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第十九章:帝国の望み
387.魔法扉を開こう! 後編
しおりを挟むフィーサの魔法剣では全く通じず、結局弾かれた。
そうなると地道に属性魔法を命中させて、反応を見るしか無いということになる。
力の加減がいまいち不明だが、得意な属性から試すしかない。
「……《フロスト》」
全属性の中で一番使って来ている氷から放ってみた。
氷の模様はすぐに反応したが、一瞬で消えてしまった。
「反応は示していますわね。ですけれど、一か所だけでは意味が無いのでは?」
「それじゃあ、水属性はミルシェに任せるから同時に撃ってくれないか」
「では合図しますわ。5……4、3……2…………1! 今ですわ!!」
威力は気にせずにミルシェの賭け声に合わせて、氷属性と水属性を同時に放つ。
六芒星の右と左に割り当てられている属性だったが、命中すると氷属性だけが長く光を放った。
水属性の光はすぐに消えてしまったようだ。
「二色でも駄目か……」
「でも威力は関係ありませんでしたわね。これなら何とかなりますわ!」
「うーん」
「あたしは水と闇、氷もかろうじて出せますわ。アックさまは全てですし、試せばいけるかと」
帝国へは魔法を撃てば行けると聞いていた。
だがそうじゃなく、まるでこちらの魔法を試すかのような真似をされている感じだ。
「何で氷属性だけ長く光ったんだろうな……」
「試しにあたしが氷と水を同時に撃ちますわ!」
威力に関係無い属性なのは確かのようなので、もう一度ミルシェだけに撃ってもらった。
すると、二色とも長く光ってみせた。
「んん? これはもしかして……」
この魔法扉を開くには、誰かと協力してはならない仕掛けのような気がする。
そうなるとミルシェでは扉を開くことが出来ない。
「ウニャ~何を遊んでいるのだ? 待ちくたびれたのだ」
「本当ですよ! アック様もミルシェさんも楽しそうじゃないですか!」
答えが出そうなところで、シーニャとルティが近寄って来た。
魔法を放てない彼女たちがいても、どうすることも出来ないわけだが。
(待てよ……そういえば)
ここでガチャで出したアイテムのことを思い出した。
ほとんどルティに総取りされてしまっていたが、その中に何か使えそうなものがあった気がする。
「ルティ。おれがガチャで出したアイテムはどうした?」
「はぇ? 草はすでに使いましたし、リボンはご覧の通り身につけてますよ! どうですかっ?」
機嫌良さそうにして、くるりと回転して見せた。
ドワーフのリボンというだけあって、全く違和感が無い。
「似合ってるな」
元々赤髪のルティに似合いそうだと思っていた。
これは誉め言葉しか出ない。
「えへへへ……」
「それはともかくだ。他にも出たアイテムがあっただろ? それはどこにやった?」
「あー……ミルシェさんにあげるのをすっかり忘れてました」
そう言いながら、ルティは精霊結晶の塊をミルシェに手渡した。
「あら? これは宝石……違うわね。結晶の塊なのね。でもこれは使えそうに無いわね」
「ええぇ? 綺麗なのにいらないんですか~?」
「いくら綺麗でもこれは別物なのよ。宝石とは違う別の……あぁ、アックさまならもしかして」
ルティから渡された精霊結晶を手にしたミルシェだったが、彼女が求めるものでは無かったらしい。
そしてそれを持ったミルシェがおれの元に持って来る。
「これをおれに?」
ミルシェは何の戸惑いも無く、確信めいた表情で結晶を渡して来た。
「ふふっ、あたしたちは属性魔法にこだわり過ぎていたのかもしれませんわね」
「魔法の扉を開ける条件……あぁ、なるほど」
「あたしではさすがに精霊の言うことを聞かせられませんけれど、アックさまであればきっと……」
魔法扉の解錠条件は属性魔法によるものでは無かった。
てっきりそうなのだと、勝手に思い込んでいただけだったようだ。
「ウニャ? どうするのだ?」
気になって近くに来てくれたシーニャたちだが、もう一度離れてもらうことにした。
精霊が相手となると、何が起きるか分からないからだ。
「ミルシェはふてくされてるフィーサを連れて、ルティたちの所に行ってくれ」
「分かりましたわ」
考えてみれば、レアガチャが何の意味も無いアイテムを出すはずが無いわけで。
それがまさにこれに使うものだったとは。
精霊結晶の塊を両手で抱えながら、そこに魔力を注ぐ。
――すると結晶に封じられていた精霊たちが、おれの目の前に顕現してみせた。
精霊たちは六芒星のそれぞれの属性に向かって、吸い込まれるようにして扉に収まった。
その直後だ――
六芒星を示していた扉が音も無く消え、同時にどこかに繋がるトンネルを現わしていた。
「……精霊魔法だったのか。しかもおれの魔力を使わせるとはな……」
ガチャアイテムが重要だとは正直思わなかった。
しかしこれでまた、ガチャを活用することになりそうだ。
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