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第十七章:遺跡群
322.ロネード丘陵地・属性柱ギミック
しおりを挟むどうやら力任せでは、遺跡の中に入ることが出来ないようだ。
それを知ってか知らずか、サンフィアとフィーサは全くやる気を見せないでいる。
丘陵地には同じような石扉がいくつか点在しているが、このままではどうにも出来ない。
こういうのは大抵、何らかの仕掛けがありそうなものなのに。
「アック、どうするのだ?」
「そうだな……力だけで解決出来ないとすれば……」
ここは思い切って獣化か竜にでもなるか――
そう思っていたら、丘の上でミルシェが手招きをしているのが見える。
「アックさま、こちらに来てくださいませ~! ついでにルティも寄こしてくださると~」
何かを見つけたのか、テンションが高い。
ルティをついでに呼ぶということも、何なのか気になる。
「ルティ! こっちに!!」
「はぇ? でも、石扉はどうすれば~?」
「とりあえず、おれの所に来てくれればいいから!」
「はいっっ! 今すぐに~」
ルティだけを呼んだつもりが、当然ながらフィーサたちも一緒について来た。
どのみち、中に入ることが出来ないと退屈だからだろう。
少しして、丘の上にいるミルシェの所にみんなで集まった。
「勢揃いでようこそ……と言いたいところですけれど、アックさまとルティだけで十分ですわ」
ミルシェの言うとおり、全員で何か出来そうな感じじゃない。
石扉の丁度真上になるが、ここにあるのは一本の太い柱だ。
「アックさま。柱に記されている文字が読めます?」
「……これは、魔法文字だな。……適した属性で力を注げ……か。拳で殴れそうな石板があるな」
「石の色から判断しても、ルティの力でしか開かない仕掛けかと」
「真っ赤な石に拳か……」
思わず、ミルシェと一緒にルティを見た。
「何ですか何ですか? もしかして、アック様とわたしで何かするんですか?」
「ルティ。ここを殴ってみてくれ」
「えぇ!? ここをですか? でもぉ、石扉じゃなくてただの石だし、柱ですよ? 崩れちゃいますよぉ」
「……問題無いわ。多分、あなただけの力ではどうにも出来ないはずだから」
「そ、そういうことなら~」
――とはいえ、力だけで殴れば何かの罠が発動する恐れがある。
柱の近くに集まってしまっている彼女たちを離しておこう。
「シーニャとフィーサ! それとサンフィア! 今すぐここから離れて戦闘に備えろ!」
柱の間近で何かが起きないとも限らない。
何かが起こったとしても、ここは彼女たちそれぞれで対応してもらう。
「ウニャ? 敵が来るのだ?」
「ふん、退屈しのぎに丁度いい」
「ええぇ? わらわたちも襲われるなの?」
人化しているフィーサには急なことだが、何とかするはずだ。
退屈していたシーニャとサンフィアは、素早い動きで適当な所に散らばった。
「――よし、ルティ。いいぞ!」
ルティだけを残し、おれとミルシェは柱から少し離れて様子を見ることにした。
何が起こるのか予想出来ないからだ。
「よぉぉし、よぉぉぉし!! でぇいやぁぁぁぁぁ!!」
周りには何も遮るものが無い。
――ということもあって、ルティは息を思いきり吸い込んで拳を目の前の石に叩きつけた。
ドォォンっといった鈍い音が周辺に響く。
するとその直後、柱を殴ったルティから弱り切った声が聞こえて来た。
「ああぁぁ、アァ、アック様ぁぁ……」
「どうした!? 何かダメージを――」
「石を殴ったら全身に痺れがぁぁぁ~……はへぇぇぇ」
「……デバフを喰らったか。魔物が出るでも無かったようだな」
戦闘に備えていたシーニャたちには、がっかりさせてしまったようだ。
(間違った属性を注げば、もしかするのかもしれないな)
「やはり間違いないですわね。この柱はそれぞれで対応が決まっていますわ。それに加えて、適した属性を注がなければ、石扉は開かない仕組みだと思いますわ」
「――ってことは、後は属性だな。分かりやすいけど」
「ええ。アックさまから、ルティに火属性を注ぐだけですわね」
「分かった」
ルティの麻痺が治まるのを待ち、おれは彼女に向けて火属性魔法を放った。
火属性耐性どころか精霊竜の加護を持つルティには、何も変化は無く首を傾げている。
「あれれ? ほんのり熱いですけど、これは何ですか~?」
「その状態で、もう一度その石……柱を殴ってみろ」
「えええぇ!? また麻痺しちゃいますよぉぉぉ?」
「大丈夫だ。いいか、思いきりだぞ!」
「アック様がそういうなら……ふぉぉぉぉ! だあぁぁぁぁぁ!!」
火属性をまとったルティは、柱に向かって拳を当てた。
すると柱の真下から、何かの音が聞こえて来た。
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