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第二十章:畏怖

410.ドワーフリボンの知恵

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 デーモンによる畏怖により、案内役のアルビンは離脱。結局宮殿ダンジョンには、おれたちだけで行くことになった。

 アルビンを見送り、シーニャたちがいる所へ戻ったが……。

「ウニャゥゥ……やっぱり使えないのだ」

 ルティたちを守る一方で、シーニャには扉を見張ってもらっていた。後からフィーサも向かわせ心配はいらないと思っていたが、知らぬ間に一戦交えていたらしい。

 よく見ると扉はすでに無く、入り口とされる通路が出現。
 扉付近の壁は戦いの抵抗なのか、爪痕が凄まじい。

 シーニャは何度も手をかざす仕草を見せていて、フィーサが困惑している。

「シーニャ、何があったんだ?」
「ウニャ、アックからもらった魔法が消えて使えなくなったのだ……。アック、そこで動かずにいるのだ!」
「うん?」
「ウウウゥ~ニャッ!!」

 恐らく回復魔法を放ったのだろうが、何かが放たれた感じは無い。

「いま何かした……のかな?」
「駄目なのだ。シーニャ、何も無くなったのだ」
「デーモン族と戦ってダメージを負った感じか?」
「デーモンの攻撃は一度も当たってないのだ。それなのに知らずに魔法を奪われていたのだ……」

 特に救援は求められなかったがやはり戦闘していた。黒色扉がすでに消失している時点で、勝負自体はあっさりついたと思われるが。

「わらわがシーニャの元に駆け付けた時には、すでにデーモン族は息絶えていたなの。でもでも、シーニャが見えない影のようなものを、デーモン族に放たれていた気がするなの。それは見逃さなかったなの!」

 シーニャなら苦戦する心配は無いと思った。しかし視覚的に見えない攻撃を放たれたとなれば、話は違って来る。

「痛みは無いか? シーニャ」
「全然無いのだ! それなのに回復魔法が消えちゃってるのだ……ウニャ」

 元々シーニャには回復魔法はもちろん、魔法スキルは備わっていなかった。成長の過程で覚醒、あるいはガチャ装備の恩恵で身に着けたわけだが……。

 闇装束を与えたことでシーニャの闇属性は相当強い。それだけに、いずれ回復は使えなくなると感じていた。

 少なくとも、デーモン族との戦闘で無くなることなど考えられない。
 影の仕業か、それとも――

「問題無いぞ、シーニャ。本来のシーニャは攻撃がメイン。回復は今ではルティやミルシェがその役割を担っている。シーニャには前に出て爪を振るってもらえば、戦いがかなり有利になるしおれも助かる」

 彼女は、おれから力を与えられたと思っているからこそ落ち込んでいる。
 しかし今では戦闘の役割がほぼ決まっていて、戦いやすくなった。フィーサだけ不安定だが……。

「アックはそれでいいのだ?」
「納得出来ないかい?」
「ウゥ……アックがいいならいいのだ。ウニャッ!」

 シーニャを何とか落ち着かせることが出来た。
 問題はここからだ。帝国の皇帝に会いつつ、王国の第一王女を救う必要がある。

 宮殿の最上階に上がって行く為には、塔を登らなければならない。
 今までのダンジョンは地下遺跡以外では面倒な場所が無かっただけに、これまで以上に注意が必要だ。

「アックさま。先に進まれるのでしょう? それなら、ルティを頼ってみては?」

 意外な提案すぎる。ミルシェはルティと仲がいいが、ダンジョン攻略や移動に関しては不安を抱えることの方が強かったはず。

「……ルティを? 本気か? 君らしく無いな。いつもならミルシェが作戦を考えるのに」
「あたしばかり頼るのはあまり良くないと思いますわ。それに、アルビンの様子がおかしいことに真っ先に気付いたのはこのですわよ?」
「なぬ!? そうなのか、ルティ?」
「い、いやぁ~照れちゃいます」

 否定も無ければ嫌がってもいない。
 にわかには信じ難いが、おれの知らない間にルティにも隠れスキルが発動したのか。

 ミルシェがそう言うなら、案内役をルティにするのも手だが……。 

「それじゃあ、先頭を歩くのはルティだな!」
「駄目ですっ!」
「……ん?」

 せっかくミルシェの推薦があったのに、今までの経験があるからなのか遠慮してるようだ。

「実はそのぅ、アルビンさんの時に感じていた手ごたえが、今はあまり無くてですね~……多分進んで行けば発揮してくれるんじゃないかなぁと思いまして」
「んん?」

 照れ隠しなのか、ルティはお気に入りのリボンを撫でながら誤魔化している。
 ルティが触れた途端に色濃く見えるのは気のせいだろうか。

「イスティさま、小娘なんてそんなもんなの! ここはいつもどおりに進めばいいだけなの!!」
「そうなのだ! ドワーフの言うことを聞いてしまうと何が起きるか分からないのだ!」
「ううむ……」

 常に発動されるようなスキルじゃないとすれば厳しい。
 しかし、

「アックさま。ルティの勘が鋭くなったのは、リボンの知恵が関係していますわ」
「ドワーフリボンの知恵? そうなのか? ルティ」
「え、えへへ……そんな感じがありまして~」

 ガチャアイテムで出したからには何かがあるとはいえ、ドワーフリボンか……。
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