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第十八章:遺物の導き

344.ハーフドワーフの願い

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「ウニャ~!! 真っ黒なのだ~!」
「暗黒系に属した装備になったが、気に入ったか?」
「ウニャッ!」

 【ダークネスハット】【ダークネスコート】
 【ダークネスグローブ】【ダークネススロップス】【ダークネスソルレット】

 久しぶりにガチャで装備を出した。
 影や闇に属するダンジョンということもあったが、見事に闇系の装備一式となった。

 今までと違うのは、虎耳を隠すことの出来る帽子をかぶることが可能になったくらい。
 装備一式が出た時点で、今まで来ていた装備がまるまる交換されたようで、着替えの手間が省けられた。

 装備の性能や強さに関しては、ガチャをした時点では見えない状態だ。
 しかし見た目だけで判断すれば、相手を畏怖させる雰囲気は感じられる。

 もっとも、シーニャ本人は回復が使える近接戦闘タイプ。
 装備一式が暗黒系だからといって、それに染まるわけではないはず。

「それじゃあ、そろそろルティを呼ぶとしようか」
「ウニャ! シーニャが開けるのだ!」
「ああ、いいぞ」

 一新された装備で気をよくしたようで、シーニャは張り切りながら小屋の扉に手をかけた。
 しかし――

「フギャニャッ!?」

 シーニャが開けようとすると、彼女の手が弾かれて痺れを感じたようだ。
 さすがに装備とは無関係のはずだが、シーニャを拒んでいるように思える。

「大丈夫か?」
「お、おかしいのだ。何も見えないところから弾かれたのだ……ウウニャ」
「それならここはおれが開けるしかないみたいだな。シーニャは少し下がって」
「分かったのだ」

 シーニャを下がらせ、今度はおれが扉に近付く。
 小屋の中のルティのことも気になるので、勢いよく扉を開けることにした。

「開けるぞっ!! てりゃっ――って、あれっ?」

 基本的にどんな抵抗も問題無いはずなので、勢いに任せて扉に触れた。
 それなのに、特に何の違和感もなくあっさりと扉を開けてしまった。

 小屋の中にいたルティらしき人影も、意表を突かれたのか驚いてのけ反っている。

「ウニャニャ!? あっさり開いたのだ……さすがアックなのだ~!」
「……何も起きなかったっていうのも、妙だな」
「何でもいいのだ。早くドワーフに説教をするのだ! ウニャ」

 小屋の中に入ると、すぐにルティがいた。
 何をしていたでも無いようで、床に座ってくつろいでいたらしい。

「あれれれ!? アック様? それに、その真っ黒な姿は……シーニャ? ええっ?」

 ジオラスが小屋にいた時も不思議な感じがあった。
 そしてルティもまた、何かの力によって守られている気がしてならない。

「ずっと一人だったのか? ルティ」
「それはそうですよぉぉ! だって、シーニャは中に入って来てもくれなかったんですから!!」
「ウニャ……入ろうとしても入れなかったのだ」
「ええ? 鍵なんてかけてもいないし、そもそも鍵は無いのに……不思議なことがあるものですねえ」

 考えられる可能性としては、恐らく――

「ルティ。このエラトラリングを腕に着けてみろ」
「はぇ? アック様の腕輪じゃないですか~! わたしが着けていいんですか?」
「ああ」
「で、ではでは」
「…………ウニャ?」

 ひとまず使うことが無いということもあり、腕輪もルティに渡すことにした。
 おれから受け取ったルティは、嬉しそうに着けている。

 すると突然ルティの目の前に、ぼんやりと光を放ったドワーフに似た女性が姿を現わした。
 やはりここの小屋は、遺物を着けた者しか入ることが出来ない場所だったようだ。

「か、母様!? うんん? だ、誰ですか?」

 一瞬ルティの母親であるルシナさんに見えたが、ルティと同じくハーフドワーフのようにも見える。
 イグニスダンジョンで出会ったドワーフの言葉通りということか。

「【封じらせし遺物を持つ同族の者よ……闇の魔物たちを消し、……囚われの遺物を探し……その手で……願い……ます】」

 ルティに対し言い放ったハーフドワーフの女性は、いつの間にかいなくなっていた。
 放っていた言葉は、おれとシーニャにも聞こえた。

 断片的ではあるが、どうやら遺物を探して封じろというメッセージだったようだ。
 すでにここのダンジョンの遺物は手にしているが、魔物を消す必要があるという意味に違いない。

「消えたのだ……何だったのだ?」
「ア、アック様、もしかしてあの人って、亡霊の……」
「そういうことみたいだな」
「ひ、ひぃぃええぇぇぇぇ!? 亡霊さんと話をしちゃいましたぁぁぁぁ!!」

 女性だったこともあって、不思議と怖さは感じなかった。
 何とも言えないが、遺跡群のダンジョンは単なる寄り道で済むようなダンジョンじゃないということか。

 そう考えるとザームの連中は、何かの強力な遺物狙いで来ているということになる。
 
「封じなければならない遺物……か」
「どうするのだ、アック?」
「ここにはもう用は無いし、ミルシェたちを探して合流を目指すぞ」
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