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第二十一章:途切れぬ戦い

433.教導魔導団の殲滅 前編

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 アイスレジリアンスを解除する――
 その前にヘルフラムの発現させた魔法生物を何とかする……そう思っていた。

 だが少し前に、こいつはおれの体力と魔力を吸収してたことで自滅。黒い塊のようなものとして頭上に乗っかっているだけになった。

 すでに魔法生物では無いがこれを使ってヘルフラムの油断を誘おうとしたが――

「おれを殺す……? 実力差が明らかなのにか?」

「貴様は魔法の全てを知らないはずだ。今からそれを見せてやる。それにかかれば、役立たずの魔法生物もろとも貴様ごときをすぐにでも消し去ってやる!」

「全ての魔法……?」

 どうやら本気らしいな。魔法生物もすでに用済みらしいし。それに奴の言い方だけを聞いていれば、自爆魔法の可能性もあり得る。

 魔法防御と反射スキルをかけておこう。霊獣の守りがあるといっても無敵じゃないわけだし。

「がああああああああ!!」

 ヘルフラムは全神経を集中させ、自身が持つ魔力を放出させている。放出された魔力が黒い霧状に見えるが、何かを媒体とする魔法のような感じだろうか。

 こういう時、わざわざ相手がしようとする攻撃を待つ必要は無い。だがこれが奴にとってのとっておきだとしたら、どういうものか見てみたくなった。

「イスティさま~!!」

 ……ん? フィーサの声だな。他の魔導士を倒して来たか。

「他の魔導士は全滅か?」 
「そんなのはすぐにやっつけたなの。それよりも大変なの、大変なの!! 今すぐここから離れるなの!」
「うん?」
「そこにいる女魔導士から感じる気配がおかしなものなの! この場に留まっているだけでも、危なさを感じてしまうなの! たとえイスティさまでも!!」

 フィーサがこんなことを言うとは珍しいな。ヘルフラムがしていることがそんなにやばいのか。

「おれでも?」
「属性吸収でほとんどの魔導士は戦意を失ったなの。でもでも命までは奪ってないなの。だけど女魔導士が動いた途端に、魔導士たちは一気に意識を失い始めたなの! だから急いでここに――むむ?」

 まさか命を奪い系か? そういや、SSSレアのドレイングローブってのがあったな。アイテムの効果は触れた者の生命力を奪う……だったか。

 ここから離れた魔導士たちがヘルフラムに直接触れられたとは考えにくいが、霧状の影が関係しているのか。魔力を放出しているように見えて、実は魔力を吸い取っているとかじゃないよな。

「フィーサ、どうした?」
「わらわの魔力……正確には魔導士から吸収した属性が吸われてる気が……むむむ」
「それはまずいな。とりあえず、フィーサだけでもここから離れた方がいい」
「イスティさまも離れるべきなの!!」

 フィーサが本来持つ魔力であれば奪われる心配はない。魔導士から属性魔法を吸収してもすぐにフィーサに潜在されず、表面上に残っているはずだ。
 そうなると――

 表面上の魔力がヘルフラムに奪われていると思った方がいい。どういう系統か不明だが、恐らく生命力を奪い尽くす系。

 そうなると単純な魔法反射でしのげるかは運任せか。そういえば、確かこの近くにはミルシェたちがいたはず。彼女たちに影響が及んではまずいことになるな。

「フィーサ! 近くにいるはずのミルシェたちを離れた所に連れて行ってくれ!」
「えぇ? イスティさまは?」
「おれは問題無い。どういう魔法でも、被魔法防御は完璧だ。心配は要らない」

 ――完璧ということは無いが、死にはしない。神の印もあるし、精霊の印もある。それとお守り代わりのサンフィアの魔石なんかも。

 究極的な魔法を放たれようが、多分問題は起こらないはず。だがミルシェたち、特にミルシェなんかは魔力を有しているし少なからず影響が及ぶ可能性がある。距離を取ってもらわないと心配だ。

「でもでも……」
「フィーサブロス。いいから、行け!!」
「わ、分かったなの。マスタァのご命令通りにするなの!」

 味方の魔導士の生命力を奪ってまで発動する魔法か。
 どうなるか、だな。
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