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第二十一章:途切れぬ戦い

445.亡霊の呪縛:ザームパート

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 ――ザーム共和国。
 
 この国では亡き賢者に代わって薬師イルジナなる女の下、着々と戦力を整えつつあった。
 地上部分は防壁と城砦をいくつも連ね、募った冒険者を中心とした武装集団に守衛させている。

 そして――
 ザーム共和国・地下壕。

「――あの場所から消えていた。そういうこと?」

「はっ……。すでに何者かが掘り出し、解放したものと思われます」

「……もういい、下がれ」

 一足遅かった……といったところか。
 テミド様を見下していたが、壁と化していたのは知っていた。

 ――あのアック・イスティの手で。

 いつまでも勇者亡霊の呪縛に囚われていたあの女なら、いい手駒として使ってやれたというのに……。よりにもよって、帝国の輩に横取りされるとはね。

「ネルヴァ」
「はい、イルジナ様」
「帝国に送ったブラトからの連絡は?」
「いえ。ですが、潜入は果たしているようです」

 賢者テミド様の繋がりとはいえ、ブラト・ザームは必要無い。
 せいぜい帝国の中で息絶えてくれれば都合が良くなる。

「……そう。テミド様ほどの強さは無い男ではあるけれど、役目を終えてもらえばそれでいいわ」
「御意に」

 これでヘルフラムさえ役目を果たしてくれれば、イデアベルクを手に入れるのも時間の問題。

「イルジナ様。ぼくからもご報告があります」
「あら、何かしら?」
「教導魔導団のヘルフラムがやられましたよー」
「……そんなくだらないことを伝えに来たというのかしら? リアン」  

 ヘルフラムは単独で動く慢心さがあった。
 その為に劣る魔導団を付けてやったというのに、エドラ以上に使えぬ女だったとはね。

「いいえ、やはり所詮は人間の魔法使い。アック・イスティには、是非ぼくたちをお使いください」
「ふん、グライスエンドでやられた魔物が大した自信ね?」
「本当にやられたのなら、ぼくたち樹人族はザームに来ていません! どうかぼくたちを使ってください」
「……その時が来るまで、ワーム族をしつけておくことね」

 グライスエンドから消えた奴らのうち、戦闘魔導士の残党はヘルフラムの下に行った。そしてザームに残したのは、樹人族のリアンとワーム族。

 奴らのリーダーである時魔道士はイデアベルクに逃げ、アック・イスティの手となった。
 邪悪な奴らをザームに来させたのは良かったが、統率力を持つ奴はいない。

 だからこそ、聖女エドラとシーフェル王国第一王女を捕らえたかった。もっとも、第一王女ごときを捕らえたところで何の戦力にもならなかったが。

 第一王女だけでなく、エドラも帝国の手に落ちた。
 ……ということは、帝国もアックに牙を向けたということ。

「ウフフフフ! 潰し合いをしてくれればいいわ。そうすれば、全てわたくしの物となる!」
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