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第二十二章:果ての王

466.公国の変化 3

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「ふぅー……」

 結局シーニャに肉をたくさん食べさせられてしまった。彼女はあくまでおれありき。とてもギルドと呼べないものの、あの中で好きな肉を食べたり眺めたりするのが楽しいらしい。

 外に出て行くおれに対し、シーニャはついて来なかった。イデアベルクに戻って来たのも久しぶりとはいえ、シーニャは歩き回るといったことは好きじゃないようだ。

 フィーサはこぶし亭に行ってるとかでいなくなったし、釣りギルドに顔を出すことにする。

「あー、アックニャ~! お帰りニャ」

 歩こうとしたところですぐに声が飛んで来た。
 ネコ族でギルドマスターといえばもちろん、

「やぁ、シャトン。ただいま」
「釣りの腕は上がったかニャ? ムフフ……釣りギルドはすごく盛り上がってるニャよ!」

 釣りか……。とても落ち着いて出来る状態じゃなかったし、そもそもルティの方が圧倒的過ぎる。おれの釣りスキルは多分頭打ちだろうな。

「そう言えばエルフのロクシュがそんなこと言ってたな。あれからメンバーが増えたのかな?」
「そのとおりニャ~! エルフたちも釣りを楽しんでくれているおかげで、たくさん釣れるようになったニャ。おかげで今では別の楽しみ方が~」
「釣り以外の楽しみ方ってこと? それってどんな――」
「今日は大物が……コホン。アックが来てくれないとギルドがぶっ潰れるかもニャ! 急いでニャ~」

 何かを言いかけたうえ、おれにだけ隠し事をしてるっぽいがその手に乗ってやるか。

「潰れる? じゃあ急いで向かうよ」
「後はよろしくニャ! お皿をいっぱい用意しとくニャ~」

 何かのイベントっぽいな。
 こういう時にルティがいれば盛り上がりそうだけど、1人で行くしかないか。

 ギルド街区の通りの奥は海崖があり、そこまではいくつものギルドが連なっている。
 その中でも釣りギルドは一番初めに出来たギルド。
 
 アファーデ湖村で出会ったシャトンの協力が無ければ、成り立たなかった。
 それが今では、イデアベルクに欠かせないギルドに成長した。
 
 シャトンは大げさに言ってたけど大したこと無いだろ。
 そう思って奥へ着くと、

「うおおおおお!! くっ、強すぎる……! オレらだけじゃ勝てねえぇぇ」
「ロクシュ! 魔法は使っちゃ駄目か?」
「今回は駄目だ! ギルドマスターを怒らせたら出禁になっちまう!!」

 危険の無いはずの釣りギルドで、何故かエルフたちが怪物級の魚と戦っていた。
 釣り竿を使ってないどころか釣りでも無いような……。

「あ~イスティさまだ~! ようやく来た! 早く早く参戦して~!!」

 野次馬の観衆の中からおれを呼ぶ女性の声があった。
 彼女の正体はルティの精霊竜であり、竜人娘でもあるアヴィオルだ。

 ルティの赤毛と違って真っ白な髪をした、何とも神秘的な女性でもある。
 おれたちとの旅には同行させずにイデアベルクに帰してたが……。

「アヴィオルだよな? 何でこんなところにいるんだ。というか参戦って?」 
「見れば分かると思うんだけど、エルフたちが苦戦してて~しかも魔法は使っちゃ駄目で~」
「釣りギルドで何で怪物魚がいるんだ?」

 少し変わった魚がいるのは知ってたが、怪物魚は見たことが無い。

「あれは古代魚だよ。時々釣れるの! イデアベルクって古い場所だから! いつもは魔法で倒してるんだけど、今日は拳デーなんだって」

 何だ古代魚か。というか、拳デーって何だ……。
 
「こういう時こそルティの出番だろ……」
「ルティちゃん寝てるでしょ。だから~イスティさましかいないってわけ!」
「倒せばいいんだよな?」
「うんうん。出来れば粉砕しないで、瀕死状態で! それと、魔法は駄目だよ! それから後始末はしなくていいからね」

 いやに注文が多いな。エルフたちが苦戦するのは魔法が使えないからなんだろうけど。
 ちょっと面倒だがあっさり片付けてやるか。

「任せろ!」

 エルフたちは辛うじて古代魚に振り落とされずにいるが、それも時間の問題。
 ここでなら飛行魔法も存分に使えるし、連続した拳攻撃で終えてやることにする。

「それが終わったら、イスティさまもこぶし亭に来てね!」
「何だ、アヴィオルも行くのか」
「アヴィがいないと行けないんだよね~。そういうことだから頑張れ~!」
 
 おれだけが知らないことを話すってことか。
 まずは古代魚を瀕死状態にして凍らせて、最後は手刀で切り身にしてやろう。
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