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第二十三章:全ての始まり

503.フィーサの寄り道

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 そういえば移動的なものをウルティモに頼りっぱなしな気がする。
 だが彼曰く、

「われは此度の戦いに不参加ゆえ、こういう時くらい役立たせてもらいたいのだよ。それに枯渇の心配が無いとはいえ、今の時点でアックくんは無駄な魔力を使わぬ方が良い」

 ――ということを言い放ち、彼はすぐにイデアベルクに帰って行った。
 ウルティモの言ったように今のおれの魔力量は窮する心配が無い。

 以前は魔法使用の戦闘ばかりだった。
 しかし今は魔剣を使うことが多く、それほど魔力を必要としなくなったのも関係しているかもしれない。

「ところで――何でお前ラファーガがおれたちについている?」

「人間が気にすることじゃないさ。ぼくの役目は、時空を歪めた人間が侵入して来たのを監視するのだから!」

 その割にはルティのことを意識してるんだが……。
 の幻として動いたとはいえ、やはり本物が嫌なことに変わりはないな。

「あぁぁ、ぼくは嬉しいよ……! こうしてルティさんと相まみえるなんてね! きみもそうだよね?」
「あぅぅぅ……どうしてどうして再会しちゃうんでしょうか……」
「ふぅん、が神族の男ですのね……」

 ルティにとってはトラウマ以外の何物でも無くなってるか。
 そこまで嫌いとは……。

「ウニャ、アック! フィーサはいつ戻って来るのだ?」
「んん~……どうだろうな。どうなんだ、ラファーガ」

 ルティにばかり構っているかと思えば、精霊竜アヴィオルにもちょっかいを出してるようだな。
 似た感じとはいえいい加減な奴だ。

 風を司る神……だが神族の中では多分一番弱い。
 こいつが外界からの侵入を防げる奴とは到底思えないんだが……。

 神族国ヘリアディオス。

 各属性の神が村や町を治め、そこに暮らす人々を守っている国家だ。魔王がいる孤島と同様に、神族国も外界から簡単に来れる場所には無い。

 さらに言えば幻霧の村のように、暮らす人々の姿や町並みを一切見せない国でもある。属性神の実力には微妙な開きがあるが、光と火だけは本物なので一概には言えない。

「で、どうなんだ? フィーサはいつ戻って来る?」

「あの剣はディオス様の剣だ。ぼくが分かるわけが無いだろう? 何をしに来たかは大体察しがつくけど、アック・イスティに教える義理は存在しない」 

 この野郎……神だとか関係無しに吹き飛ばしてやろうか。
 
「アック、アック! 感じるのだ! フィーサがあっちにいるのだ!! シーニャ、行って来るのだ~」
「えっ? あっ――」

 行ってしまった……。
 さすがのラファーガもシーニャを止めることなく行かせてしまったようだ。

 シーニャが真っ先に分かったのにおれが分からないとは……。

「アックさま。弱すぎる男が風神なのは分かりましたけれど、他の属性神はどこにいるのです?」
「ミ、ミルシェ……もしかして?」
「ええ。あまりにルティにしつこくしていたので、空に浮かせておきましたわ」
「……」

 おれがやる前にミルシェによって、ラファーガが上空に飛ばされていた。
 神をも畏れぬミルシェか。

「火神のアグニは近くにいるはずだが、水と氷は分からないな。会いたい属性神でもいるのか?」
「いえ。ですけれど、あなたさまはここの神の力を得てからお強くなられたのでしょう? あたしも出会えば今よりも極められるのかと気になっただけですわ」

 すでに強いのに極めたいのか……。
 とはいえ水と氷の神はどこにいるかも不明だし、ラファーガに聞いても教えてくれないだろうな。

 ここに寄った理由はフィーサの用事と経由地。
 他の神を探して何かを得る時間は、おそらく取れないだろう。

「……ですけれど、今はまだそういうことを考えないようにしておきますわ。ここに長く滞在するわけではありませんもの」
「そ、そうだな」

 ミルシェにも思うところがあるってことか。
 そうしてどれくらいの時間が経ったか分からないくらい待っていると、

「ウニャ~!! アック! フィーサが帰って来たのだ!!」

 シーニャの嬉しそうな声がどこからともなく聞こえて来た。
 
 おっ? 
 何だ、意外に早かったな。大した用でも無かったのか。

「――むっ!?」
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