愛だの恋だの馬鹿馬鹿しい!

蘇鉄

文字の大きさ
上 下
5 / 41

しおりを挟む
side:白龍

闇に溶け込むジャケットの軌跡を追いかけて、それが消えるまで目が離せなかった。

「白さん」

チームの誰かが連絡に行っていたのだろう、後ろから声をかけてきた男は同じ幹部だった。青龍。青く染めた髪と青色のカラーコンタクトがよく似合うすらりとした少年だ。

「今行く」

名残惜しいが見ていてもアレが戻ってくるわけではない。顔を僅かに歪めて仲間の元へ向かう。

「珍しいですね、白さんが取り逃すなんて」

「転がっている雑魚のことを指しているなら食い荒らしたのはオレではないぞ」

「え?」

「通りすがりの一般人、だそうだ」

喉奥で低く笑いながら言えば青龍は驚いたように気絶している雑魚を見た。雑魚といえども数はそれなりにいるし、奇襲をかけられれば無傷ではいられない。その程度の強さを持つ奴らを。

「…名前は聞き出したんでしょ」

「伽藍、といっていた」

「伽藍……。聞いたことない名前ですね。新しい勢力になるかもしれない」

ぶつぶつ呟いている青龍はあの男を警戒しているのだろう。だが無駄なことだ。恐らくアレは目立つ為に行っているわけではない。むしろ逆。やることを終えたとして跡形もなく消え去るかもしれない。

そんなことはさせない、と内心で強く思う。あの美しく悪辣な獣を傍らに置ければどれほど楽しいだろう。自らの潔白を証明する為に悪意のドロドロの部分を見せつけて説得するなんて手段を使ってくる奴はそういない。

「?随分と、楽しそうですね」

「あぁ、楽しい。久しぶりに狩りをするからかもな。潰す為でなく、捕らえるための狩りだ」

逃す気などない。絶対に捕まえる。
仲間の下っ端達が喧嘩を売った奴らを縛り上げていく。ここからは尋問の時間だ。殺しはしないが徹底的に潰して反抗する意思ごとなくす。そうしなければ喧嘩を売られたメンツが回復しないでそのまま他の奴らにも舐められることになるからだ。

最近、ライバルチームとして名を馳せている〝阿修羅〟とは別に影からちょっかいをかけてくる第三勢力がある為、情報を集めるという意味でも余計に逃すわけにはいかなかった。

それにしても奇襲作戦とは。途中で情報が入らなければそのまま見逃してまんまと罠にハマっていた所だった。集合地だった倉庫が知られていることも問題だ。内通者がいるのか、向こうが情報に長けているのか。
そうこうしている内にアジトにしているバーに到着した。外れていた仲間も全員集合している。
青龍が説明をしているのを聞き流しながら伽藍に思いを馳せた。

「白」

獰猛な気分で舌舐めずりをしていたら低い声がかかった。視線をあげれば我らがチームの総長様が此方に視線を向けている。

「どうした」

「話は聞いた。〝ウロボロス〟としても奇襲から助けてもらった礼はしないとな。方法はお前に任せる。ただし丁重に、だ。間違えても壊すなよ」

「わかってるさ、あの獲物はオレの手元に置くんだからな」

「お前がそこまで執着する相手か。…俺も気になってきたな」

「やらんぞ」

「チームに入れるならどんな奴かを把握しないとだめだろー?」

おちょくるような事を言ってるが、その実もし合わないと判断すれば即座に排除する気だろう。隣に置くのをやめるつもりなど毛頭ないが出来れば嫌われないでおいて欲しいと思う。
誰にも感じた事ない感情がひどく新鮮で、だが不快ではなかったから。
白龍は楽しい気持ちにしたがって笑っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

賢者となって逆行したら「稀代のたらし」だと言われるようになりました。

かるぼん
BL
******************** ヴィンセント・ウィンバークの最悪の人生はやはり最悪の形で終わりを迎えた。 監禁され、牢獄の中で誰にも看取られず、ひとり悲しくこの生を終える。 もう一度、やり直せたなら… そう思いながら遠のく意識に身をゆだね…… 気が付くと「最悪」の始まりだった子ども時代に逆行していた。 逆行したヴィンセントは今回こそ、後悔のない人生を送ることを固く決意し二度目となる新たな人生を歩み始めた。 自分の最悪だった人生を回収していく過程で、逆行前には得られなかった多くの大事な人と出会う。 孤独だったヴィンセントにとって、とても貴重でありがたい存在。 しかし彼らは口をそろえてこう言うのだ 「君は稀代のたらしだね。」 ほのかにBLが漂う、逆行やり直し系ファンタジー! よろしくお願い致します!! ********************

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

主人公に「消えろ」と言われたので

えの
BL
10歳になったある日、前世の記憶というものを思い出した。そして俺が悪役令息である事もだ。この世界は前世でいう小説の中。断罪されるなんてゴメンだ。「消えろ」というなら望み通り消えてやる。そして出会った獣人は…。※地雷あります気をつけて!!タグには入れておりません!何でも大丈夫!!バッチコーイ!!の方のみ閲覧お願いします。 他のサイトで掲載していました。

追放されたボク、もう怒りました…

猫いちご
BL
頑張って働いた。 5歳の時、聖女とか言われて神殿に無理矢理入れられて…早8年。虐められても、たくさんの暴力・暴言に耐えて大人しく従っていた。 でもある日…突然追放された。 いつも通り祈っていたボクに、 「新しい聖女を我々は手に入れた!」 「無能なお前はもう要らん! 今すぐ出ていけ!!」 と言ってきた。もう嫌だ。 そんなボク、リオが追放されてタラシスキルで周り(主にレオナード)を翻弄しながら冒険して行く話です。 世界観は魔法あり、魔物あり、精霊ありな感じです! 主人公は最初不遇です。 更新は不定期です。(*- -)(*_ _)ペコリ 誤字・脱字報告お願いします!

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

主人公は俺狙い?!

suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。 容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。 だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。 朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。 15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。 学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。 彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。 そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、 面倒事、それもBL(多分)とか無理!! そう考え近づかないようにしていた。 そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。 ハプニングだらけの学園生活! BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息 ※文章うるさいです ※背後注意

どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。

彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。 だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。 どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

処理中です...