オタクな母娘が異世界転生しちゃいました

yanako

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107.僕のアイデンティティ-3

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ライアンは男爵家の次男で、貴族科の同級生で、僕の数少ない友人だ。
実業科への内部編入が決まっている。

アルチュールも編入の手続きをしていたのを僕は知らなかった。
どこの家でも、次男は貴族科卒業後に実業科にはいるものなのだろうか。

「ライアンは、どうして実業科に編入することにしたんだ?」
僕は訊いてみた。

「俺は次男だからな、婿に行くことになるかもしれないだろ?だから、貴族の在り方を学んだ。でも、自分で商売をやりたい気持ちもあるからな」

「自分で商売を?」

「これからも行く叔父も、ボーヴォ領で商会をやってるんだ。凄い面白い人なんだよ」

「でも、俺たちはボーヴォ領で国語を教える手伝いをするんだろ?」

「うん。なんか、学校?みたいなのを作って、村人たちに字の読み書きと計算を教えるんだって」

「村民?平民に字や計算を教えてどうするんだよ?」

「知らないよ。でも、面白そうだろ?叔父も楽しそうだったよ」

ライアンも面白そうに笑った。
平民に字の読み書きを教えるなんて、意味があるのか?
僕はそう思った。
山間の小さな村の平民は、黙って畑を耕していればいいんだって。
そう思った。


村に着いて、僕らを出迎えてくれたのは、ライアンの従兄弟たち。

ライアンは二人とハグをした。
二人に会うのは久しぶりらしく、ライアンはとても喜んでいたし、二人も嬉しそうだった。

「こいつはイザック・ジラール。俺の友だち。子爵家の息子だ」
ライアンは僕をふたりに紹介してくれた。

「どうも。イザックと読んでくれ」

「こんにちは、僕はジャンです、こいつは弟のアンドレです。どうぞ宜しくお願いします」
「こんにちは、アンドレです。13歳です」

二人は僕に挨拶をした。
ライアンの叔父さんは准貴族だから、二人は准貴族の子息になるけど、それって平民と同じだから。

こんな田舎で、一体何をやろうっていうんだよ。
わざわざ来た意味あるのかな?
僕はそう思った。
無駄じゃないの?平民に、勉強教えてたって。
僕だって、あんなに勉強したのに、僕は選ばれなかった。全部無駄だった。

跡を継げない僕は、無価値で、何をやっても意味がないんだ。
そう思った。


「明日、ロナさんのところに行くから、今日は風呂入って、ゆっくり休んで」
ジャンがライアンに言った。

「風呂?」

「あー、湯浴みっていうのかな?こっちでは風呂って言うんだ」
「ライアン兄さん、商会の共同浴場でもいいし、家の風呂でもいいよ」
ジャンとアンドレが説明してくれる。

僕は知らない人と一緒に湯浴みなんか絶対に嫌だから、家で湯浴みさせてもらうように頼んだ。

知らない人ばかりの知らない村。
来なければ良かったかなと、僕は思い始めていた。





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