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62.これは、故郷の味でござる
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今日も『おにぎり屋フジヤマ』は賑わっている。
お米はマルタン商会が、鶏ガラは肉屋がそれぞれ無料で提供してくれているし、野菜も規格外のものを農業ギルド経由で格安で買わせてもらっている。
「いらっしゃいませ~お一人様ですか?」
この辺では見たことの無い、若い男が入ってきた。
「こちらのお席にどうぞ~」
リナは男を案内しながら
(この刀剣が乱れて舞っちゃうような姿は!もしかして!)
と思った。
「お品書きはこちらです。お荷物はこちらでお預かりしましょうか?」
「かたじけない」
(かたじけない!かたじけないって言ったよ!この人!)
リナの心に桜の花びらが舞い上がる。
「この『梅おにぎり』と『汁物醤油味』を頼む」
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」
リナは厨房に飛び込むと
「ママ!東の!東の国の人来た!『かたじけない』って言ってたよ!」
とロナに伝えた。
「あら、東の国の人。この世界のおにぎりがどういうものかが分かるわね。ちゃんと感想きいてきてよ」
「お待たせいたしました。『梅おにぎり』と『野菜のスープ醬油味』でございます。ごゆっくりどうぞ」
男は梅おにぎりをじっと見つめ、意を決したようにかぶりついた。
男の目からは涙が溢れる。
リナはおしぼりを手渡した。
「大丈夫ですか?何かございましたか?」
「かたじけない。故郷の味を思い出して…」
「そのおにぎりの具は、東の国のものなんですよ?いずれはうちの村の梅を使って、梅干しを作りたいですけど」
「この汁物も故郷の味でござる」
「うちの村の醤油を使っていますが、元々は東の国の調味料なので」
「そうであったか」
「東の国の人ですか?お仕事で来たんですか?」
「いや…拙者はもう、東の国の人間ではないのだ」
顔をしかめる青年にリナは申し訳ない気持ちになった。
「つまらぬことを申した。すまぬ」
「いえ、今お茶をお持ちしますね」
お米はマルタン商会が、鶏ガラは肉屋がそれぞれ無料で提供してくれているし、野菜も規格外のものを農業ギルド経由で格安で買わせてもらっている。
「いらっしゃいませ~お一人様ですか?」
この辺では見たことの無い、若い男が入ってきた。
「こちらのお席にどうぞ~」
リナは男を案内しながら
(この刀剣が乱れて舞っちゃうような姿は!もしかして!)
と思った。
「お品書きはこちらです。お荷物はこちらでお預かりしましょうか?」
「かたじけない」
(かたじけない!かたじけないって言ったよ!この人!)
リナの心に桜の花びらが舞い上がる。
「この『梅おにぎり』と『汁物醤油味』を頼む」
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」
リナは厨房に飛び込むと
「ママ!東の!東の国の人来た!『かたじけない』って言ってたよ!」
とロナに伝えた。
「あら、東の国の人。この世界のおにぎりがどういうものかが分かるわね。ちゃんと感想きいてきてよ」
「お待たせいたしました。『梅おにぎり』と『野菜のスープ醬油味』でございます。ごゆっくりどうぞ」
男は梅おにぎりをじっと見つめ、意を決したようにかぶりついた。
男の目からは涙が溢れる。
リナはおしぼりを手渡した。
「大丈夫ですか?何かございましたか?」
「かたじけない。故郷の味を思い出して…」
「そのおにぎりの具は、東の国のものなんですよ?いずれはうちの村の梅を使って、梅干しを作りたいですけど」
「この汁物も故郷の味でござる」
「うちの村の醤油を使っていますが、元々は東の国の調味料なので」
「そうであったか」
「東の国の人ですか?お仕事で来たんですか?」
「いや…拙者はもう、東の国の人間ではないのだ」
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「つまらぬことを申した。すまぬ」
「いえ、今お茶をお持ちしますね」
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