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第十九章:帝国の望み
386.魔法扉を開こう! 前編
しおりを挟むシンザ帝国に繋がっているとされる魔法扉。
その扉の前でミルシェとフィーサ、そしておれを含めた三人が揃って頭を悩ませている。
「うーんうーん……どう見ても属性ごとに分かれている感じがするなの」
「そうかしら? そんな単純なものには見えないわね。アックさまはどう思います?」
ルティの力をいとも簡単に弾いた魔法扉は、固く閉ざされたままだ。
扉の表面には六芒星の模様が浮かび上がっている。
六芒星の箇所には青白赤黒……といった色が分かれていて、どうやらそこに向けて対応する属性を当てればいいだけみたいだ。
しかしそんな単純な扉なはずが無いとミルシェが訴えていて、なかなか魔法を撃つ段階になっていない。そんな状況を知らず、ルティとシーニャがずっと声援を送ってくれているわけだが。
「とりあえずミルシェ。水属性を当ててみてくれないか?」
「分かりましたわ。それでは……」
水属性に対応しているとされる箇所に向けて、ミルシェが魔法を放つ。
魔法が命中し、じゅぅっ、とした音と同時に扉が反応を示した。
だがそれだけでは不足ということなのか、反応を示した水属性の模様は何も変化していない。
「だから言ったなの。魔法を撃つだけならわらわにだって出来るなの!」
「文句はあたしにじゃなくて、アックさまに言えば?」
「イスティさまは指示を出しただけなの。年増はそれを単純にしただけに過ぎないなの」
「小娘は屁理屈だけ並べて、実は何も分かっていないんじゃなくて?」
魔力感知に優れているフィーサがあまりにも慎重だ。
ミルシェが放った魔法が反応したということは、間違いでは無いはず。
色々試すしか無さそうだが……。
「まぁまぁ。フィーサ、君はどう思ってるんだ?」
「各属性に当てても反応が無いのは明らかなの。きっとこれは、魔法の威力が関係しているなの。年増のような中途半端な魔力ではどうしようもないなの」
「何ですって!?」
属性の威力だとしたら、どの程度の威力で正解なのか。
「フィーサ。魔法剣で扉を斬りつけてみてくれないか?」
「それはいいけど、属性はどうするなの?」
「内在してる属性は全てだろ? それで試してくれ」
「わ、分かったなの」
魔法剣として攻撃するなら、属性ごとの威力を試す必要は無い。
フィーサの剣としての攻撃力は属性で変わるわけでは無いからだ。
「よし、やってくれ」
「い、行くなのっ……!!」
魔法剣としてどれくらい威力があるのか見たことが無い。
それを確かめつつ、物理攻撃が無効なのかも確かめる必要があった。
バシュッ、とした斬り込みの音が響く。
しかし魔法扉に斬り込んだフィーサの動きが止まっている。
「……あら? 小娘が震えていますわね。アックさま、様子を見られては?」
「ん?」
ミルシェが気にしているようなので、フィーサに近付き声をかけた。
すると、そこから聞こえて来たのはフィーサの嗚咽だった。
「――ひっく……ひぅっ……い、痛いなの。痺れと同時に痛みが襲って来たなの……」
「だ、大丈夫か?」
「何にも反応しないどころか、魔法剣として何の意味も……ひぐっ……」
「ご、ごめんな」
魔法剣はやはり物理扱いのようだ。
そうなると純粋に属性魔法で開くしか無いということになる。
「……アックさま、どうされます?」
「そ、そうだな……」
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