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129.ここは何?

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寺子屋に着き、ロナは風呂の用意をした。

「何か食べましたか?」
リナはアリシアに訊いた。

首を振るアリシア。

「雑炊を作りますね」
「雑炊?」

「あー貴族様が食べるようなものではないですけど」
「もう、貴族ではないから……」

「そうですか。ちょっと待っていて下さいね」

リナはアリシアに教室で待つように伝えると、食堂の厨房へと向かった。


ひとり残されたアリシアは、教室の掲示物を見て歩いた。


「学校……?なんで?」

壁には算盤の使い方を書いた掲示物。
その他にも、東の国の文字が筆で書かれて貼ってある。

「東の国?」

反対の壁には、小学部の国語の文章が。

「『コトシノモクヒョウ』だって……」
「『コトシノウチニ、7ノダンマデ、アンキスル』7の段って何?」

後ろの壁には、西の国の挨拶や、数字、季節などが貼ってある。


「ここは?何なの?」
アリシアは興味深く、教室の中を歩き回った。



「お待たせして、申し訳ありません。もうすぐお風呂の準備が出来ますから」
振り返ると、ロナが教室に入ってきた。

「あ、ありがとう……ございます」


「あら、梨奈は?」
「お雑炊を作って下さるそうで……」
「そうですか。何か食べないと、動けなくなってしまいますからね」
「ありがとうございます」


「何か面白いものは、ありましたか?」
ロナがアリシアに訊くと

「ここでは、西の国の言葉も、東の国の言葉も教えているんですか?」
と、アリシアはロナに訊き返した。


「東の国の算盤と、習字を宗長さんが、西の国の言葉は、イザックさんが教えてくれています」
「生徒は?地方貴族の子息ですか?」


「いえ、ボーヴォ領民たちが、ここで学んでいます。でも、隣の子爵領からも問い合わせが来始めていますね」

鶏レバーペーストで取引のある、子爵領の商会の息子が、リナの教える九九に興味を持ち、寺子屋で計算を習いたいと言ってきたのだ。


「領民が勉強?信じられないわ」
「変ですか?」
「だって、何を勉強するの?」
「字の読み書きと計算です」

「えっ?」

「王都の貴族の方は当たり前にできる、字の読み書きがここの領民はできません。計算も」
「字の読み書きができなくて、どうやって生活するの?困るじゃない!?」

「はい。困っていたんです。だから、覚えたいんです。みんな。覚えて、使いたい。読みたい、書きたい、伝えたい。彼らはとても、楽しそうに学んでいます」

「あなたは?ここに勝手に入って大丈夫なの?」

アリシアはロナに訊いた。
雑炊を作ってくれている娘と、風呂の用意をしてくれているこの女性も、ここの関係者なのか。

「娘はここで計算を教えています。私はここの、校長です」
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