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第二十二章:果ての王

479.ルティと時空魔道士

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「アック様ぁぁぁ~! ここはどこですかぁぁ! どうして誰もいないんですか~」

 アックとシーニャの戦いが始まっていた頃、魔王によって時を止められたルティはどういうわけか別の次元に迷い込んでいた。ルティの精神はすでにあの場に無く、抜け殻のルティが残っている状態だった。

 アックを探しながら、自分がどういう状態に陥ってしまったのかも分からないルティだったが――
 
「ルティシアさん。こっちへ!」
「そ、その声はウルティモさん!! 姿が見えないですよぉぉ~」

 ◆

 ルティシアさんがいる場所は一面真っ暗な闇空間。
 自分がどこにいるのかさえ分からなく、足下もまるで見えないとみえる。

「どこへどうやって行けばいいんですか~……びぇぇぇぇ」

 声だけはっきり聞こえるとはいえ、われの姿はそこには無い。
 泣かせてしまうのは無理も無いことではあるが……。
 
「すまないがここでは見せられぬ。とにかくルティシアさんがここから出るには、われの声が近い所まで来てもらう必要があるのだよ。手間をかけさせて申し訳ない」

 何故次元の狭間に迷い込んでしまったのか、実に興味深いがまずはここから救わねばならぬ。
 
 だがいくらわれの力でも、むやみやたらに干渉は出来ない。ここはルティシアさんが自分だけで動いてもらう必要がある。

 魔王の力で封じられた力に対して出来ることといえば、これしかあるまい。

「はひぃぃ……どこですかどこですかぁぁぁ」
「もうすぐです。こっちへ出て頂ければ、われの領域。魔王でも手出し出来ぬかと」
「はぇぇぇ」

 しばらくして――

「ルティちゃん! こっちだよ~! こっちこっち」
「はぇ? アヴィちゃん? あれれ、それに他のエルフさんまで! わ、わたしはどうしちゃったんですか? もしかして死んじゃったとか!? それにここって……」
「やだなぁ、死んでないよ~。ん~とね、ここはバラルディアの影響下から外れたところで、レイウルム半島? だったかな」
「レイウルム半島って確か~」

 われが率いる精霊竜に加え、エルフたちも逃がすことに成功したが魔王の影響下を受けているままでは自由に動くことが出来ない。それを踏まえ、もっとも離れた"遺跡"に移動したわけだが……。

「うむ。この半島には盗賊が多くいると聞く。だがルティシアさんの方がここをよく知っているのではないか?」
「はい、それはもう~」
「魔王のこと、そしてわれが知っていることを全てお話しよう。ゆえに、ひとまず身を隠すとしよう」

 ザーム共和国の手に落ちていなければ、ここの盗賊が隠してくれるはず。
 その後でルティシアさんとともに戻るしかあるまい。
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