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20.えんど

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今日はついに卒業記念パーティの日。

「小説では、断罪されるのよね……」
断罪される未来を変えたくて、この1年間頑張ってきたつもりだ。

ヒロインと親友になり、イジメを捏造されることも無かった。
殿下と程よく距離を取ったことで、気が休まらないと言われることもないだろう。

できれば婚約解消してもらって、安心した気持ちでパーティに参加したかったけど。
でも、大丈夫!きっと大丈夫だわっ!


パーティが始まった。
卒業生たちがフロアで楽しそうに踊る様子を、在校生たちが壁際に並んで見ている。

私は殿下とは踊らない。
脚を挫いてしまったと、伝えてあるから。


ドレスは、殿下が贈ってくれた、ロイヤルブルーのドレス。
小説の断罪されたマルガリータが着ていたドレスとは違うの。
だから、きっと大丈夫。


曲が終わったそのタイミングで、ジャレス殿下が私を呼んだ。


「アルヴァレス公爵家マルガリータ嬢」
「は、はぃ?」

なんで?!なんで私を呼ぶの!?
ジャレス殿下の隣にはルシアが並んで立っている。ピンクブロンドの髪、アクアマリンの瞳。この物語のヒロイン、ルシア。
サファイアブルーのドレスを着て。


(あんなに素敵なドレスを贈ってくれたのに。ルシアとは仲良くなっている気配はなかったのに。こんな風になるなんて……これが強制力なの?)


ジャレス殿下の前に立つ。
脚は震えて、心臓が飛び出しそう。

「マルガリータ。俺はお前との婚約を」
ギュッと目をつむる。嫌よ!死にたくない!
「解消するつもりはない!」

「マルガリータ様!私、マルガリータ様の専属侍女になるっす!!」
ルシアが満面の笑みで宣言した。


「えっ?……私には、アマリアがいるし……」
「だって!私たち、親友じゃないっすか!?このドレスもマルガリータ様とオロソイにさせてもらったっす。王子妃になっても側にいさせて欲しいっす♪」

「ルシア嬢もマルガリータを支えたいと言っている。マルガリータ!どうか俺と結婚してくれ!!」


私はダニエルの姿を探す。
小説の中でも、現実の世界でも、いつも私を護ってくれていたダニエル。
彼はどうなるの?


「……ご、護衛騎士は、そのままダニエル卿で、か、構わぬ。ぐぬっ……」
「でも、殿下……」
「四の五の言うな!俺はお前が好きなんだ!!俺と結婚しろ!」



「「お嬢様!」」
振り返ると、アマリアとダニエルが並んで立っていた。

「良かったですね。お嬢様、殿下と結婚できますね♪」
「お嬢様、私たちも結婚することに致しました」

「?私たち?」

「はい。私、ダニエルと結婚することに致しました♪」
「私は地方の男爵家の次男なのですが、先日爵位を継ぐことになりました。アマリアも男爵夫人として、お嬢様の侍女を続けることができます」
微笑み見つめ合うアマリアとダニエル。


「よ、良かったわね、ダニエル。アマリア……おめでとう……」



ジャレス殿下がやってきて、私の手に口づけた。

「返事を聞かせてくれないか?マルガリータ」
「よ、喜んで、お受けいたします……わ」

会場が大きな拍手に包まれる。


ジャレス殿下は
「そうか」
と言って微笑んだ。


-END-

    
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