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第十七章:遺跡群
338.アンブラダンジョン リオング水路 ①
しおりを挟む「よーしよしよし……大人しくしてるんだぞ」
「フニャウゥ……くすぐったいのだ」
ルティたちには、遺跡の入口とされる石扉の前で待機してもらっている。
シーニャの警戒心を解くために必要なことだ。
――この動きは止めるわけには行かない。
石柱にシーニャを呼んで彼女を近付けさせると、石柱が僅かながらに反応した。
しかしそれだけでは、丘の下にあった石扉は動く気配を見せていない。
そこで石板に付けられていた跡を見て出した答えが、シーニャの尻尾もしくは体を使うことだった。
その為にもシーニャの機嫌取りをする必要があり、今は彼女を必死になでなでしている。
そして――
「シーニャにやって欲しいことがあるが、聞いてくれるか?」
「ウニャ? 何なのだ?」
「……そこの石板に全身をこすりつけて欲しい! 出来れば耳と尻尾を念入りに……」
「ウウニャ!?」
彼女は意味の無い行動を嫌う。
それだけに機嫌を良くする必要があった。
「シーニャじゃないと出来ないことなんだよ。だからいいかい?」
「爪で傷をつけるのは駄目なのだ?」
「残念なことに、それは鍵じゃないな。闇もしくは、影の力を有する獣の力が必要なんだよ」
火屬性の遺跡の鍵は、ルティが殴ることで解錠された。
それだけに簡単だったわけだが。
今回の屬性は闇もしくは影になる。
仕掛けを施したのは獣人らしく、マーキングをしたかのような跡があった。
それが意味していたのが、まさに獣による這いずり、または擦りつけということになる。
ダンジョン突入の条件としては、特殊といっていい。
「ウ、ウニャ~ニャウゥ……」
なでなでによる効果もあって、シーニャは渋々ながら石板に全身をこすりつけた。
するとルティたちの騒ぐ声とともに、何かが開いた音がした。
どうやら石扉が開いたようだ。
「よし! これで入れる!」
「…………アック」
「どうした?」
「全身がヒリヒリするのだ。もう一度、撫でて欲しいのだ」
石板に全身をこすりつける行為はさすがに嫌なものだったらしい。
ということで、シーニャが満足するまで思いきりなでなでしまくった。
ルティやフィーサのヤキモチが注がれるかと思っていたが、解錠条件が微妙なだけに特に何も言われなかった。
「フン、闇のダンジョンとやらがここなのか?」
「屬性的にはそうなるな」
「どうせ大したことの無い魔物が現れるのだろう? アック! 貴様、いつまで戯れるつもりだ?」
遺跡のダンジョンでいつまでも遊ぶつもりは無い。
しかし、目的であるジオラスに会えていないばかりでなく、遺物にも出会えていないのが現状だ。
ザームの連中も面倒ではあるが、どのみち戦う運命である以上、やるしかない。
「何だ、サンフィアは帰りたくなったのか?」
「……フン、バカめ」
素直になれないのか、サンフィアは機嫌を良くして先の方に進んでしまった。戦力としては未知数なものだが、精霊の力を使えるようになったのはデカい。
しばらく広い空間を進むと、アンブラダンジョンという名のルーンが見えて来た。
ダンジョンゲートを開いて何も考えずに足を進めると、滝つぼが目の前に現れた。
突然のことではあるが、ここに飛び込まなければ進めないらしい。
ダンジョンに入ると屬性の制限がかかるが、その前に体を濡らすことになりそうだ。
「――では、アックさま。お先に……」
「全く、何故我がこんな目に」
「水は嫌なの~でもでも行くしかないなの」
――などなど、文句を言いながらミルシェたちが滝つぼに飛び込んで行く。
そして問題は水を嫌がるシーニャと、泳ぐことにトラウマがあるルティだけだ。
「どうしても行かなきゃ駄目ですか~?」
「嫌なのだ、入りたく無いのだ」
「うーん……参ったな」
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