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第十七章:遺跡群
324.イグニスダンジョン 上層攻防戦①
しおりを挟む"イグニスダンジョン"と記された扉が開いたので、前に進むことにした。
ルティとフィーサを先頭に、おれとシーニャが後ろについて歩いている。
サンフィアとミルシェが中央にいるが、別の意味で心配だ。
「アック様~、どうしてこんな列になって進むんですか~?」
「いくら通路が広くても、不意打ちには厳しいだろ」
「なるほどです~! じゃあじゃあ、前から攻めて来られたらやっつけていいんですね?」
「そうだな。そこはフィーサと上手く連携してくれ! 任せたぞ、ルティ!」
「はいっっ!!」
今までのようにばらけた歩きでも良かったが、ここでは特定属性が有利にも不利にもなる。
そうなると今までのように適当な歩きでは、彼女たちが危険になりかねない。
精霊の力を得たとはいえ、連携に不慣れなサンフィアを先頭に置くのも危険だ。
そう考えて、ここでの進み方は簡単に決められた。
火属性に得意なルティと、属性に関係無いフィーサを前線で戦わせる。
中央は側面対応、後方は今の時点では注意しなくてもいいが、瞬時的に動けるシーニャが有効だ。
ルティの言うように、通路は横に広い。
だからといって、この先もそうとは限らないということも気を付けてそうした。
「アック、シーニャ守る! シーニャ、頑張るのだ。ウニャッ!」
「ありがとう、シーニャ。でも無茶したら駄目だぞ」
「分かっているのだ」
シーニャとは割と別々に動くことが多い。
そのせいかこうして一緒に歩くことが嬉しいのか、彼女の尻尾がはしゃいでいる。
「……我に何か言いたいことがあるのか?」
「特に何もありませんわ。せいぜい、アックさまのお手を煩わせることが無いようにしてもらえればいいだけですわ」
「ふん、亜人め」
ルティとフィーサの相性も心配になるが、ミルシェとサンフィアはさらに心配だ。
さすがにパーティーとして崩れる感じにはならないと思うが――
しばらくは両側に石壁があって、特に何の心配も無い通路を進んでいた。
しかし心配していたとおり、通路が狭くなると同時に火山に似た傾斜になり、上に登って行く道が放射状に延び始めた。
そこから無造作に転がる岩で、足の踏み場が限られるようになった。ここはやはりそういう感じで構成されたダンジョンなのだろう。
とてもじゃないが、横に広がって歩ける道になるとは思えない。
「アック様っ! この道、似てますです!」
「んー?」
「故郷のロキュンテに似ていますよ~! あぁっ! もしかして、これを見越して!?」
「――全く、小娘はやかましいなの。イスティさまは、一歩も二歩も読んでいるに決まっているなの!」
何やら前の方でルティが興奮している。
ルティの故郷は確かに火山渓谷ではあるが、それを想定していたわけじゃない。
しかし火属性で開いたダンジョンでもあるし、ルティには有利に働くはず。
足場がかなり不安定になって来たが、用心すべき場所に違いない。
「――む! シーニャ、防御態勢を取れ!」
「ウニャ!」
てっきり前の方から火属性の魔物が、ルティたちを襲うと思っていた。
しかし後方から、それも予想していない奴らが姿を見せるとは。
これを狙っていたのか、あるいは奴らもここから入り始めたのか。
「《バーニングシールド》で防ぐぞ。シーニャはおれの後ろで待機だ!」
「分かったのだ!」
全体でどれくらいの人数が来ているのかは不明だ。
だが現時点で確認出来ているのは、魔導士含めて数十人程度くらい。
別働隊というやつか。
「奴がアック・イスティってやつだ!! やれっ! 魔導士ども!」
「はっ! 凍てつきに縛られろ、《アイスホールド》!!」
「機嫌良く行かせてもらう! 《レビンスピア》!」
特定属性制限下ではあるが、詠唱自体は問題が無さそうに見える。
奴らとの距離は、数十メートル程度だ。
ここでの問題は攻撃的な魔法、それも特定属性じゃない属性が発動するかどうか。
「……なぁっ!? 魔法が消え――消えた!? な、何故だ」
二人の内の一人、雷属性を放った奴は手元で消えたようだ。
そうなると別の奴の魔法は――
「――ん? 氷が足にまとわりついているな」
「アック! 大丈夫なのだ!?」
「問題無いぞ。……なるほど、弱体魔法は影響を受けないのか」
魔導士の一人が放って来た魔法のうち、雷は消えたようだ。
しかし氷系の弱体魔法は消えずに、おれが立っている位置にまで届いた。
前もって炎の壁を作っていたが、足下を攻めて来るとは面白い。
どうやって奴らを弱らせるか、いや、ここは魔導士を無視して指揮系統に仕掛けてみるか。
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