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第二十二章:果ての王

495.ルティシアの強化特訓 6

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 リリーナさんに案内され、村の奥へと案内されているが……。

「相変わらず村の全景は見せてくれないんですね」
「見ても面白いことなどありませんよ。この村は外界でのことに干渉しないのです。ですから~アックさんであろうとも、お見せすることなどあり得ないのですよ~」
「…………」

 ドワーフとエルフが半々で暮らす村であることは確かだが……。隠し通したいなら無理に知る必要は無いな。それにリリーナさんはルシナさんの姉。

 あまりなれなれしくしない方が身の為だな。

「は~い、アックさぁん。着きましたよ~」

 霧に隠れた村の中を歩いてしばらく経ったところで、目的地に着いた。といっても、霧の中からいきなり扉が出て来ただけで、周りに何があるのかさえ見ることは出来ない。

 本当に何も見せてくれない人たちだな。

「この扉を開ければルティたちがいるんですか?」

 ここまで連れて来ておいて騙すことはしないはずだが油断は禁物だ。現に霧の周りからはあまり良くない気配さえ感じられるわけだし。

「い~え! 部屋の中に入っただけでは何も起きませんよ。その部屋の中でして欲しいことはですね、敵の姿を思い浮かべてもらいたいんです。それもルティシアが一番嫌な敵に!」

 ルティの嫌な敵っていうと……魔王だろうか。

「思い浮かべればおれがそいつに見えるとでも?」
「そのとおりなんですよ! そうじゃないとあの子は本気で攻撃して来ないはずですから」
「……ミルシェもですか?」
「共通の敵となると難しいはずですので、とりあえずルティシアの嫌な敵からでいいですよ。ちなみに強さはアックさん依存ではなく、その敵の最大の強さになります!」

 そう言われても難しいところだな。そもそもルティが一番嫌だった敵なんていただろうか。魔王の場合は、戦う前に動きを封じられて怒りをこみ上げるまでには至らなかったはず。

 そうなるともっと前の、過去に戦った敵を思い浮かべるしか無いよな。

「戦いは一度きりで?」
「いいえ~! 私が知っているだけでも、え~と……2……3くらいだったと思いますよ。最終的には最も戦いづらい敵になってもらいますけど! あぁ、魔王は違いますよ」

 そんなにいたのか。魔王じゃないとすれば多分あいつだな……。

「思い浮かばなかった場合は……?」
「優しい私がアックさんの為に、その敵を出現させましょう! ですので、ルティシアと戦う前に幻と戦って倒してくださいね! 倒したら自然とその敵の姿になれますから」
「思い浮かんだ敵が外れても同様なことを?」
「そのとおりです! ではでは、お部屋にどうぞ~!」

 ……何だ、結局おれがルティの特訓相手じゃないか。ルティだけでも厄介なのに、ミルシェもいるのは結構厳しいのでは。

 扉を開け、部屋に入った。すると村の中とは思えないほど広大な自然が現れた。おそらくルティのイメージがそうさせていると思われる。

 ルティたちの姿は見えないが、おれが敵の姿になった時点で攻撃して来るはずだ。
 おれも嫌だった敵であり、ルティも困っていた敵といえば――

「あああああーー!? ど、どうしてあなたがここにいるんですかぁぁぁぁ!!」

 当たっていたか。こいつになりたくは無かったが、一番目に思いついたのは風の神ラファーガだ。

「ふっ、迎えに来たよ。ボクと一緒に来てくれないかな? そうすればきっと君を幸せに出来るよ」

 どうやらおれの声はかき消され、話し方や強さをそっくりそのまま使えるらしい。こんなキザなことを言いたかないが、こういうイメージが染み付いているみたいだ。

「ルティ。このキザッたらしくて吐き気がする男は誰かしら?」
「ミルシェさんは出会ってないと思いますけどっ、この人は神族国の風の神で~え~と……」

 名前すら忘れ去られているくらい嫌な相手なのか。

「さぁ、カノジョ! ボクの風に舞って、一緒に空高く行こうじゃないか!」
「嫌ですよっっ!! わたしにはもう決まった人がいるんですっ! ですので、空高く吹き飛ばして差し上げますからね!」

 こいつの強さで今のルティにどこまで通じるのやら。風の力とやらを使わせてもらうとするか。
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