車に乗って7歳年上の恋人の元へ向かった。彼の名前は宍戸(ししど)といった。まだ付き合って数ヶ月くらいの浅い仲だ。
昼時に宍戸の住む東京の郊外の街に着くと、駅の改札に彼の姿があった。よく日に焼けた肌と、キリリと吊り上がった目と眉をした面長の男性だった。短髪で、細身で筋肉質な身体に、白いシャツと黒いテーラードジャケットをはおり、青いジーンズをはいていた。
 私の姿を見つけると彼が片手をあげて合図した。私たちは軽く挨拶を交わし、そのまま近くの喫茶店に入って昼ご飯を食べた。サラダとカレーを注文した。
「最近仕事はどうなんだ? 歩実ももう働いて1年経ったんだな」宍戸が言った。
「相変わらず憂鬱だよ。ロクな仕事じゃないよね、理学療法士って」
「ハハ。そんなことないだろ。おれは有意義な時間を過ごしてると思ってるよ。そんなに嫌なら転職したほうがいいんじゃないか?」
「でも、どこに転職したらいいか分かんないんだもん。公務員にでもなろうかなと思ったこともあったけど、あの仕事も特に楽しそうでもないしラクそうでもないし……。だったら理学療法士でいいかなって思ったんだよね」
「じゃあ事務仕事でもやれば?」
「それだと給料下がっちゃうでしょ。あんまり気が乗らないなあ。でも宍戸さんはやる気を持ってリハビリの仕事をやってるんだね」
「まあな。だいたい俺、適当にサラリーマンやるなんて絶対嫌だからな。あとは一生リハビリを仕事にするつもりだよ」
「そっか……」
やがてカレーが運ばれてきて、私たちはそれを食べた。そしてそのあと歩いて10分くらいのところにある彼のアパートまで行った。
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