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第十八章:遺物の導き

348.ダークエルフと害敵抹殺の願い

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「いかにもおれは人間だが、お前たちはダークエルフか?」

 おれの真正面に立っているシーニャを気にすることなく、彼らはおれだけに注目している。
 すぐ傍にルティがいるが、彼女のことも見ていないようにみえる。

 軽く頷いているように見えたが、ダークエルフで違い無いらしい。

「魔剣持ちの人間……魔を運んで来たか? それとも、抹殺する者か?」

 いやに視線を集めているかと思えば、腰にぶら下げた魔剣ルストを気にしていたようだ。
 一方的な質問をされているし、こちらからの話が通じそうに見えない。

 そうなるとシーニャを動かすのも手段ではあるが――

「ウウゥ……! ウ、ウニャ? かかって来ないのだ?」
「……闇の眷属に用は無い」
「ウニャ?」

 構えを見せるシーニャを通り過ぎて、ダークエルフの何人かがおれの前まで近づいて来る。
 どうやら狙いは完全に魔剣だけのようだ。

「そのまま待機しててくれ、シーニャ」

 奴らからは明確な戦意が見えて来ない。
 しかしこっちのわずかな動作や気配の変化に、かなり神経を研ぎ澄ましている感じがする。

「アック様、アック様。魔剣のことを聞いているみたいですよ? お答えしてみてはどうですか~?」
「……魔剣しか見えていないし、そうするか。ルティもそこで大人しくしててくれよ」
「はいっ」

 魔剣が気になるようだし、まずは話し合ってみるしかない。
 そう思っている内に、数人のダークエルフが正面に立ちふさがった。

「答えろ、人間!」

 襲って来る気配が無いとはいえ、おれの正面とシーニャの正面。
 下手をすれば、いつでも挟撃される位置を取られた状況にある。

 嘘も言い訳も通用しなさそうなので、正直に答えるしか無さそうだ。

「おれたちは通りすがりの冒険者だ。ここに迷い込んで来ただけで、害を加えるつもりは無い。もちろん、お目当ての魔剣を使うことも無い」

 魔剣という言葉に反応を見せたようだが、まだ警戒心は解かれていない。
 しかし――

「…………人間に願う。が方の域の先、不吉の影があり域の砦に戻ること叶わぬ。影は我が方にとって害敵であり、わずかの油断を誘ってはならぬもの。抹殺の願いを聞き入れるならば、"ビルイム"ダンジョンへ導く」

 もしかして、ダークエルフたちの依頼ということになるのだろうか。
 分かりづらい話だが、次のダンジョンへ導くということはそういう意味に違いない。

「抹殺じゃなくても、害敵を取り除けばいいんだろう?」
「……その通りだ、人間」
「おれの名はアックだ。願いを受ける以上、そちらも名を預けてくれ」

 目の前に立っているダークエルフは、男が二人と女が一人。

 おれの言葉に顔を見合わせて、相談を始めたようだ。しかし表情をほとんど変えないので、どういう感情かまでは分かりづらい。

 シーニャとルティが息を殺している中、シーニャ側のダークエルフたちもまるで微動だにしない。
 様子を見るからに、やむを得ずこの場所に留まっているような感じか。

 しばらくして話し合いを終えたのか、女のダークエルフが間近に近付いて来た。
 白っぽいグレーの髪に、尖がった耳と着ている服。誰の姿を見ても、全身闇の衣をまとっている。

 闇を感じさえしなければ、サンフィアによく似ている感じだ。

「人間、アック……影を消すことを誓え。その後、我が方の域を過ぎ、通り抜くことを許す」
「影が何なのか分からないが、お前たちの脅威を取り除くことを誓う。これでいいか? えーと……」
「……我が方の名は、ルミカ・リオング。首長の名において、アックに願う」
「首長! なるほど、数少ない女のダークエルフにして首長だったとはな」

 リオングという名は、このダンジョンの水路の名と同じだ。
 ――つまり、古くから水路を狩場としている種族という意味に違いない。

 しかし魔物を避けて進むつもりが、結局こうなるのか。
 何にしても、これをやらないと外に出られそうに無いしやるしかない。
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