503 / 577
第二十三章:全ての始まり
503.フィーサの寄り道
しおりを挟むそういえば移動的なものをウルティモに頼りっぱなしな気がする。
だが彼曰く、
「われは此度の戦いに不参加ゆえ、こういう時くらい役立たせてもらいたいのだよ。それに枯渇の心配が無いとはいえ、今の時点でアックくんは無駄な魔力を使わぬ方が良い」
――ということを言い放ち、彼はすぐにイデアベルクに帰って行った。
ウルティモの言ったように今のおれの魔力量は窮する心配が無い。
以前は魔法使用の戦闘ばかりだった。
しかし今は魔剣を使うことが多く、それほど魔力を必要としなくなったのも関係しているかもしれない。
「ところで――何でお前がおれたちについている?」
「人間が気にすることじゃないさ。ぼくの役目は、時空を歪めた人間が侵入して来たのを監視するのだから!」
その割にはルティのことを意識してるんだが……。
こいつの幻として動いたとはいえ、やはり本物が嫌なことに変わりはないな。
「あぁぁ、ぼくは嬉しいよ……! こうしてルティさんと相まみえるなんてね! きみもそうだよね?」
「あぅぅぅ……どうしてどうして再会しちゃうんでしょうか……」
「ふぅん、これが神族の男ですのね……」
ルティにとってはトラウマ以外の何物でも無くなってるか。
そこまで嫌いとは……。
「ウニャ、アック! フィーサはいつ戻って来るのだ?」
「んん~……どうだろうな。どうなんだ、ラファーガ」
ルティにばかり構っているかと思えば、精霊竜アヴィオルにもちょっかいを出してるようだな。
似た感じとはいえいい加減な奴だ。
風を司る神……だが神族の中では多分一番弱い。
こいつが外界からの侵入を防げる奴とは到底思えないんだが……。
神族国ヘリアディオス。
各属性の神が村や町を治め、そこに暮らす人々を守っている国家だ。魔王がいる孤島と同様に、神族国も外界から簡単に来れる場所には無い。
さらに言えば幻霧の村のように、暮らす人々の姿や町並みを一切見せない国でもある。属性神の実力には微妙な開きがあるが、光と火だけは本物なので一概には言えない。
「で、どうなんだ? フィーサはいつ戻って来る?」
「あの剣はディオス様の剣だ。ぼくが分かるわけが無いだろう? 何をしに来たかは大体察しがつくけど、アック・イスティに教える義理は存在しない」
この野郎……神だとか関係無しに吹き飛ばしてやろうか。
「アック、アック! 感じるのだ! フィーサがあっちにいるのだ!! シーニャ、行って来るのだ~」
「えっ? あっ――」
行ってしまった……。
さすがのラファーガもシーニャを止めることなく行かせてしまったようだ。
シーニャが真っ先に分かったのにおれが分からないとは……。
「アックさま。弱すぎる男が風神なのは分かりましたけれど、他の属性神はどこにいるのです?」
「ミ、ミルシェ……もしかして?」
「ええ。あまりにルティにしつこくしていたので、空に浮かせておきましたわ」
「……」
おれがやる前にミルシェによって、ラファーガが上空に飛ばされていた。
神をも畏れぬミルシェか。
「火神のアグニは近くにいるはずだが、水と氷は分からないな。会いたい属性神でもいるのか?」
「いえ。ですけれど、あなたさまはここの神の力を得てからお強くなられたのでしょう? あたしも出会えば今よりも極められるのかと気になっただけですわ」
すでに強いのに極めたいのか……。
とはいえ水と氷の神はどこにいるかも不明だし、ラファーガに聞いても教えてくれないだろうな。
ここに寄った理由はフィーサの用事と経由地。
他の神を探して何かを得る時間は、おそらく取れないだろう。
「……ですけれど、今はまだそういうことを考えないようにしておきますわ。ここに長く滞在するわけではありませんもの」
「そ、そうだな」
ミルシェにも思うところがあるってことか。
そうしてどれくらいの時間が経ったか分からないくらい待っていると、
「ウニャ~!! アック! フィーサが帰って来たのだ!!」
シーニャの嬉しそうな声がどこからともなく聞こえて来た。
おっ?
何だ、意外に早かったな。大した用でも無かったのか。
「――むっ!?」
0
お気に入りに追加
560
あなたにおすすめの小説
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移
龍央
ファンタジー
高校生紺野陸はある日の登校中、車に轢かれそうな女の子を助ける。
え?助けた女の子が神様?
しかもその神様に俺が助けられたの?
助かったのはいいけど、異世界に行く事になったって?
これが話に聞く異世界転移ってやつなの?
異世界生活……なんとか、なるのかなあ……?
なんとか異世界で生活してたら、今度は犬を助けたと思ったらドラゴン?
契約したらチート能力?
異世界で俺は何かをしたいとは思っていたけど、色々と盛り過ぎじゃないかな?
ちょっと待って、このドラゴン凄いモフモフじゃない?
平凡で何となく生きていたモフモフ好きな学生が異世界転移でドラゴンや神様とあれやこれやしていくお話し。
基本シリアス少な目、モフモフ成分有りで書いていこうと思います。
女性キャラが多いため、様々なご指摘があったので念のため、タグに【ハーレム?】を追加致しました。
9/18よりエルフの出るお話になりましたのでタグにエルフを追加致しました。
1話2800文字~3500文字以内で投稿させていただきます。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させて頂いております。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~
ゆさま
ファンタジー
新作ゲームアプリをテストプレイしてみたら、突然ゲームの世界に転送されてしまった。チートも無くゲームの攻略をゆるく進めるつもりだったが、出会った二人の美少女にグイグイ迫られて…
たまに見直して修正したり、挿絵を追加しています。
なろう、カクヨムにも投稿しています。
悪意か、善意か、破滅か
野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。
婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、
悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。
その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
追放の破戒僧は女難から逃げられない
はにわ
ファンタジー
世界最大の力を持つドレーク帝国。
その帝国にある冒険者パーティー中でも、破竹の快進撃を続け、今や魔王を倒すことに最も期待が寄せられると言われる勇者パーティー『光の戦士達』。
そこに属する神官シュウは、ある日リーダーであり勇者として認定されているライルによって、パーティーからの追放を言い渡される。
神官として、そして勇者パーティーとしてそぐわぬ素行不良、近年顕著になっていく実力不足、そしてそんなシュウの存在がパーティーの不和の原因になっているというのが理由だが、実のところは勇者ライルがパーティー内で自分以外の男性であるシュウを追い払い、ハーレム状態にしたいというのもあった。
同じパーティーメンバーである婚約内定者のレーナも既にライルに取られており、誰一人として擁護してくれず失意のままにシュウはパーティーを去る。
シュウは教団に戻り、再び神官として生きて行こうとするが、そこでもシュウはパーティー追放の失態を詰られ、追い出されてしまう。
彼の年齢は20代後半。普通の仕事になら就けるだろうが、一般的には冒険者としては下り坂に入り始める頃で伸びしろは期待できない。
またも冒険者になるか?それとも・・・
拠り所が無く、愕然とするシュウはだったが、ここで一つのことに気が付いた。
「・・・あれ?これで私はもう自由の身ということでは!?」
いい感じにプラス思考のシュウは、あらゆる柵から解き放たれ、自由の身になった事に気付いた。
そして以前から憧れていた田舎で今までの柵が一切ない状態でスローライフをしようと考えたのである。
しかし、そんなシュウの思惑を、彼を見ていた女達が許すことはなかった。
※カクヨムでも掲載しています。
※R18は保険です。多分
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる