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第二十一章:途切れぬ戦い
434.教導魔導団の殲滅 後編
しおりを挟む神剣フィーサブロスによる魔法蓄積は捨てがたいが、おれにはもう一本剣がある。魔剣ルスト……。
正当な使い方が出来るフィーサに比べると、魔剣は何でもありの反則剣。
魔剣に対し属性を蓄積させることを試したことは無いが、出来なくも無いはずだ。まずは奴の攻撃を見てから決めることにする。
「ヒ、ヒヒヒヒ……アック・イスティ。待ちくたびれたか?」
魔導士ヘルフラムは、味方の魔導士から魔力と生命力を奪った。それによる禍々しさは感じられないが、奪った力の全てを抱えきれずまともに立っていられない状態だ。
自分の限度を超えたのか。まともな許容が出来ずに今にも弾けそうだな。
「何が起こるのか楽しみにしてたところだ。それとも、待たせたことを謝ってくれるのか?」
「……安心しろ。すぐに死の楽園に追放してやる……! 顕現しろ!! 《エリュシオン》!」
「――! 光召喚か!」
「ハハハハ、召喚魔法に驚き慄いても、もう遅い!! アック・イスティ! とっとと逝け!! そして、このエグリー様の刃で切り刻まれるがいい!」
ヘルフラムは光召喚のエリュシオンを空から顕現させた。光がまるで滝のように流れ落ちて来たが、召喚の付加効果なのか、奴の体の一部が剣や短剣に変化している。
「――マスタァ!! 駄目っ、逃げて!」
「アック様ぁぁぁぁ!!」
――彼女たちの悲痛な叫びが聞こえて来た。
この場から遠くへ離れろと言ったことで姿は確認出来ないが。
声の大きな二人からは、ここが見えているってことだな。
まぁ、上空から光が注がれていればどこからでも見えるだろうけど。
彼女たちの焦りとは別に、
「魔剣ルスト。お前の出番だ」
出番の無かった魔剣ルストを構えた。
直後、
ヘルフラムが唱えたエリュシオンは、連続した光を注いで来る。効果は単純なもので、おれの動きを封じ込め、跡形もなく光に滅する……そういった属性のようだ。
しかし事前にかけていたあらゆる防御系魔法はすでに展開済み。死の楽園といった所に飛ばされる効果は通じない。
奴の光召喚でも怖さは無いが、奴の致命的な変化で状況が変わった。変化を見せなければ、属性反射だけで全てが終わっていた。
それは魔剣が奴の変化に気付いてしまったことだ。
ヘルフラムが魔剣ルストに目を付けられた以上、おれには止められない。
魔剣はとりあえず上空から降り注ぐ光を受け止めた。
だが受け止めた光をすぐに放出し、おれに浴びさせてきた。こいつは一度に大量の光を受け止めたが、フィーサと違って光を自身に蓄積することを拒否。
つまり、光の始末はおれが何とかするしかない。光印を使って神聖属性を装備一式に付与をして……。
その状態で奴に体当たりをすれば――
ぐぁん。といった鈍い音をさせ、おれは奴にぶつかった。
「な、何だ、何がぶつかって……!? 光の塊……違う! まさか、貴様……!」
魔法だけに特化したザームの魔導士ヘルフラム・エグリー。
光召喚で攻撃しおれを消したと思っていたらしい。だが消えていなかったばかりでなく、光った装備を着たおれが繰り出した体当たり攻撃に対し、理解が追い付いてないようだ。
「《ディバイン・バッシュ》だ。お前が放った光を魔剣で受け止め、そのまま装備一式に蓄積させて神聖力を高めさせてもらった。その状態でお前に強打しただけだ」
「ぐ、ぐぐうぅ……あ、あり得ない」
あらかじめ魔法防御も魔法反射も高めていた。しかしそれはあくまでおれ自身に対して。霊獣が潜在している装備一式には別の使い方が出来る。
それをやって体当たりしたに過ぎないが、上手くいった。
「動揺しているところで悪いが、お前はもうすぐ魔剣ルストの一部となる。その姿に変化して攻撃して来たことは失敗だったな」
「ば、化け物……め――く、うぅ……イルジナさ……ま」
魔剣ルストは武器を喰う魔剣。そいつの意思に関係無く喰らう。
魔導士の姿形も残さないから気にはならないが、何とも複雑な幕切れだ。
「…………」
――消えたか。
魔剣ルストはフィーサと違って言葉を使うことがない。
今回に関してはそれで良かったとも言えるな……。
これでザームの教導魔導団は殲滅完了ってことか。
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