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第十七章:遺跡群

334.急襲の討伐者 中編

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「――てぇわけだ! オレのような討伐者の手にかかることを、光栄に思うことだな!」

 リュグナーと名乗った自称おっさんの長話がようやく終わった。
 話によるとザーム共和国ではランクが高い者に、デバフ効果付きの武器が支給されるとのこと。

 奴らのほとんどがAランク程度で、しかも腐るほどいるようだ。
 その武器はレイウルムから買った武器で、細工して持たせているということらしい。

 魔導士だけは別扱いらしく、魔導士は実力主義で精鋭しかいない。
 ――というわりには、大した強さを感じられないわけだが。

「つまり、あんたも雇われの傭兵ってことだな?」
「まぁな。ザーム共和国出身なんて奴は見た事ねえぜ! こっちとしちゃあ、報酬さえもらえりゃあいいんだ」
「……長々と内情を話してくれてすまなかったな。おかげで何となく分かった」
「よぉーし、そんじゃあそろそろ覚悟しとけよ? 魔術師には悪いが、これも仕事だ」

 魔術師と名乗った覚えは無いが、一部で伝わっているようだ。
 むしろ武器だけで攻撃して来る相手の方が、やりやすい。

「あぁ、いつでもかかって来て構わない。どうせ、無駄だろうから」

 魔法相手には相当な自信を持っているのだろうが、使わなくても余裕すぎる。
 ミルシェたちを念の為出口側に下がらせたのは杞憂かもしれない。

「ほざくな、ガキが!! これでも喰らえ!」

 ミルシェに向けて短剣を投げて来た時と同様に、奴は手持ちの武器を投げつけて来ている。
 攻撃タイプは投てきによるダメージ狙いで、近接戦闘はして来ないらしい。

 防御魔法を何も展開していないせいか、ただのナイフが単純に飛んで来るだけのようだ。

「どうよ? どんなに強固な防御魔法だろうが、オレの武器をもってすれば――」
「どうって言われてもな……」
「防御魔法を破られれば、ダメージが行くんじゃないのか!?」
「そんなわけないだろ。おっさん、あんた騙されてるよ……」

 そもそも防御魔法を展開していないわけだが。
 楽して投てき攻撃して来られても、こっちもどうすればいいのか困る。

「ああ、くそっ! しょうがねえ、魔術師相手に近接戦闘なんて性に合わねえが、勝負をつけねえとな。行くぞ!!」

 一応、律儀的なものは備わっていたらしい。

「ぬおおおおおお!!!」

 短剣を投げつけるのをやめて、リュグナーが突っ込んで来る。
 両手で短剣を持ち、ほぼ捨て身の体勢だ。

 地面すれすれにまで全身を屈め、低空飛行の如く一直線に駆けて来る。
 こんな攻撃をして来る敵は初めてだ。

「これならどうだーー!! ぬおあああああ!」
「……まぁ、こんなもんだよな」
「なにぃぃぃ!? のわぁっ!?」

 奴はおれの足元をめがけて短剣を突いて来た。
 しかし攻撃はあっさりとはね返り、奴は地面に倒れしりもちをついた。

 武器そのものにデバフ効果があろうと、制限下でない限り近接物理ではほぼノーダメージになる。
 それに武器による攻撃は魔剣ルストにとって、ご飯にありつける時間にしか過ぎない。

「アックさま! 外の様子が気になりますわ! あたしたちは先に出ますわよ?」
「あうぅ~、アック様のご勇姿がぁぁ~」

 悲しがるルティを引っ張って、ミルシェは外へ出て行った。
 ――とはいえ、こちらはすでに勝負が決してはいるのだが。
 
「討伐者だか何だか知らないが、そんなもんなのか? それとも何か秘策でも?」
「ふっ……ふっふっふ! てめぇがパッシブスキル持ちなのも聞いてんぜ? そんで、とことん甘ぇガキってこともな! 殺さずの戦いを繰り返してるらしいが、そんなんじゃいつまで経っても敵が減りはしねえ」

 そういうつもりは無かったが、ミルシェたちもいなくなったことだ。
 別のやり方でこのおっさんを消すことにする。
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