上 下
27 / 50
第二章 クラン

第27話 魔の森の呪符探し ②

しおりを挟む

 魔の森にアンデッド軍団? 
 見えているだけでもびっしりいるな。
 骨軍団しか見えないとはいえ、しばらく来ないうちに魔物の勢力が随分と変わった気が。

 俺自身、中立都市周辺に来ることも少なくなっていた。
 だけど、気づかない間に魔物そのものも強くなっていたみたいだ。

「ミディヌ。どうす――」

 ――っという間に、ミディヌが敵に向かって突っ込む。
 不死アンデットには拳か、弱点となる魔法属性が有利。
 それにもかかわらず、ミディヌは二本の剣を交差させながら斬り込んでいる。

「うううーーうりゃぁっ!!」

 勢いのあるミディヌは双剣使い。両腕に備わるその剣は、自分の意思で自在に使いこなせる。
 致死的ダメージを与えられずともビシッ。としたひび割れを生じさせ、敵の動きを鈍化。
 
 暗闇に紛れて向かって来るのを遅らせている。

「ちぃっ、双剣のミディヌにばかりいいところを譲ってたまるかよ!!」

 暗くて足下がおぼつかない中、ファルハンも負けじと腕を上げたまま突っ込む。
 骨が砕け、ヒビ割れる音が周辺に響く。

 どちらも口は悪いけど、上手く連携が取れている感じに見える。

「ちっ、ダメージは通るけど骨相手に繰り返したところで無駄だな。おい、お前! 拳で破砕出来ねえのかよ?」
「無茶言ってくれるぜ。一撃の強さはあってもおれの攻撃は一点集中タイプだ。双剣のあんたこそ、いつまで経っても骨を粉々に出来ねえだろうが!」

 言い争いしながらも、何とか攻撃だけは出来ている感じか。
 しかし確実に命中するでもなく、その動きが止まることは無い。

「ああああーー、アンデットは相性が最悪すぎる!! ルカスにいいところを見せたいっていうのに!」
「それはこっちも同じだ。マスターに偉そうなことを言っておいてこれはあんまりってもんだ」

 魔の森に入る前、マスターに相応しいかを見極めさせてもらう。
 ファルハンがそんなことを言ってたけど……。
 よりにもよって骨相手にいいところを見せられない彼の焦りもあるわけか。

「ファルハンに対する見極めは、もういいんじゃありませんか?」
「え?」
「骨相手には火属性魔法か格闘が優位……だとしても、魔の森の影響を受けた敵では倒すこともままならない。マスターが黙って見ているのは、わたくしたちの力量をはかっておいでですよね?」

 そんなつもりは全く無かったんだけど……。むしろ俺が見られてるものとばかり。
 冴眼が単なる光る目だと思われてるのもあるのかな。

 このままではジリ貧。呪符探しがメインなのに、アンデッド軍団に時間をかける意味は無いか。
 相手がアンデッドなら、なおさら冴眼の力を示すには丁度いい。

「ミディヌ、ファルハン! 今すぐその場から引くんだ!!」

 二人は疲れを見せていなく、まだ余力はある。しかしアンデッド以外に絡まれても厄介だ。
 即、終わらせる。その方が二人にとって次につながるはず。

「……マスターのお力、見せて頂きますわ」
「イーシャ。君の方こそ、呪符が見つかったら見せてもらうよ」
「呪符さえあればこの辺りの敵など、軽くひねって差し上げますわ!」

 四肢を砕かれた骨の動きは鈍く、後ろに下がる二人を追う早さは薄まっている。

「ルカスっ! やっちまいな!!」
「ハァッ、ハァ……くそっ、情けねえ。マスター、ひとおもいにやってくれ!」

 熱と生命感知だけを頼りに向かって来る骨に対し、俺がする"動き"。
 向かって来るだけのアンデッド軍団を一斉に『見つめる』だけだ。

 回復魔法を手でかざす"つもり"で、敵の前に立ち尽くす。

「な、何やってんだ、マスター!! そんな無防備に立ち尽くすだけじゃ、何も――!」
「あれでいいんだよ、ルカスはな」
「……光るだけでは無かった――そういうことですのね」

 首も動かさない立ち尽くし。
 俺はその姿勢で視界に映るアンデッド軍団に"治癒"効果を放った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~

平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。 しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。 パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。

パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件

九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。 勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。 S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。 そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。 五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。 魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。 S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!? 「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」 落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...