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83.ジュール商会-2

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「本当に別人になったみたいですよね」
ジュールは自分に言い聞かせるように言った。


「まぁな。ロナさんは別人になったように新しいことを次々に始めている。それは何のためだ?『おにぎり屋フジヤマ』をこの村のコミュニティプレイスにしたいと開店した。それは誰のためだ?」
「この村の人たちのためです」


「『焼き鳥屋フジヤマ』は、鶏ガラをタダで提供してくれた肉屋のオヤジへの恩返しなんだそうだよ」
「恩返し……」


「『鶏レバーペースト』の窓口をお前にしたのだって、そりゃあ、お前が男爵令息だから子爵領の商会と取り引きするのに有利だっていうのもあるけれど、お前に何が実績を用意してやりたかったんだろ?」
「実績……」


「さっきも言ったが、王都にいる兄貴が男爵を継いだら、お前は准貴族になる。貴族とは名ばかりの平民だよ。ここまで、この村のために頑張ってきたお前のために、ロナさんは何か恩を返したかったんだろ」
マルタンはジュールをじっと見つめた。


「応えてやれよ。ジュール」
「……」
「お前が助けてやってきたのは、何もテオとリナだけじゃない。身を粉にして、男爵領のために働いてきたじゃないか。でも、小さな領地だ。豊かな資源もない。お前だって、男爵令息なのに社交をする余裕もなかった。学校だって、王都の学校には行けなかった」
「……」
「それを、皆が知ってる。そして、領地のために頑張ってきたお前に幸せになって欲しいって思ってる」
「……」
「商会をやるのは。決して楽なことじゃない。大変なことだらけだよ。けど、ロナさんは次は『寺子屋フジヤマ』を始めるって決めた。『おにぎり屋』と『焼き鳥屋』はお前になら任せられるって、そう思ってるからだろ?」

「…はい」
「腹を括れよ!お前一人でやるわけじゃない。俺たちはチームだ!」

    
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