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エピローグ

作家、ダンジョンの街を訪れる

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 いやあ、世界を回ってそれを記した冒険記を作っているんですか。それはとてもすごいことですね。どこの街からスタートしたんですか? えっ!? そんな遠くから!? それは、ほんとうにすごい。それで、昨日この街に着いたと。ギルドから紹介されて来たんですね。まあ、一応アタシこの街の町長ですので。この街のことを話すのはやぶさかではないですね。冒険記を読んだ人が訪れてくれるのは願ってもないですし。

 ええ、この街はダンジョンの一番の最寄りですので、冒険者の出入りがとても多いです。名を上げたい人もいれば、生活の糧を稼ぎたい人も多いですけど、何しろこの街には冒険者の養成学校があるので、しっかり基礎をつけてから冒険に出たい人にはもちろん、大人になってからでもノウハウを学びたい人なんかも訪れますよ。当時のダンジョンマッピング師二人が協力して設立した学校で、設立者代表の名前を取って『暁の学び舎』と呼ばれています。近々分校も建つようです。このあいだ申請書が提出されてきましたから。

 あ、そうそう。この街の出身ですよ。『冒険女帝リィナ』ね。森林大迷宮を踏破した女冒険者。ええ、実在しました。一緒に旅してたライオットとアーダもこの街で活躍してた冒険者です。アタシの爺さんの代の話ですけど。そうそう、そのころのギルド長の孫なんですよ、アタシ。だからチビのころだけど彼らに会ったこともあります。やっぱり吟遊とか絵物語で人気なんですね。そちらの出身の街にも伝わっていますか。それはそれは、町長としては鼻が高いですよ。

 え? あ、『性欲の強い男エルフ』ね~。ああ~、そっちの絵物語も……。実在しますよ。というかさっき話してた冒険者養成学校の設立者代表がその人です。ええ、まだ生きてますね。奥さんと一緒に丘の上に住んでます。ああ、奥さんもどうやら人間じゃないらしく……まあ、街にとても貢献している人たちなのでその辺はまあ。この街はいろんな種族が集まってくる街ですから……。わざわざおたくの種族何? なんて聞くの失礼ですし……。

 ああ、奥さんはね、『聖女マノン』の診療所で働いていますね。聖女マノンはもう天寿を全うしているので、今は彼女が切り盛りしています。ダンジョンで被る状態異常を治すことができる診療所なので、遠くから治してもらいに訪れる人もいて繁盛していますね。

 商業も発展しています。なんせ冒険者が多いですからね。そういう人たち向けの宿屋や店がたくさん並んで栄えている。名産品はなんといってもコケ煙草です。ダンジョンの中に自生しているコケを干して煙草にしたものです。蛙人の商人たちから買えるので一度試してみるのもいいでしょう。武器防具なら『ドワーフのツブラ』が一押しです。

 もう行かれますか。そうですね、直接見たほうが面白いと思いますよ。表面的なこと以外も聞けるでしょう。吟遊や絵物語じゃ、歪んで伝わってることも多いと思うし。ああ、はい。彼らに話を聞きに行きたいですか。そう来るだろうなと思っていました。いいんじゃないですかね。気のいい人たちです。案外面白い話が聞けるんじゃないかと思いますよ。え? なんでこんなに教えてくれるのかって?
 うーん。くれぐれも変な気は起こさないでくださいね。彼ら、強いので何かしようってんならあなたが危ない。賊とかにやられるような人たちではないので。あはは、わかってますって。あなたそういう感じじゃないでしょ。アタシだって情報やる相手くらい自分で判断して選んでるんだから。

 彼らの名前はね、『レイモンド』と『シルキィ』って言います。この街にはいなくてはならない立派な保護者とその妻。きっとあなたの書く冒険記に役立つ話を聞かせてくれると思いますよ。アタシも読むのが楽しみだ。では、我らが街を楽しんで行ってらっしゃい。気を付けて。

 ああ、リンデンの花の香りがする。そろそろ初夏ですねえ……。
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