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第十八章:遺物の導き
351.暗礁域の影 1
しおりを挟む「シーニャ、思いきり行けっ!」
「ウニャ!」
ダークエルフたちの言葉通り、奥底の道から別の場所に進んだ所に薄暗い海が姿を現わした。
想像以上に暗く、陰気漂う空間だった。
ダンジョンの地下から暗礁に繋がっているとは驚きだったが、出口に近付いているのは確かなようだ。
今が昼なのか夜なのか定かじゃないが、辺りはとても暗く視界は良くない。
そんなおれたちの存在に気付いたのか、アンデッド軍団はすぐに襲って来た。
シーニャに対し特に何の命令も出していないが、彼女は本能のままに自前の爪で攻撃を繰り出す。
斬属性の爪は使わず、向かって来る骸骨に向けて上下左右と爪で切り刻んでいるようだ。
アンデッド軍団の大部分は、あまり強そうに見えない片手棍だけを手にしている。
だがどんな敵でも油断は出来ない。
そういう意味でも、すぐにサーチスキルを発動させた。
「【ダーク・サーヴァントLv.-- 弱点:打属性 特性:闇装備に執着する】か。レベルはともかく、シーニャの敵じゃないな」
「アック様、何がです~?」
「あぁ、あの骸骨軍団の強さを見てた。ルティも戦うか?」
「いえいえ、シーニャに全て任せますよ~。張り切っているところにお邪魔したくないです」
ルティの言葉を聞く限りでは、以前とは全く違う感じだ。
落ち着いたというべきだろうか。
「それもそうか」
ルティと一緒にシーニャの奮闘ぶりを眺めていると、次第にシーニャが遠ざかっていくことに気付く。
どうやら幸先よく骸骨を減らしながら先へ進んでいるようだ。
おれたちもそれに続き、シーニャの後を追う。
「あれれ? アック様。シーニャの背後に骸骨の背中が見えますよ? 切り刻んで倒しているはずじゃ?」
「――ん?」
ルティの言うとおり、倒したはずの骸骨がシーニャの背後に復活している。
アンデッドなだけに完全に消滅させないと駄目ということだろうか。
それに気付いていないのか、シーニャの甲高い攻撃音が連続して聞こえて来る。
「ウゥゥ!! ウニャゥッ!」
背後の骸骨はともかく、その前方からは爪による金属音とともに激しい火花が見えた。
シーニャの前方にどれくらいいるか見えないが、攻撃は通じているようだ。
彼女の後ろを追うにつれ、次第に周辺の景色が鮮明になり出す。
「アック様。何だかここって、遺跡にあった墓場のような感じじゃないですか?」
「墓場か。確かにそんな感じだな」
「家の形はあんまり崩れていないけど、ダークエルフさんたちはここには住めなくなっちゃったんですかねぇ~」
辺り一帯には、かつてここにダークエルフが暮らしていたとされる家々があった。
そのほとんどは朽ちたように見えるものの、家の形のほとんどは崩れていない。
家のすぐ脇には漁で使われていたような小船があり、しかも家同士を繋ぐ橋のような放置のされ方をしている。
アンデッド軍団がどこから来たかによるが、ダークエルフに代わって占領したようだ。
「――と、ルティ。すぐ目の前の骸骨に突っ込むぞ!」
シーニャの姿は間近に無く、向かって来る敵を次々と倒しながら進んでいる。
分かりやすいことに倒された骸骨がまた復活をして、シーニャを追尾している感じだ。
「わたしが殴っていいんですかっ?」
「もちろんだ。好きなだけ暴れていい」
「ではではっ! アック様、置いて行かれないようにしっかりついて来てくださいっ!」
「ああ、ついて行く」
シーニャの姿は確認出来なくなっているが、体力的なことも含めて心配はしていない。
しかし倒してもすぐに復活する骸骨のことが気になる。
とりあえずは、ルティの"殴り"に注目して進むしか無さそうだ。
「とおおぉぉぉぉっ!!」
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