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side:白龍
闇に溶け込むジャケットの軌跡を追いかけて、それが消えるまで目が離せなかった。
「白さん」
チームの誰かが連絡に行っていたのだろう、後ろから声をかけてきた男は同じ幹部だった。青龍。青く染めた髪と青色のカラーコンタクトがよく似合うすらりとした少年だ。
「今行く」
名残惜しいが見ていてもアレが戻ってくるわけではない。顔を僅かに歪めて仲間の元へ向かう。
「珍しいですね、白さんが取り逃すなんて」
「転がっている雑魚のことを指しているなら食い荒らしたのはオレではないぞ」
「え?」
「通りすがりの一般人、だそうだ」
喉奥で低く笑いながら言えば青龍は驚いたように気絶している雑魚を見た。雑魚といえども数はそれなりにいるし、奇襲をかけられれば無傷ではいられない。その程度の強さを持つ奴らを。
「…名前は聞き出したんでしょ」
「伽藍、といっていた」
「伽藍……。聞いたことない名前ですね。新しい勢力になるかもしれない」
ぶつぶつ呟いている青龍はあの男を警戒しているのだろう。だが無駄なことだ。恐らくアレは目立つ為に行っているわけではない。むしろ逆。やることを終えたとして跡形もなく消え去るかもしれない。
そんなことはさせない、と内心で強く思う。あの美しく悪辣な獣を傍らに置ければどれほど楽しいだろう。自らの潔白を証明する為に悪意のドロドロの部分を見せつけて説得するなんて手段を使ってくる奴はそういない。
「?随分と、楽しそうですね」
「あぁ、楽しい。久しぶりに狩りをするからかもな。潰す為でなく、捕らえるための狩りだ」
逃す気などない。絶対に捕まえる。
仲間の下っ端達が喧嘩を売った奴らを縛り上げていく。ここからは尋問の時間だ。殺しはしないが徹底的に潰して反抗する意思ごとなくす。そうしなければ喧嘩を売られたメンツが回復しないでそのまま他の奴らにも舐められることになるからだ。
最近、ライバルチームとして名を馳せている〝阿修羅〟とは別に影からちょっかいをかけてくる第三勢力がある為、情報を集めるという意味でも余計に逃すわけにはいかなかった。
それにしても奇襲作戦とは。途中で情報が入らなければそのまま見逃してまんまと罠にハマっていた所だった。集合地だった倉庫が知られていることも問題だ。内通者がいるのか、向こうが情報に長けているのか。
そうこうしている内にアジトにしているバーに到着した。外れていた仲間も全員集合している。
青龍が説明をしているのを聞き流しながら伽藍に思いを馳せた。
「白」
獰猛な気分で舌舐めずりをしていたら低い声がかかった。視線をあげれば我らがチームの総長様が此方に視線を向けている。
「どうした」
「話は聞いた。〝ウロボロス〟としても奇襲から助けてもらった礼はしないとな。方法はお前に任せる。ただし丁重に、だ。間違えても壊すなよ」
「わかってるさ、あの獲物はオレの手元に置くんだからな」
「お前がそこまで執着する相手か。…俺も気になってきたな」
「やらんぞ」
「チームに入れるならどんな奴かを把握しないとだめだろー?」
おちょくるような事を言ってるが、その実もし合わないと判断すれば即座に排除する気だろう。隣に置くのをやめるつもりなど毛頭ないが出来れば嫌われないでおいて欲しいと思う。
誰にも感じた事ない感情がひどく新鮮で、だが不快ではなかったから。
白龍は楽しい気持ちにしたがって笑っていた。
闇に溶け込むジャケットの軌跡を追いかけて、それが消えるまで目が離せなかった。
「白さん」
チームの誰かが連絡に行っていたのだろう、後ろから声をかけてきた男は同じ幹部だった。青龍。青く染めた髪と青色のカラーコンタクトがよく似合うすらりとした少年だ。
「今行く」
名残惜しいが見ていてもアレが戻ってくるわけではない。顔を僅かに歪めて仲間の元へ向かう。
「珍しいですね、白さんが取り逃すなんて」
「転がっている雑魚のことを指しているなら食い荒らしたのはオレではないぞ」
「え?」
「通りすがりの一般人、だそうだ」
喉奥で低く笑いながら言えば青龍は驚いたように気絶している雑魚を見た。雑魚といえども数はそれなりにいるし、奇襲をかけられれば無傷ではいられない。その程度の強さを持つ奴らを。
「…名前は聞き出したんでしょ」
「伽藍、といっていた」
「伽藍……。聞いたことない名前ですね。新しい勢力になるかもしれない」
ぶつぶつ呟いている青龍はあの男を警戒しているのだろう。だが無駄なことだ。恐らくアレは目立つ為に行っているわけではない。むしろ逆。やることを終えたとして跡形もなく消え去るかもしれない。
そんなことはさせない、と内心で強く思う。あの美しく悪辣な獣を傍らに置ければどれほど楽しいだろう。自らの潔白を証明する為に悪意のドロドロの部分を見せつけて説得するなんて手段を使ってくる奴はそういない。
「?随分と、楽しそうですね」
「あぁ、楽しい。久しぶりに狩りをするからかもな。潰す為でなく、捕らえるための狩りだ」
逃す気などない。絶対に捕まえる。
仲間の下っ端達が喧嘩を売った奴らを縛り上げていく。ここからは尋問の時間だ。殺しはしないが徹底的に潰して反抗する意思ごとなくす。そうしなければ喧嘩を売られたメンツが回復しないでそのまま他の奴らにも舐められることになるからだ。
最近、ライバルチームとして名を馳せている〝阿修羅〟とは別に影からちょっかいをかけてくる第三勢力がある為、情報を集めるという意味でも余計に逃すわけにはいかなかった。
それにしても奇襲作戦とは。途中で情報が入らなければそのまま見逃してまんまと罠にハマっていた所だった。集合地だった倉庫が知られていることも問題だ。内通者がいるのか、向こうが情報に長けているのか。
そうこうしている内にアジトにしているバーに到着した。外れていた仲間も全員集合している。
青龍が説明をしているのを聞き流しながら伽藍に思いを馳せた。
「白」
獰猛な気分で舌舐めずりをしていたら低い声がかかった。視線をあげれば我らがチームの総長様が此方に視線を向けている。
「どうした」
「話は聞いた。〝ウロボロス〟としても奇襲から助けてもらった礼はしないとな。方法はお前に任せる。ただし丁重に、だ。間違えても壊すなよ」
「わかってるさ、あの獲物はオレの手元に置くんだからな」
「お前がそこまで執着する相手か。…俺も気になってきたな」
「やらんぞ」
「チームに入れるならどんな奴かを把握しないとだめだろー?」
おちょくるような事を言ってるが、その実もし合わないと判断すれば即座に排除する気だろう。隣に置くのをやめるつもりなど毛頭ないが出来れば嫌われないでおいて欲しいと思う。
誰にも感じた事ない感情がひどく新鮮で、だが不快ではなかったから。
白龍は楽しい気持ちにしたがって笑っていた。
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