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第十七章:遺跡群
329.彼女たちの密かな連携
しおりを挟む「ちょっとルティ! アックさまたちが追い付いて来ないのだけれど?」
「えええ? でもでも、こっちも今はそれどころじゃないですよぉぉ!」
「――その通りなのだけど、まぁいいわ。後で追い付いて来るでしょ。獣娘もついていることだし、何も心配する必要なんて無いわね」
アックとシーニャが後ろの方で戦っていた頃、ルティたちの方でも戦いが始まっていた。
その相手はアックが予想していたとおり、火属性の魔物だった。
しかも、次から次へと連なって襲って来る。
ルティは初め、仲が悪くても一緒に戦ってくれるフィーサとともに、調子良く敵を片付けまくっていた。
しかし、それはあくまで単体の敵に限るものであり、集団で来る相手には追い付かなかった。
ミルシェは元々ルティに対し好感度が高かったこともあって、支援魔法でバックアップを行っていたが、やはり何かが足りない。
そう感じた彼女たちが出した結論は、全員一斉での連携攻撃だった。
「……ふん、何故我が貴様たちと連携をしなければならない? 我が認めているのは、我が夫となるアックだけだ。貴様らがやられようと知ったことか!」
ここでの問題は、孤高のエルフ族であるサンフィアの協力が鍵を握っていた。
風の精霊を使えるようになった彼女の協力が得られれば、魔物の群などすぐに排除出来るからだ。
「サンフィアさん、お願いしますです~! アック様からあなたのことは頼まれていまして~」
「何? 我のことをお前に頼んだだと?」
「はい~。ここはどうしても、火属性に耐性のあるわたしじゃなければ苦労する。だから、サンフィアさんはとっても苦しい思いをすることになるから、手助けしてやってくれと言ってました~」
もちろんこれは、ルティとミルシェが考えていた作戦である。
アックはサンフィアのことを気に掛けてはいるものの、だからと言ってサンフィアのことをルティに頼むことはほぼ無い。その前提があることから、ミルシェと相談して決めていたことでもあった。
サンフィアの性格上、アックの名前を出すだけでは言うことを聞いてくれない。
そのことが分かっていたからこその作戦でもあった。
「馬鹿な……あの男が、お前に我のことを頼むというのか? 奴め……我のことをどれだけ見くびっているというのか! 手助けなど無くとも……くっ……」
敵に対してではなく、どちらかと言えば耐えられない熱さに我慢が出来ない。
熱さに強いわけでも無いエルフ族のことを、知った上での作戦だった。
そして見事に成功したようだ。
「お、お願いしますです! サンフィアさんのご協力があれば、きっと一掃出来ますです!」
「……ふん。我の何が必要となるのか、教えろ!」
「はいっっ!! ではでは――」
多少不安を抱えながら、サンフィアはルティの話を聞くことにした。
「本当に大丈夫なの? 小娘一人だけでどうにかなるほど甘くないなの」
「フフフッ。あなたこそ、どうかしらね? 人化した状態で突っ込んで行くのは簡単でしょうけれど、やはりそれだけでは、大量発生の魔物相手には分が悪いのではなくて?」
「全く、いつ聞いても性格が悪い女なの! こうなったら、小娘と一緒に片付けてやるなの!!」
「ええ、期待していますわよ」
様子を見守っていたミルシェとフィーサは、相変わらず仲が悪い。
しかし、サンフィアの援護をもらってからの動きに対応すべく、態勢を整え出していた。
「よぉおし!! これならきっと、全部やっつけられますっ! さぁ、サンフィアさん! お願いしますですっ!!」
「――ちっ、くだらん。だが負けてはいられん……ドワーフのルティシア! しっかり受けろ!」
「はいっっ!!」
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