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第二章 クラン

第28話 魔の森の呪符探し ③

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「す。すげえ……! あんなに苦労してダメージを与えても倒せなかった骨どもが、こんなにあっさりと消えていくなんて! それがマスターの力か」
「アンデットに聖なる力を使うなんて……さすがとしか言いようがありませんわね」

 二人とも冴眼の、それも聖なる石の効果だけで脱帽か。
 呪いの力なんか見せたら怖がられそうだな。

「ふん、あたしは苦労なんかしなかったけどな! でも、さすがはルカスだぜ!」

 本来、アンデットには炎魔法で倒す方が楽だ。
 しかし今回、あえて違うやり方で見せつけるようにして倒してみせた。

 冴眼で魔法を出すのも出来るが、暗闇で骨相手なら光を使った方が分かりやすいからだ。

「骨以外に魔物もいないようだし、呪符探しを始めようか」
「すぐに見つかるはずですわ! 魔の森の奥の奥までは行って無いですもの」
「だな。おれらの強さはマスターが見ての通り。その辺のは問題無いが、敵の相性ってなるとさすがにな」

 この二人パーティーの戦い方は、ファルハンが突っ込んでダメージを与える。その後にイーシャが呪符を使って追加攻撃もしくはとどめを刺す。そんな感じだろうか。

「呪符を置き忘れたのはこの辺りのはずだから、マスターはここで待っててくれ!」
「分かった。待ってるよ」

 ファルハンとイーシャの二人で、ガサガサと音を立てて茂みの奥に入って行く。

「今回のことはルカスのせいじゃねえってのに、あんなお人好しにすることなんかねえのに」
「ああ、宮廷魔術師のこと?」
「あたしは直接戦ったから分かるけど、ルカスと比べものにならない弱さだったぜ? よく一緒にやってたよな」

 ありふれた宮廷魔術師と言われていたが、実力には個人差があった。特務隊はそれが顕著に表れていた。もし冴眼を手に入れてなければ、苦戦していた可能性は高い。

「……そういえばミディヌ。ロッホ周辺で戦っていた宮廷魔術師は逃げたの?」
「ロッホに近づく前に逃げて行った。爺が暴れてたってのもあるけどな。でも、あんたが姿を見せたと同じくらいに撤退した感じだな!」

 賢者との勝負が決して撤退したってことか。
 それに、宮廷魔術師にとってロッホはお世話になっている町。
 一部の宮廷魔術師を除いて、町に迷惑をかけたくなかったかもしれないな。

 魔の森に逃げ込んだ二人についても、北ガレオスに宮廷魔術師が押し寄せてきたことが原因。
 そう考えると間接的ではあるけど、魔の森での呪符探しに協力出来たのは良かったかな。

「マスター! 待たせちまって悪ぃ。ようやく見つかったぜ」
「ご迷惑をおかけしましたわ。コレと二人だけでは厳しかったはずですもの」
「うるせえな、全く。とにかく見せてやれよ、お前の力を!」
「分かっていますわよ!」

 イーシャが手にするのは束になった呪符。その手に見えるのは、何かの魔法文字が書かれた羊皮紙だ。
 呪符は魔力が無くても使える物として知られているが、羊皮紙を入手するのに手間がかかる。

 そのせいで一部の冒険者しか所持しなくなり、使う者は呪符使いと呼ばれるようになった。
 イーシャの呪符は彼女が持つスキルに特化した感じだ。
 ウルシュラが使う魔道具に似た感じにも見える。

「使うったって、この辺には魔物はいねえぜ? どうすんだ、イーシャの姉ちゃん」
「別に攻撃するだけが呪符の良さではありませんわ。とにかく、あなたとマスターにはそのまま何もしないで立っててもらいますわ!」
「あぁん?」

 ミディヌとはあまり合いそうに無い二人だな。
 同じパーティーで常に行動するでもなくて、クランなら問題無いけど。

「そういうことだ。マスター。悪ぃけど、そのまま待っててくれ」
「よく分からないけど、そうするよ」

 しばらくして――

「では、使いますわよ!!」

 イーシャは何かの呪符を指先で挟み込み、それをそのまま空に向かって投げ放つ。
 すると、一瞬目くらましのような状態になる。
 そうかと思えば次の瞬間には――

「な、何!? おい、ルカス! ここってこの前の場所じゃねえか?」
「北ガレオス? 市街地に転送して来た? 魔の森からこんな一瞬で……」

 魔の森でイーシャは呪符を使用。
 一瞬のまばたきの間に、中立都市の北ガレオス中心地に到着していた。

「おぉ! あなたさまは、ルカス・アルムグレーン様!!」
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