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第十七章:遺跡群

335.急襲の討伐者 後編

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「あ~あ、それにしても討伐相手が純粋な魔術師じゃない奴になるとは、がっかりだぜ……」
「何? どういう意味だ?」
「その魔剣も、どうせ命中が低いシロモノだろ? 見ただけで分かるぜ! 威力も何もねえ。魔法剣で多少マシになる程度だ。つまりてめえは魔法剣に頼る野郎だ」

 明らかに実力差があるのにもかかわらず、リュグナーというおっさんは余裕を見せている。
 遺跡出口を気にしているようで、さっさと終わらせたいらしい。

「まぁ、間違ってないかもな。ところで、随分外を気にしているようだが?」
「さっきの水の防御魔法を使った女! アレを真っ先に討伐すりゃあ、報酬が上がっただろうからな! さっさとてめえをぶっ倒して、外にいる女どもをやりてぇだけだ!」 

 ミルシェのことを言っているようだ。
 しかしこんな奴にやられるほど、ミルシェは弱くない。

 ――とはいえ、この男を逃してしまえば後々面倒なことになるのは明白か。

「なるほど。要するに、今まで魔法を使う奴を確実に消して来たってわけか」
「ハハハッ! 特に女の冒険者は確実にな! 始末する時の悲鳴が何とも言えねえくらい、快感なんでな!」

 少しは話が出来る奴かと思っていたが、この男の所業は褒められたものじゃないようだ。
 こういう輩には魔法を使って消すべきだろう。

「……最低な野郎だな」
「女で魔法をぶっ放す奴の強さなんざ、たかが知れてるからな! このオレが持つ"ハンティングソード"にかかれば、どんな奴も……ククッ、始末するのはやめられねえな」

 こんな中途半端な奴には魔剣ルストで――とも思っていたが、あえて魔法で片付ける。
 デバフ効果の剣に自信を持っていて面倒だ。

「ご自慢の剣は、魔法効果を打ち消すんだったか?」
「――ったりめえだろ? どんな魔法が来ても無駄だ! もっとも、てめえのような物理系の魔剣持ちに話したところで何の意味も……」

 魔剣ルストに対し、物理攻撃しか出来ないと思われているようだ。
 確かに、今までは敵の武器を吸収だけさせて来た。

 だがフィーサと似た剣には違いないとなれば、試してみる価値はある。
 物は試しだ。

 そう思いながら魔剣ルストに対し、指をなぞらせて攻撃魔法系の魔法文字ルーンを与えてみた。
 すると――

 リュグナーの眼前に、雷属性の衝撃が起きた。
 それこそ、鼻先数センチの距離に対して。

「ぬおわっ!? な、何だ!? いま何が起こった……?」
「雷をあんたの正面に落とした。痺れさせたなら謝るが?」
「ハハッ! もしかして、魔法が使えんのか? 若干の焦げ臭さを感じたが、大した威力じゃねえな!」
「……本当にそう思うか?」
「てめえの半端な魔法なんざ、怖くもねえな」

 魔剣がルーンに反応してくれたことが分かっただけで、こいつの始末の仕方が決まった。
 単純に魔法発動だけでも消すことは可能だが、やはり魔剣を使って消すことにする。

「――それじゃあ、半端な魔法を帯びた魔剣を喰らってもらっても構わないか?」
「ああ、いいとも! どうせさっきみたいに鼻先を焦がすだけの魔法だろ? そんなもんは、いくらでも喰らってやるよ! バフの持続効果を保とうが、そんなのは無駄だからな」

 魔剣ルストの使い方が何となく分かった。
 魔法をエンチャントさせて攻撃するフィーサとは、まるで異なる仕様だ。

 魔石ガチャの時に見えるルーンをルストに与えると、それが顕現化する。
 その威力は神剣のフィーサと違い、禍々しさを相手に残す。

 ルーンが発動したルストに斬られれば――とにかく、試しとしては最適な相手だ。

「ほれ、どうしたぁ~? てめえの半端な魔法力を付与させて、このオレを斬ってみな! すぐにデバフが発動するんだけどな!」

 お試しで放った雷属性の威力で、すっかり舐め切っているらしい。
 こちらとしても好都合だ。

「――それなら、遠慮なく」

 遠慮なく破滅系魔法を魔剣に与えて、そのまま奴に振り下ろした。

「あっあああぁぁ……な、何!? て、てめぇ、何の……魔法を付与……さ――あがぁぁっ!?」

 魔法が効かないことを謳っていたリュグナーは、避けることなく攻撃を手で受け止めた。
 確かにルストの命中は良くなかったが――

 その効果はすぐに表れた。

「《ディナイアル・エンド》だ。この魔剣に斬られたあんたは、その存在を否定された。デバフ効果付きの剣を持っていようが、魔剣ルストには敵わない」
「――っあ、あぁぁ…………」
「……外に出たかったんだろ? 良かったな、異空間に出られて」
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