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101.『寺子屋フジヤマ』の教員になります

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ライアンとイザックは、部屋に戻ってからも少し飲むことにした。
ツマミは、籠に入ってある懇親会の残りだ。


「お前、ほとんど食べてなかっただろ?みんな美味しかったぞ」
「あぁ」
「唐揚げってやつが特に美味いぞ」

ジャンも誘ったが、明日取引先に行かなければならないとのことだった。


「ジャン君はこの商会を継ぐのか?」
「まぁ、そうなるんじゃないか?長男だしな」
「アンドレ君は?」
「アンドレもこの商会で働くんだろうと思っていたんだけど、リナちゃんと結婚して、おにぎり屋を継ぐのかもしれないな」
ライアンはおにぎりを口にした。


「ジャン君もアンドレ君も、俺たちよりも年下だろ?なんかしっかりしてるよな……」
「……お前、自分の目の前に、腹を空かして泣いている子どもがいたら、どうする?」
ライアンはイザックに訊いた。

「分からん。俺の周りに腹を空かして泣いている子どもはいなかった」
「そうだよな。もし居たとして、俺は自分のオヤツを分け与えるかな?理由をつけて与えない気がするんだよ。自分がそのオヤツを食べる必要がなくてもさ」
ライアンは焼き鳥の串をクルクルと回してみた。


「領主の子でもないのにさ、余っ程あいつらの方が、貴族然としてる」
ライアンは焼き鳥に齧りついた。

「俺なんか、ずっと王都で暮らしてるだろ。領地には観光に行ってるようなもんだよ。領民っていっても、全然他人事だった。字が読める必要性なんて、考えたこともなかった」
ライアンはイザックを見た。

「お前、領民の名前、覚えてるか?」
「……いや」
「だよな。俺もだ。領民の労働の上に俺たちの生活があるのにな」
ライアンはコップに入っていた酒を飲み干すと、イザックに言った。


「お前、これからどうする?俺は実業科に編入することが決まってるから、学園に戻るけど、お前は?」
「……」
「跡継ぎが弟になって、呆然としているお前の気分転換になればと思って連れて来たけど、ロナさんやリナさんと合わないようなら、一緒に帰るか?」

「いや……残るよ」
「残るのか?」
「あぁ。ジャン君だって、商会の仕事やりながらの寺子屋だろ?俺はやることも、居るところもないからな」
イザックは唐揚げを口に放り込んだ。

「それに、ロナさんの飯が美味いからな」
イザックはたて続けに唐揚げを食べると
「やれることを探してみるよ」
と言った。



    
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