Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので好き勝手に生きます！

第二十章：畏怖

403.魔導書の気配

「……ふむ、なるほど」

　ルティたちの食事はミルシェに任せ、おれはアルビンと一緒に1Fに上がった。
　急いで皇帝のもとへ行くよりも、先に帝国の歴史くらいは見ておこうと思ったからだ。

「アルビン！　そっちの方にめぼしいものは？」

　許可要らずで自由に手に取れる書庫とはいえ、手分けしないと探せそうにないくらい広い場所。
　神剣フィーサの言葉を頼りに探すおれに対し、アルビンは単独で動いている。

　しかし書物が光るでも無いので、帝国について詳しく探れそうに無い。

「これといって無いな。シンザ帝国のことについてだが、ありきたりなことしか書かれていない」

　アルビンは貴族騎士として各国を自由に動き回っていた。その時初めて帝国を訪れた。ところが今回の訪問も含めて、入国した場所の記憶が定かではないらしい。

　おれたちは魔法扉から入国出来た。それなのにアルビンは全く違う場所からの入国。それを聞いている限り、やはりこの国は何かある。そうとしか思えないのが現状だ。
　
「イスティさま、少なくともここに置いてある書物からは何も感じないなの」
「やはりそうだよな。誰もが読める書物だし、そもそも帝国民しか読んでいなかったわけだしな」
「……地下ダンジョンにも書庫があるなの？」
「それは行ってみないと分からないな」

　リシェン図書館の地下には奥深いダンジョンがある。
　アルビンがそのことを知ったのは、王女を送った後に宮殿から追い出された後のことだ。

　帝国の宿や酒場を歩き、やっとの思いで聞き出せたのがリシェン図書館の存在。
　図書館の地下は危険な場所だという。それを聞いたアルビンだったが一人で向かうことは厳しい。　

　途方に暮れながら迷い歩いていたところで、おれたちに遭遇したのだとか。

「そもそも帝国の皇帝は何者だというのなの？」
「おれを味方にしたかと思えば、簡単には会わない。そんなのは厄介な者としか思えないだろ」
「全く全くなの！　神族国でもそんな面倒なことにはなっていないなの！！」

　アルビンの言うことが本当なら、たとえ宮殿に近付くことが出来ても入ることが出来ない。
　それならそこに近付けるルートで向かうしか手は無いということになる。

「あれっ？　イスティさま、この書物って……」

　腹を立てていたフィーサだったが、埃のかぶった書物に何かを感じたようだ。
　おれもそれに近付くと――

「……かつてレザンスで見た気がするな。ギルドの魔導書みたいな気配を感じる」
「ふ、触れてみるなの？」
「いや……」

　うかつに触れたら何が起きるか分からない。ひとまず拝借して持って行ってみるか。

「アック！　やはり手がかり的な書物は無いようだ。お前はどうだ？」
「……あぁ、何も無かった」
「ふむ、ならばここで時間をかける意味は無いな。地下へと急ぐことにしよう！」

　誰もが読める書架では特に何も見つけられなかった。
　ただ一つの書物を除いて。

　下のロビー階へ降りると、口元を汚したルティとシーニャが満足そうに待っていた。
　ミルシェは二人の面倒を見きれないといった表情を見せている。
　
「ウニャゥ！　アック、アック！　シーニャ、力が有り余っているのだ！　早く行くのだ」
「わたしもいつでも戦えますよぉぉ！　さぁ、アック様っ！」

　謎の魔導書のことはしばらく黙っておくとして、まずは地下へ降りてみるしか無さそうだ。

「アック。地下への階段はこっちだ！」
「……地下も自由に立ち入り出来るのか？」

　ロビー階は確かに人の出入りがある。しかし地下書庫に進もうとする人の姿は確認出来ない。
　ダンジョンの存在のことはともかく、立ち入れない何かを感じている可能性がある。

「うむ。途中まではそのようだ。話によれば立ち入り禁止の扉があるらしく、そこの番人に許可をもらう必要があるらしいぞ。なに、その時は俺が何とかしてみよう！」

　――なるほど。番人の存在があったのか。
　それなら気軽に立ち入れないのは納得だ。もっとも、地下にダンジョンがあることも帝国民には知らされていないはず。

　どの程度のダンジョンか不明だが行くしかない。

「フフフッ。また楽しくなりそうですわね、アックさま」
「まぁ、地上で面倒なちょっかいを出されるよりはいいかもな」
「そうですわね、フフッ」