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第十八章:遺物の導き
347.リオング水路 ④ ダークエルフ遭遇路
しおりを挟む二つ目の遺物を見つけたこともあり、おれたちは下流に向かっている。
上流の小屋は役目を終えたと言わんばかりに、影も形も無くなっていた。
「はわあぁぁ……!! わたしが出た途端、小屋が亡霊さんごと消えちゃいましたねぇ」
「ルティが装備してる腕輪が外に出たからだろうな」
「はぇ? じゃ、じゃあ、わたしが外に出ちゃったせいですか!?」
「いや、どのみち変わらなかったと思うぞ。だから気にしなくてもいい」
エラトラリングは移動魔法が使える腕輪だ。
しかしジオラスから去り際に言われたことが気になり、おれではなくルティに預けている。
最初の首輪もそうだが魔力がある者が装備していると、あまり良くないことが起きるという話だった。
すぐ使う分にはいいらしいが、ずっと持つと悪さを働くらしい。
それもあって、魔力の無いルティに装備させているというのが現状だ。
少なくともルティの様子を見ている限りは、何も問題が無さそうではある。
しばらくして、おれたちは上流から下流の水路にたどり着いた。
そこからさらに進むと、今まで遭遇しなかった魔物の気配を感じるようになった。
しかしその気配を真っ先に感じているのは、おれではなくシーニャだ。
「ウウニャ! アック、ダークスライムがたくさん見えるのだ!」
どうやらガチャで出したダークネス装備のスキルに、魔物探知がついていたようだ。
それも丁度良く、闇属性に特化しているものらしい。
「ダークスライムか……影のダンジョンだけあって、それ系の魔物がいるってことか。厄介だな」
「どうするのだ? スライムを倒しながら進むのだ?」
「……一本道だったらそうするしか無かったが、水路が分岐してるし避けて進もう」
「分かったのだ! シーニャ、もっといい水路見つける。前に出るのだ、ウニャッ!」
魔法制限があることを踏まえて、無理に戦闘をする必要は無いと判断。
しかもこれまで進んで来た水路と違い、水路が何本かに分岐するようになったのも理由の一つだ。
魔物を倒すのは、しつこい連中よりも簡単ではある。
しかし魔物はキリが無く湧く場合が多いので、うかつに手を出さない方がいいだろう。
「アック様。魔石って確か、魔物から出るんじゃなかったでしたっけ?」
「そういえばそうだな」
「それなら魔物を倒して、魔石をもっと得るのはどうですかっ?」
「……ん?」
現状手持ちの魔石は、サンフィアを除いた彼女たち専用魔石と、レアガチャをする魔石のみ。
――とはいえ、ガチャをするには足りているので、増やすつもりはなかった。
それによほどハイランクの魔物でない限り、レアな魔石を得られることが無いことも関係している。
「そのぅ、アック様……わたしも欲しいです~」
「何を?」
「シーニャばかり、ズルいじゃないですかぁ~! わたしも真新しい装備を着てみたいですよぉぉ」
「装備の方か。それだったら別に新しい魔石は必要無いだろ」
「専用魔石じゃない魔石で、もしかしたら変わったものが出るかもしれないじゃないですか! だからアック様、お願いしますです~」
シーニャの闇系装備は彼女専用の魔石を使わずに、レア魔石で出している。
場所や状況に応じた結果がそうだったわけだが。
「しかしルティが着ているメイドエプロンは、初期に比べればかなり性能がいいんだぞ? それじゃあ嫌なのか?」
「嫌じゃないです。でも、たまには違うものを着てみたいなぁと……」
変わった装備に違う魔石を加えるとなると、手強そうな魔物を探す必要がある。
ミルシェたちと合流あるいは、その間にそういう魔物に遭遇出来るかどうか。
「……まぁ、そうだな。魔石が見つからなくても、もう少ししたら出すから。それまで我慢してくれ」
「はいっっ! もちろんです!!」
「代わりといってはアレだけど、ルティ」
「はい? はひゃぁぁぁ!? ア、アァァァ……アック様?」
「なでなでだ。今はそれで我慢だ」
特にあげる物が無かったので、ルティの頭をなでなでするしか無かった。
その効果があったようで、ようやく大人しくなってくれた。
「アック、アック!! 変なのがたくさん群がっているのだ!」
ルティを大人しくさせたところで、前の方にいるシーニャが声を上げている。
また魔物だろうか。
「すぐ行くから、そこで待ってるんだぞ、シーニャ!」
今までは、細長くて浅い水の流れの水路を歩いて来た。
しかしシーニャが声を上げた所に行くと、そこに見えた光景はまるで異なるものだった。
「流れが止まっているのか……?」
「はぇぇ、おっきい水たまりのような部屋ですねぇ」
そして肝心のシーニャは、得体の知れない黒い集団の前で戦闘態勢を取っているようだ。
「ウウゥゥ……!」
「シーニャ! 待った。おれが話をしてみるから、そのままだぞ」
「ウウニャ」
よくよく見ると、サンフィアに似たエルフ族のような風貌をしている。
しかし血が通っていないような鋭い目つきと、全身から感じる闇はただ事じゃない。
もしかして、ダークエルフというやつだろうか。
「獣人と……人間? 人間、何用でここに来た?」
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